異世界での異生活

なにがし

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32.討伐

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(ヤスオ、魚舐めすぎ。これで手詰まり?)

「まさか。フルック」

 水面に浮いて、様子をうかがい魚影を見つけると

──ドボンッ

 一気に頭から飛び込んだ。
これを数回繰り返し、やっとやや大きめの魚をつかまえた。
口先が丸く、体全体に白い斑点があり、うっすらと縦縞がある。

「これ何の魚だろ?まぁ、食べられるだろう。」

 魚には詳しくないので種類が分からない。
魚なのだから食べられるだろうと勝手に思っていた。
表面をタガーでこすり鱗を取り、ぬめりを洗い流す。

「確か、川魚はうんちを出さないといけないのだよな。」

 やり方がよく分からなかったので、とりあえずお腹の辺りをつまんでこすってみた。
何回かやると黒い物が出てきた。それをうんこと判断し次の工程に移る。
枝を切って串代わりにして刺した。
あとは焼くだけなのだが、

(それは、夜の楽しみにしましょう。)

 鶴の一声で、収納して持ち帰ることになった。
身体が乾いたので服と装備品を身に付け、薬草採取広場へ行く。

 開けた場所に着いた途端、草花の中から突起物が見える。

(角ウサギよ。魔法なしで仕留めてね。)

 盾を構えダガーを抜き戦闘態勢に入った。
相手もこちらに気づいたか、上を向いていた角がこちらを向いた。
角が突っ込んできた。
盾で角を払い、角に向かってダガーを突いた。

──ピギィィ

 ダガーは角ウサギの腹部に刺さり致命傷を負わした。
角ウサギを足でおさえ、ダガーを抜く。
抜いた勢いそのままに、尻もちをつき座り込んでしまった。
そのまま、角ウサギが息を引き取るのを見届けた。
血だらけの角ウサギを見ながら、刺した時の感触を思い出す。

「ホッゲロゲロゲロゲロ。」
(あー。やっぱりこうなった。修行が足りないわね。)


「すいません、大丈夫です。クレネラッゴン。」

 吐き出しが終わると、すぐに立ち上がり角ウサギを収納した。
目に溜まった涙を拭い、先に進もうとする。
すると、開けた場所の中央付近に大きなくぼみを見つけた。

(ヤスオ、二回戦よ。防具強化魔法をかけて。)
「ラッスンサステーコン。」
(探知魔法で周囲の状況を確認して。エケン・・)
「エケンヌン。」

 頭の中が白く染められて、中央に黒い三角があり真上に影が見える。
中央の三角が自分で真上の影が探知されたものだろう。
影の形から猪と思う。ほかにも、ウサギや鹿の影も見えたが人の影はなかった。

(よく勉強しているわね。どう周りに人はいそう?)
「他に生き物はいそうですが、人はいません。」

(そう、良かった。あれは、猪よ。今のヤスオでは吹き飛ばされてしまうわ。こんな時お勧めなのが、土壁魔法よ。壁を作って自爆させるの。アッビムよ。)
「了解しました。」

(ただし、早く出すと避けられちゃうから、タイミングよくだしてね。)
「まかせてください。」

 盾を構えて忍び足で、少しずつ距離を縮めた。
猪はこちらに気づき、頭を下げ何度も片足で地面を蹴り上げていた。

──フゴッ

 猪が周りの草花を蹴散らせながら、ものすごい勢いでこちらに突進してきた。
まさに猪突猛進。

(まだよ、まだよ、)

 アリアドネがタイミングをとってくれた。ヤスオは魔法を放つだけだ。

(今よ。) 「はい。」

 勢いよく横に飛び、猪の突進を回避した。

(バカァ。避けてどうするのよ。)
「すいません。怖くて、つい。」

 すばやく起き上がって走って逃げるヤスオ。
猪は止まる事なく走りながら方向を変え、ヤスオの背後に迫る。

「ごめんなさい。ごめんなさい。誰か助けてー。」
(バカかー。誰もいないのを確認したじゃない。さっさと土壁作りなさぁい。)
「あ、そうだった。えーと、えーと、何でしたっけ?」
(おバカかー。アッビムよ。)

「アッビム。」

 走りながら両手を前に突き出し呪文を唱える。

(おおバカかー。前に撃ってどうするのよ。逃げ道がなくなるでしょ。)

 地面が膨らみ始め壁を形成しようとする上を通過し、足を引っかけた。
顔面で地面に滑り、しゃちほこのような態勢で豪快なヘッドスライディングをした。

──ドン

 猪にはタイミングがよかったか、狙い通り自爆した。
ヤスオは傷だらけの顔をさすり、鼻血を出しながら猪の様子を見に行く。
土壁は元に戻り始め、猪の全貌が見えてきた。
 頭から出血し、横になって動かなかった。
ただ、お腹のあたりがわずかに、上下していた。

(まだ、息がある。とどめを刺して。)
「はい…。慣れないと、生きていけない。うぅ。」

 ダガーを抜き、喉を突いた。
刺した部分から飛び出した液体が、ヤスオにまとわりつく。

(まったく何が、まかせてくださいよ。情けなく逃げまわった挙句に魔法で自爆するなんて。どれだけわたしにバカを言わせる気よ。バカ。)
「すいません。」

 アリアドネの説教はしばらく続き、その間汚れた身体を拭くことができなかった。
長い説教が終わり、河まで戻って身体を清め、やっと薬草採取を始めた。
その後は大きなトラブルもなく、黙々と薬草を採取した。
 
 陽が落ち始め、辺りが赤くなり始めた頃、薬草採取をやめ、大木のふもとまで戻った。
そこに、穴を掘り、石を並べ、薪を拾い、穴の中に入れた。

「ピロテイスト。」

 生活魔法の種火魔法を唱えた。小さな火の球が出現し薪の中心に向かって移動する。
火玉の火が薪に移り火の塊が成形された。
 準備ができたので、魚と上部に取手が付いた四角い木箱を出した。
木箱は真ん中から横に割れるように開き、左右二つの収納箱になった。

「アリ姉様。これだけの空間があって、あるのが塩と醤油と味噌だけですか?」
(それだけあれば十分じゃない。他に何が必要よ。)
「確かに最低限ですけど。・・」

 魚を塩まみれにして、火の塊のそばにさした。

(ねぇ、この魚。うんこ出しただけで他に何もしてないわよね。本当に食べられるの?)

 アリアドネには鱗を取り、ぬめりをとった行動が、魚を洗っただけにしか見えなかった。
ヤスオは黙って焼き上がるのを待った。

「頂きます。」

 焼き上がったので、かぶりついた。

(ちょっと待って。心の準備がまだ…おいしい。)

「美味しいですね。味気なかったら醤油をかけようと思いましたが、このままでもいけますね。」

 あっという間に食べ終わり、火を消して小屋に帰った。
小屋に着くとランタンの油が昨日だけで三分の一減っていた。
予備もないので、節約が必要となり生活補助魔法の照明魔法を使うことにした。

「ブライヒトン。」
 光の玉が出てきて部屋の中を照らした。

(この魔法は、人によって持続時間が違うし、同じ人でも毎回違うの。長く持続する方法を探してね。)

 部屋が明るくなったので、調薬の準備を始める。

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