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34話 女小鬼を見逃し、師匠が激怒
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「あのー大丈夫かな?」
(なにを、言っているの?)
──ギャァァ。
メスゴブリンが襲いかかってきた。とっさに盾を構えたが、むき出しになっている二の腕に噛みつかれた。
「いてっ。くそー放せ」(いた―)
もう片方のメスゴブリンが体勢を立て直し駆け寄り、ヤスオとの距離を一気に縮めてきた。そして勢いそのままで、こん棒を振り下ろした。
「待て。ホゲ」(いたーい)
顔面に強烈な衝撃が走り、地面に顔をつけた。さらに、衝撃は2度、3度と続いた。
「ホゲッ、ホゲッ」(いたい。いたぁぁぁい)
たまらず、ダガーを抜き前方に突き出し振りまわす。すると、なにかに当たった感触がする。
──ギャァァ。
目の前に何かが落ちた。手の平?
奇跡的に、殴打ゴブリンの手首を切り落としていた。殴打ゴブリンは、こん棒を捨て手首を抑えながら、後方へ退いた。すかさず、ダガーの柄の先を噛みつきゴブリンの額に振り下ろす。
──ギャッ。
噛みつきゴブリンは、噛み付いた腕を放し、後ずさりをすると尻もちをついた。すぐに立ち上がると二体は距離をとったところで合流し様子を伺う。ヤスオはゆっくりと立ち上がり、盾を構えた。
「いてぇなぁ。この野郎」
(痛いわね、何やっているのよ。しかも、野郎じゃないし)
──ギャ、ギャ、ギャ、ギャ。
二体はお互いの顔を見てうなずくと、後方へ走り茂みに飛び込んだ。
(まずい。ヤスオ、追って)
「無理です。身体中が痛いです」
そう言うと、その場に座り込んでしまった。
(この、おバカァァァァァァァ)
「ハイルン」
自身に治癒魔法をかけ、傷を治す。そして、倒したゴブリンの魔石を拾いはじめた。アリアドネは黙り込み何も言わなくなった。
「アリ姉様。怒っています?」
(当たり前でしょ。まったくバカだ、バカだと思っていたけど、ここまでバカだとは。心底呆れると本当にものが言えなくなるのね)
「そんなぁ。初めて小鬼と戦って、四体中二体を討伐して二体は撤退させたのですから上出来じゃないですか。俺、頑張りましたよね」
(頑張った?女小鬼に欲情して手を抜いた戦いをして、どこが頑張ったって言えるの?)
「べ、別に欲情したわけでも、手を抜いたつもりもありません。ただ、女の子相手に攻撃して殺すと言うのに抵抗ありまして…」
(それで手を抜き、話しかけた挙句に反撃されてケガをし、逃げる相手を追うこともしなかったと?)
「だから、手を抜いた覚えはありません。これだけケガをしたのだから追うのもできませんでしたよ。」
(嘘よ。ケガは上半身だけ。痛いのを我慢して追いかければ、身体強化したヤスオなら追いついたはずよ。それをしなかったから手抜きでしょ)
アリアドネの指摘は的を射ていた。図星を突かれヤスオは観念した。
「…正直、逃げてくれてホッとしました。俺は甘いですかね」
(あのね、甘いとか辛いとかの問題じゃないの。この先、あの者達が人を襲えば寝つきが悪くなるでしょ)
「それはそうですが。女の子だったから力がなかったし手首も失っているから、それはないですよ」
この時アリアドネは、ヤスオの能天気な考えに苛立ち、怒りさえ覚えた。ボケて、夢の中にいるこの男にどう言えば、現実に戻せるのか。
(あのね昔、奴らと共存しようと接触した人がいたの。でもダメだった。知能が低すぎるのよ。食う・寝る・排泄・時々繁殖の本能だけで生きているの。人の形をした動物だから対話は無理よ)
「はい。それはもう十分に分かりました。文字通り痛い思いをしましたし」
(あと以前、ヤスオみたいに女小鬼に欲情して押し倒した冒険者がいたわ。その人小鬼の魔素を体内に取り込んでしまい死んだわ。バカなことはしないでよ)
「さすがに、それはあり得ません。というかアリ姉様がいる限り、人の女性ともできませんよ」
(あら。それは気にしなくていいわよ。最中、ずぅぅと応援してあげるから)
「やはり無理そうです。ところで、小鬼が人を襲うのは食べるためですか?」
(正確にはさらうのよ。目的は巣の衛生管理。小鬼は洞窟で50から100の団体で生活するわ。巣が不衛生だったら食料が腐りやすいなど良くないことは分かるみたい。でも、片付け方が分からないし、やりたくもない。そこで、人をさらってやらせる)
「巣の掃除ですか。意外と酷くないですね」
(ではヤスオ、奴らの食べ残しをあさり、排泄物を道具もなしで片付けるのを朝から晩までやってみる?)
「うっ。それは随分、酷い目に遭うのですね。死にたくなります」
(そうでしょう。いい、魔物は我々人間界の生態系を壊すために悪魔族が送り込んだものなの。だから本来、自然界にはいてはいけないものよ。次は欲情しないでね)
「欲情していませんが、わかりました」
(でも、小鬼が四体も出るなんて。近くに巣でもあるのかしら)
その後、薬草採取を行い、陽が暮れたら小屋に戻って食事を取る。食べ終わると、調薬して終わると本を読み勉強する。そして、眠る。
次の日も、同じ事を繰り返す。そんな生活を何日も送った。
何日か過ぎた夜。いつも通り調薬をしていた。
(今日も小鬼と遭遇したわね。今日で合計何体になった?)
あの日以降、何度もゴブリンに遭遇した。そして、遭遇するごとに討伐していた。だが、あの日取り逃がしたゴブリンと出会うことはなかった。
「えーと、2体、3体、2体、2体、2体の今日は3体だから」
(約15体かぁ)
「13体ですけどね」
(14体よ。少し多いわね。ヤスオ、そろそろ街に帰ろうか)
「本当ですか。やっとかー」
(この事、組合に報告しといた方がいいと思う。それにヤスオも殺しに慣れたみたいだし)
「アリ姉様、言い方。それじゃ殺し屋みたいじゃないですか」
(いい。今度殺されかけたら、攻撃魔法バンバン出して全力で行きなさい。皆殺しにすれば、何も証拠は残らないから)
「そんな、物騒な」
(なにを、言っているの?)
──ギャァァ。
メスゴブリンが襲いかかってきた。とっさに盾を構えたが、むき出しになっている二の腕に噛みつかれた。
「いてっ。くそー放せ」(いた―)
もう片方のメスゴブリンが体勢を立て直し駆け寄り、ヤスオとの距離を一気に縮めてきた。そして勢いそのままで、こん棒を振り下ろした。
「待て。ホゲ」(いたーい)
顔面に強烈な衝撃が走り、地面に顔をつけた。さらに、衝撃は2度、3度と続いた。
「ホゲッ、ホゲッ」(いたい。いたぁぁぁい)
たまらず、ダガーを抜き前方に突き出し振りまわす。すると、なにかに当たった感触がする。
──ギャァァ。
目の前に何かが落ちた。手の平?
奇跡的に、殴打ゴブリンの手首を切り落としていた。殴打ゴブリンは、こん棒を捨て手首を抑えながら、後方へ退いた。すかさず、ダガーの柄の先を噛みつきゴブリンの額に振り下ろす。
──ギャッ。
噛みつきゴブリンは、噛み付いた腕を放し、後ずさりをすると尻もちをついた。すぐに立ち上がると二体は距離をとったところで合流し様子を伺う。ヤスオはゆっくりと立ち上がり、盾を構えた。
「いてぇなぁ。この野郎」
(痛いわね、何やっているのよ。しかも、野郎じゃないし)
──ギャ、ギャ、ギャ、ギャ。
二体はお互いの顔を見てうなずくと、後方へ走り茂みに飛び込んだ。
(まずい。ヤスオ、追って)
「無理です。身体中が痛いです」
そう言うと、その場に座り込んでしまった。
(この、おバカァァァァァァァ)
「ハイルン」
自身に治癒魔法をかけ、傷を治す。そして、倒したゴブリンの魔石を拾いはじめた。アリアドネは黙り込み何も言わなくなった。
「アリ姉様。怒っています?」
(当たり前でしょ。まったくバカだ、バカだと思っていたけど、ここまでバカだとは。心底呆れると本当にものが言えなくなるのね)
「そんなぁ。初めて小鬼と戦って、四体中二体を討伐して二体は撤退させたのですから上出来じゃないですか。俺、頑張りましたよね」
(頑張った?女小鬼に欲情して手を抜いた戦いをして、どこが頑張ったって言えるの?)
「べ、別に欲情したわけでも、手を抜いたつもりもありません。ただ、女の子相手に攻撃して殺すと言うのに抵抗ありまして…」
(それで手を抜き、話しかけた挙句に反撃されてケガをし、逃げる相手を追うこともしなかったと?)
「だから、手を抜いた覚えはありません。これだけケガをしたのだから追うのもできませんでしたよ。」
(嘘よ。ケガは上半身だけ。痛いのを我慢して追いかければ、身体強化したヤスオなら追いついたはずよ。それをしなかったから手抜きでしょ)
アリアドネの指摘は的を射ていた。図星を突かれヤスオは観念した。
「…正直、逃げてくれてホッとしました。俺は甘いですかね」
(あのね、甘いとか辛いとかの問題じゃないの。この先、あの者達が人を襲えば寝つきが悪くなるでしょ)
「それはそうですが。女の子だったから力がなかったし手首も失っているから、それはないですよ」
この時アリアドネは、ヤスオの能天気な考えに苛立ち、怒りさえ覚えた。ボケて、夢の中にいるこの男にどう言えば、現実に戻せるのか。
(あのね昔、奴らと共存しようと接触した人がいたの。でもダメだった。知能が低すぎるのよ。食う・寝る・排泄・時々繁殖の本能だけで生きているの。人の形をした動物だから対話は無理よ)
「はい。それはもう十分に分かりました。文字通り痛い思いをしましたし」
(あと以前、ヤスオみたいに女小鬼に欲情して押し倒した冒険者がいたわ。その人小鬼の魔素を体内に取り込んでしまい死んだわ。バカなことはしないでよ)
「さすがに、それはあり得ません。というかアリ姉様がいる限り、人の女性ともできませんよ」
(あら。それは気にしなくていいわよ。最中、ずぅぅと応援してあげるから)
「やはり無理そうです。ところで、小鬼が人を襲うのは食べるためですか?」
(正確にはさらうのよ。目的は巣の衛生管理。小鬼は洞窟で50から100の団体で生活するわ。巣が不衛生だったら食料が腐りやすいなど良くないことは分かるみたい。でも、片付け方が分からないし、やりたくもない。そこで、人をさらってやらせる)
「巣の掃除ですか。意外と酷くないですね」
(ではヤスオ、奴らの食べ残しをあさり、排泄物を道具もなしで片付けるのを朝から晩までやってみる?)
「うっ。それは随分、酷い目に遭うのですね。死にたくなります」
(そうでしょう。いい、魔物は我々人間界の生態系を壊すために悪魔族が送り込んだものなの。だから本来、自然界にはいてはいけないものよ。次は欲情しないでね)
「欲情していませんが、わかりました」
(でも、小鬼が四体も出るなんて。近くに巣でもあるのかしら)
その後、薬草採取を行い、陽が暮れたら小屋に戻って食事を取る。食べ終わると、調薬して終わると本を読み勉強する。そして、眠る。
次の日も、同じ事を繰り返す。そんな生活を何日も送った。
何日か過ぎた夜。いつも通り調薬をしていた。
(今日も小鬼と遭遇したわね。今日で合計何体になった?)
あの日以降、何度もゴブリンに遭遇した。そして、遭遇するごとに討伐していた。だが、あの日取り逃がしたゴブリンと出会うことはなかった。
「えーと、2体、3体、2体、2体、2体の今日は3体だから」
(約15体かぁ)
「13体ですけどね」
(14体よ。少し多いわね。ヤスオ、そろそろ街に帰ろうか)
「本当ですか。やっとかー」
(この事、組合に報告しといた方がいいと思う。それにヤスオも殺しに慣れたみたいだし)
「アリ姉様、言い方。それじゃ殺し屋みたいじゃないですか」
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