異世界での異生活

なにがし

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23話 新装備で気分一新

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 メンガンダルは何とかしたいと思ってはいるが、護衛を付けるには期限も予算もはっきりしないので、現実的とは思えなかった。

「はい。しばらくは、組合長の言う通りにします。まだ、自立するにはどうしたらいいか分かりませんが、できる事をやっていればそのうち見えてくると思います。トイ爺さん、院長先生、マイヤさん。今日までありがとうございました。組合長とシンシアさんも、ありがとうございます。そして、これからもよろしくお願いします」

 ヤスオは深々と頭を下げ、その場のみんなに感謝した。

「ヤスオ、明日から来ないの」

 院長室の扉が開くと、子供達が入ってきた。

「ああ、そうだよ。でも遊びには来るから、会えないわけじゃないよ」

 ヤスオは、両膝を床に付け子供達との目線を合わせると、優しく答えた。

「ヤスオォ」

 子供達が泣きながらヤスオの胸に飛びつく。ヤスオも精一杯手を広げ、抱き返した。

「みんな、今までありがとう。世話になったね」

 セメレ、マイヤ、シンシアは、涙をもらい受けていた。トイ爺は、ヤスオに歩み寄り肩に手を置き、ウンウンとうなずいている。

「ヤスオ。今回の件は貸しだ。何かあったらいつでも相談してくれ。必ず力になる」

 メンガンダルの激励が鼻声であったため、より気持ちが伝わった。

「はい」

 ヤスオは満面の笑みで答えた。その後、アイルがヤスオの二つの指を握り締めて離さないので、寝付くまで帰ることができなかった。


 月明りから、赤みかかった景色に変わる頃、アリアドネ宅はガサゴソうるさかった。ヤスオが物置を物色していた。

「今日から単独任務。何かいい物ないかなぁ」

 アリアドネの趣味だろう。物置にはたくさんの杖や武器、防具が置いてあった。相変わらず、薬草採取しかできないのだが、一人で行動するためトイ爺のように装備を充実させようと考えていた。

「あっ。これ教会の訓練で身に着けていたやつに似ている。テレテレッテッテッテー。ヤスオは革鎧を見つけた。なんてね、あっ!これレベルアップだった」

 アイテムを入手した時の音楽、何だったかなと考えながらレザーアーマーを身に着けた。

「おっ。これも教会にあったやつ。ヤスオは革盾を見つけた」
 結局、音楽は思い出せず、レザーシールドを左手に装備した。

「となると、片手で短剣を振るのは重いような。ふひっ、これもなんかいい。ヤスオは諸刃の脇差を見つけた。」
 ダガーを装備した。

「ほほっ。これも教会にあったやつ。ヤスオは革の籠手こてを見つけた」
 レザーガントレットを装備した。

「ふへへ、これカッコいい。ヤスオは革のすね当てを見つけた」
 レザーレガースを装備した。

「こんなもんかな。アリアドネ様、装備をお借りします」
 
 手を合わせ祈り、感謝する。
 なぜか気分が高揚したヤスオは、昨日買っておいた食パンを頬張ると玄関に向かう。

「さて、行くかー。子供達に会わないよう別の門から出ないと」

 などと、誰かに伝える訳ではない独り言をいい、大きい籠を背負った。
 籠は薬草を運ぶのに用意したものだ。籠の中には肩かけ鞄が入っている。肩かけ鞄の中身は以前アリアドネが冒険に使っていたもので、ヤスオがそのまま引き継いだ。もちろん着替えなどは、ヤスオ用の物に入れ替えてある。
 そうして、陽も昇り始めたので出かけることにした。初日から高揚した気分で張り切っていたヤスオだが、一瞬で萎えた。

「待て、貴様。外に何の用だ。んー?見ない顔だな。身分証を見せろ」

 南門の門番である。子供達と会わないように、いつもの北門ではなく南門に来ていたので、門番はヤスオを見た事がなかった。
 
「薬草採取に行くつもりですが」

 門番の威圧的な態度に萎縮し、震える手で身分証を差し出した。

「なんだ、この白い冒険者証は。…貴様、G級ヤスオか?」

──G級ヤスオ?

 そういえば、孤児院初日でも門番が同じ事を言っていたが、ひょっとしてこれが名前だと思われている?

「はい。G級冒険者のヤスオです」
「おまえ、今日の門番が俺でよかったな。俺以外の奴なら切りつけられていたぞ」

 門番はものすごい形相で睨みつけ、今にでも切りつけてきそうな雰囲気だった。よほど辛抱しているのか、手が震えていた。ヤスオは、ただ立ちすくむ事しかできない。

「一丁前な格好しやがって。行ってよし」

 門番は道を開けてくれたので、ヤスオは冒険者証を受け取ると門を通り抜けた。
 南門の外は北門の外と、とても似ていて街道の両側面に草原が広がっており、草花が生い茂っていた。ただ、先の方で二手に分かれており、まっすぐ進んだ先には橋が架かっているのが見えた。
 ヤスオは適当な場所を見つけ薬草採取を始めた。太陽が真上にきた頃、ヤスオは座り込んで集めた薬草の整理に取りかかる。

(ヤスオは、薬を作らないのかな?)

突然、どこからか声が聞こえて驚き、左右を見渡した。誰もいないので改めて、周囲を見渡した。
 周囲は花の香りが心地よく、人はもちろん野生動物すらいない。それどころか景色が綺麗で、そよ風が吹いて気持ちよかった。
 少し離れた門から門番が睨んでいたが、女性の声に思えたので違うだろう。以前、似たような経験があるが、その時の声とも違っている。

──うーん?誰もいない。気のせい?風の音かな?

そう思いながらも、一応答えてみた。

「俺、魔力”0”だから、薬はつくれません」

 アリアドネ宅に薬に関する書物があったので、読んだことがある。書物によれば、薬を精製するには材料と調薬魔法が必要と書いてあり、諦め落胆した。

(それは、転移当初の話でしょ。今なら多少なりとも回復しているのでは?)

 返事が来た。もはや幻聴ではないと確信し、さらに周りを見渡した。やはり誰もいない。声の聞こえ方が、耳からではなく直接頭に届いている感じがする。もしや夢を見ているのかと思ったが、それならそれで楽しもうと結論づけた。

「あなたは誰です。何処にいるのです?それに、俺を知っているのですか」

(私?私は、ヤスオの後ろにいるよ。ヤスオの事はよく知っているよ)

──誰だっけ?

 記憶をたどり心当たりを探すが、あるはずない。この世界に来て知り合った女性など、惣菜屋のおばちゃんや福屋のダナエを入れても両手で足りる。孤児院の女の子を入れてやっと足の指まで到達する。
 そんな数で忘れるわけない。とりあえず姿をみれば何か分かるだろう。
 そう思い振り返ったが、誰もいない。
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