異世界での異生活

なにがし

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33話 小鬼と対決

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 部屋が明るくなったので、調薬の準備を始める。

(さぁ今日は治癒薬を作りましょう。治癒薬は需要が多いから常に品薄で、高く売れる薬なの。たくさん作ってがっぽり儲けましょう。おー)

 治癒薬はヒル花とクウンド草を混ぜて作る薬で、それほど難しい調薬ではなかった。それを、気分が悪くなったら休憩を入れて、回復したら再開のペースでひたすら調薬した。


(ヤスオ、ヤスオ、起きて)
「あぁぁ。失礼しました。アリアドネ様。今起きましてで、御座います」
(クスクスクス。何を寝ぼけているの?)
「すいません。寝過ごしましたか?」
(えぇ。陽はとっくに昇っているわ。そろそろ起きてちょうだい)
「はい。すぐに支度します」
(よほど疲れていたのね。ヤスオが寝過ごすなんて)

「今日は、真っすぐ河に行き、水と魚の補充を行います。その後薬草採取を行い、帰宅後、調薬を行います」

 ヤスオは、直立で報告した後、頭を下げた。
 これは、ヤスオがアリアドネに慣れてきたので、時折ふざけて部下が上司に報告するような話し方をするようになっていた。アリアドネも面白がってヤスオに付き合っていた。

(いいでしょう。では、頑張って下さい)
「はい、ありがとうございます」

 この頃になるとヤスオとアリアドネの師弟関係は成立していた。元々ヤスオはアリアドネの信者なので常に敬意を示し、アリアドネは日を追うごとにヤスオを理解し、すっかり仲良しになっていた。
 ヤスオは、急いで河に向かって移動した。

「エケンヌン」

 河に到着すると間髪入れず、探知魔法を唱え周りに誰もいないのを確認する。

(ヤスオ、分かっているわよね)
「もちろんです」

 ヤスオは身に着けているものをすべて脱ぎ捨て、河に飛び込んだ。

(「気持ちいいぃ」)
(やばい。これ癖になるわ。ホントに気持ちいいわね)

 前日、汗をいっぱいかいて、水に浸かれば気持ちいいのは当然である。十分汗を洗い流したら、岸に出てしばらくくつろいだ。

(今日は随分余裕ね。魚を取るいい方法を思いついたの?)
「はい」

 河に向けて、手の平をかざした。

「スターカーストーン」

──バリバリバリバリ。

 轟音と共に、水面を何かが走った。すると魚が4匹水面に浮いてきた。
ヤスオはそれらを拾い、タガーで鱗とぬめりを洗い流し、うんこを出して枝に刺して収納した。

(あ、あなたそれ、人族じゃ絶対使えない雷魔法の7位、強電魔法じゃない。何しているのよ。誰かに見られたら研究もんよ)
「大丈夫です。誰もいません。探知魔法は継続中ですから」
(た、確かに誰もいないのね)
「はい」

(なんで、そんな魔法を好んで使うのよ。危ないじゃない。他にもいい魔法があるでしょ)

 確かに、魚を取るだけならもっと効率のいい魔法がありそうだ。だが、ヤスオはどうしても雷魔法を使いたかった。なぜならヤスオ世代には雷への憧れがあったのだっちゃ。…だっちゃ?
 体が乾いたら衣服、装備品を身に着け、薬草採取広場へ向かって歩き出す。
 途中、何か嫌な気配を感じる。

(ヤスオ、止まって。この先の茂みに何かいる)

 風もないのに不自然に枝が揺れていた。

(隠れる知恵があっても、潜む知恵がない。おそらく小鬼ね。手前と奥の茂みに最低でも二体はいるわね)

 茂みは獣道を挟んで左右にあった。左手前の茂みと右奥の茂み両方枝が揺れていた。

「襲ってきますかね?」
(やり過ごす気でいるわね。小鬼は年寄りか子供しか襲わないのよ)
「だったら、見逃すわけにはいきませんね」
(近くに人はいる?)
「エケンヌン」

 補助属性、生活補助魔法4位の探知魔法を唱え、周りの状態を確認した。

「います、一人。女の人のようですが、冒険者でしょうか?」
(おそらく)
「応援を頼みますか?」
(そいつが、あなたを襲わない保証があって?アリアドネ様殺害犯さん)
「そうでした」
(単独でやるわよ。武器と防具それから身体強化の魔法をかけて)

「ワッフンサステーコン。ラッスンサステーコン。スタークンガカーパス」

 補助属性、強化魔法の6位、7位、8位の魔法を唱えて戦闘準備を始める。

(トイ爺に教わった通りよ。相手の攻撃を防いで動きを止め急所を刺す。まずは手前の茂みから。石を投げ込んで誘い出して)

 少し大きめの石を拾い茂みに向かい、振りかぶって大きく足を上げ、全力のストレートを放り込んだ。

──ゲヒッ。

 石は一体の小鬼の頭部に見事命中。倒れて頭を抱え身体を左右に振り痛がっていた。
 その姿は緑色の肌をし、腰に布を巻いた半裸の子供に見えた。眉や髪などの毛は全くなく、口からは小さい牙が2本飛び出していて、鼻がとても大きく額には小さな角が出ていた。

──これはゴブリン?

 それは、ヤスオの想像するゴブリンにとても似ていた。どうやら小鬼とは、ゴブリンのことだった。

──ギギャギャギャギャ。

 こん棒を持った別のゴブリンが茂みから飛び出し襲ってきた。

「アリ姉様。二体いましたよ」
(最低でもって言ったじゃない)

──バンッ

 こん棒を振りまわし殴りかかってきたが、これを盾で防ぐ。すかさず腰のダガーを抜きゴブリンに向かって突き刺す。

──ギッギャー。

 ダガーはゴブリンの腹部に刺さった。致命傷にはならなかったが、動きを止めるには十分だ。ヤスオはゴブリンを後方へ蹴り飛ばしダガーを抜いた。すぐにもう一方のゴブリンに駆け寄った。

「気を失っている?」
(当たり所が良かったのね。とどめよ)

 喉を刺した。ゴブリンは魔石に戻った。腹を刺されたゴブリンは、起き上がる事ができず横になったままこん棒を振り回していた。そして、ヤスオを視認するとこん棒を投げつけてきた。こん棒はヤスオまで届かず地面に転がった。

(終わりね)

 ヤスオは盾でゴブリンを押さえつけ喉を刺した。そして、ゴブリンは魔石に戻った。

(見事でした。トイ爺の教えが役立ちましたね)
「奥の茂みの方は出てきませんでしたね」
(やはりやり過ごすつもりなのでしょう。自分はまだ見つかっていないと思っているのね)
「では、二回戦と行きますか」
(頑張ってね)

 ヤスオは大きめの石を拾い茂みに投げた瞬間、二体のゴブリンが飛び出してきた。

(さっきを見ていたのね。読まれているわ)

 二体ともこん棒を持ち攻撃態勢をとっていた。ヤスオは、先ほどのゴブリンとは様子が違う事に気がつく。二体とも胸に膨らみがあり、布を巻いていた。

「こ、これは、女の子」
(そうね。でも、小鬼は小鬼よ)

 二体は同時にヤスオに襲いかかる。ヤスオは片方に狙いを定めて体当たりをする。メスゴブリンは後方へ飛ばされたが、もう一体が背後に回り込む。

──バンッ

 こん棒で殴りかかってきたが、盾で防いだ。ガラ空きになった腹部を蹴飛ばした。

(あなた、何をしているの?)

 腹部を蹴られたメスゴブリンは、こん棒を捨ててしゃがみ込み、ゆがんだ表情をしていた。

「しまった。女の子の腹を蹴るなんて」
(ねぇ)

 慎重にメスゴブリンに近づいた。
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