異世界での異生活

なにがし

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22.独立

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マイヤが割って入ってきた。ヤスオの頭から湯気がでていた。

「この街は有事が起こった時、衛兵と冒険者が連携して事に当たるようになっているの。その場合、領主様が指揮を執る事になっているのだけど、冒険者の事を知っていないと指揮ができないでしょ。なので、組合長が定期的に情報提供をしているの。だけど、その情報が正しいかどうか分からない。だから、冒険者組合に分かりやすく間者を送り込んでくるのよ。」

シンシアが、苛立った様子で話す。

「ちなみに領主様は、組合長のお兄様よ。」

マイヤも苛立っているようだ。

「それで、領主様はどういうお方なのです?」
「弟のわたしが言うのもなんだが、それほど悪い人ではない。むしろ領主としては優秀な方だろう。ただ、この街にはアリアドネ様という人気者がいるので、それを危機に感じているようだ。」
「まったくアリ姉さんが民衆を扇動して、己の地位を奪うとでも思っているのかしら?」

腕組みをしたシンシアの怒りは増す。

「さすがにそこまでは考えていないと思う。だが、その気になれば、それができるから危機なのだよ。」
「なるほど。くだらないですね。とりあえず分かりましたので、どうぞ続けてください。」

実はよく分かっていないのだが、シンシアやマイヤに合わせてヤスオは不愉快そうな演技をした。

「うむ。」

メンガンダルは続けた。

「フランツは、兄上に憶測を報告したようだ。兄上はこれを好機とし、アリアドネ様を殺したヤスオの処刑を考えた。だが世間が納得する証拠がない。そこで、フランツに憶測を世間に広めさせて、社会的制裁を加えた上で、世間が処刑を望むよう企てた。」

メンガンダルの顔が少し赤くなっていた。言うのも恥ずかしい事なのか、怒りなのかは分からない。
ヤスオは焦った。

「ちょっと待ってください。アリアドネ様が亡くなったのは領主様には都合がいいはず。なのに、なんで俺が処刑されなければならないのですか?」

「そうすれば、民の人気は独り占めじゃ。」

トイ爺は、心底あきれた顔をした。

──!!!

証拠を集めようとせず、人気取りだけで人の命を奪おうとする。
この世界の命の軽さには驚きを隠せない。

「つまり今回の件は、領主様が企てた事なのか。それで、これからどうする?」

すでにトイ爺は呆れを通り越して疲れた顔になっていたが、事は領主だけに困ってもいた。

「明日兄上に会って、真実を説明して処刑したら逆効果だとわかってもらう。その上で、フランツは兄上に任せるよ。」
「それでヤスオさんの処刑はなくなるでしょう。ですが、一度広まった噂を書き換えるのは、容易ではないですよ。」

セメレは、ヤスオだけではなく、孤児院や子供達の心配もしていた。

「それに関しては、本当に申し訳なかった。わたしも、院長のようにヤスオの経歴を作って職員に伝えておくべきだった。」

メンガンダルが座ったまま両手をテーブルに置いて頭を下げた。

「それで、今からヤスオの経歴を作りたい。」
『今更?』
「うむ。やはり、異世界から来たというのは現実的ではなく、なかなか信用されないだろう。」
「そこで、もっともらしい経歴を作って、みんなで口裏を合わせようという訳か。それで、組合長のことじゃ。その経歴はすでに考えておるのであろう?」

トイ爺はお茶を飲みながらメンガンダルにウインクをして見せた。

「はい。院長の案をそのままもらって、
一つ、呪いに掛かり、記憶の一部と魔力を失った。
二つ、アリアドネ様の噂を聞き頼ってこの街にきた。
三つ、アリアドネ様不在なので、帰ってくるまで待つことにした。
四つ、セルジュが以前アリアドネ様から、ヤスオと言う名の恩人がいる事を聞いた気がした。
五つ、アントの夢でヤスオが自立できるまで援助することにした。
で、どうだろうか。」

『いいじゃない。』

「俺の経歴できるの、早くない?」

ヤスオが抗議するが、みんなはどうでもよかった。

マイヤ 「どんな経歴にしようが嘘は嘘だし。」
シンシア 「ごめん。まったく興味ないわ。」
トイ爺 「わしもじゃ。」
セメレ 「経歴より、これからの方が大事だし。」

ヤスオの抗議は一掃された。

「では、職員には明日の朝礼でヤスオの経歴を教え、憶測は間違いだと伝えましょう。少し時間はかかるかも知れませんが、ヤスオの名誉は回復するでしょう。」

「それまで、早まった事をする人がでなければいいのですが。」

 セメレの心配はまさにそれだった。ヤスオ自身もそうだが、子供達が巻き込まれないか不安だった。

「あのー俺、明日から独立します。」

 ヤスオは立ち上がり宣言した。

『はぁ?』

「明日から一人で行動をします。院長先生とマイヤさんの料理が食べられなくなるのは残念ですが、いつまでもトイ爺さんに守られている訳にはいきませんし。良い機会です。そうすれば早まった奴がでても、被害は俺一人で済みますから。なーに、命までは取らないでしょう。」

「ヤスオ。よく言った。」

 トイ爺が大声で立ち上がり、感服していた。

「ヤスオさん。気を使わせて、ごめんなさい。でも、お付き合いまで断つ必要はないのですから、気安く立ち寄ってください。」

 セメレが、手を合わせ察してくれたヤスオに感謝した。

「そうですよ。何でしたら朝と夕方だけでも食事にいらしてください。子供達も喜びます。」

 マイヤはどことなく寂しそうだった。

「ありがとうございます。お気持ちだけ頂きます。でも、遊びには来ますので。」

「ちょっと待って。組合長、ヤスオさんにしばらく護衛を付けられないかしら。」

 シンシアはメンガンダルに詰め寄った。

「無茶を言うな。護衛を雇うにも先立つ物がいる。G級のヤスオとパーティーを組む者もおらんだろうし。当面の間は門の近くで活動して、もしもの時は、門番に助けてもらうのが妥当だろう。」

 今回の事は組合にも責任があるので、メンガンダルも何かしたいとは思っていた。

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