異世界での異生活

なにがし

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43.救出

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「この辺までは見えたのですけど。」

(待って、正面右に穴がない?)
「ありますね。まさか、あれが入り口。ずいぶんと小さいですね。」

 穴に近づき、周囲を観察した。中腰でしか入れない大きさに、かなり深そうだ。

(さてヤスオ。ここで応援を呼びたいところだけど、今から西の森に行って戻る時間はないわ。無理はしない約束だけど、後で門番とシンシアに謝ってね。)
「正直、西の森に巣があって欲しかったのですが、見つけてしまっては、仕方ないですね。行きましょう。」

 中腰の姿勢で歩くので、普段のように歩けない。
まるで、ペンギンのような歩きになってしまうが、進むしかない。
中は、鼻が走り去るような、ひどい臭いで、それだけで苦痛だった。
洗濯バサミが欲しくなったが、口で息をすると口の中が臭くなりそうなので、耐えることにする。
ペンギンとスメハラに耐えていたら、奥からゴブリン達の奇声が反響して聞こえてきた。
間もなくなのだろうが、ペンギン歩きで太ももが限界に達し、つまずき、地面に手をついた。
 落ち着かない場所だが仕方なく、そのまま座り休む。

(ここで小鬼に遭遇したら、狭いから盾をもっているヤスオの方が、有利だわ。攻撃を受けて刺してね。後ろからきた場合は、躊躇せず投石魔法で仕留めて。そのダガーは魔力伝導の高い物だから、持ったままでも魔法が使えるわ。)
「了解。」
(返事してはダメ。気づかれるわよ。)

うなずく。

(奴らは集団で生活しているから必ずこの先にひらけた場所があるわ。そこにアイルがいる。まずアイルの場所を検索して、すみやかに移動して保護するわよ。)

 ペンギン歩きを再開する。
運良くゴブリンに遭遇する事なく、読み通りのひらけた場所に出た。
その場所は洞窟の最奥に位置し、2人分の高さがあり、中でリレーができるくらいの幅と奥行きがあった。
ゴブリン達は暗闇の中を、それぞれが好き勝手なことをしていた。
ヤスオは岩陰を見つけ、そこに移動して魔法を使う。

「スチェ。」

 アイルはその場所の中央にいた。ヤスオは岩陰から中央を覗いてみた。
よく見えないが、アイルと思われる影が見えた。
アイルの影は、まったく動かず、周りには見張りのゴブリンもいない。

──まさか。

最悪の事態を想像した。だとしても、作戦に変更はなしと開き直った。

(ここは暗いから、照明魔法で奴らの目をくらまして一気に中央へ行くわよ。)
「ブライヒトン。」

あえて大声で唱えた。ゴブリン達は声のする方を向いてしまい、照明魔法の直撃を受けた。

──ギャ、ギャ、ギャァァ。

 ヤスオはすぐに駆け出し、光が背中を照らしたので、被害はなかった。

「スタークンガカーパス。ラッスンサステーコン。」

さらに、身体強化と防具強化魔法を唱えながら、一気に中央へ駆け寄る。

「アイル。」 (こ、これは……。)
「そ、その声はヤスオ?」

 照明魔法のおかげでその姿は、はっきりと見えた。
顔は腫れあがり目元が塞がれ、目を開けることができない。
しかも、服はビリビリに裂かれ、全身アザだらけになっていた。
散々、こん棒で打たれたのが容易に分かる。
それでも必死に戦ったのだろう、左手の平は強く握り締め、右手には園芸用のナイフを持っていた。

「そうだ、ヤスオだ。助けにきたぞ。」
「お願い。お姉ちゃんも助けて。」
「お姉ちゃん?」

 周りを見渡すと少し離れた場所に、人らしきものが放置されていた。
遠目で見ても、アイルよりもひどい状態に見え、生きているのは奇跡だと思えた。

「分かった。助ける。だから心配するな。ハイルン。」

 アイルに治癒魔法をかける。体中の腫れ、打撲痕が引いていく。
アイルを背中に乗せると、すぐにもう一人の人に駆け寄った。

「おい。大丈夫か?ハイルン。」

 治癒魔法をかけたが反応がない。身体のどの部分も治癒されることがなかった。
ヤスオは、確認のため、収納魔法を唱えてみる。

「クレネラッゴン。」

 余談だが、この時ヤスオは収納袋を持たずに収納魔法をかけた。
初めて、袋をイメージしての収納魔法に挑戦した。
そして、見事に成功した。
 だが、そんな事より、収納できた事が悔しく、悲しかった。

「くそぉぉぉぉ。」

 ここまでくると、ヤスオとアリアドネの怒りは頂点を極めていた。
2人は我を忘れ、過激な事を考えた。

(ヤスオ、皆殺しにするわよ。ここでは、火と水魔法は使えないわ。ならば、爆風魔法を四方に放つ広範囲爆風魔法を、ゲロを吐くまで使いなさい。呪文は、知っているわね。)
「はい。アネゴウサウスワルストーム。」

 ヤスオの体が輝き、四方向すべてへ、強風が吹き荒れる。
多くのゴブリンが風に吹き飛ばされて、壁や天井に叩きつけられ魔石に戻る。

 広範囲爆風魔法、魔力9を使用したヤスオ初の大魔法だった。
それを連続して3度も放ち、ゴブリン達は逃げることもできず、ただ数を減らしていった。
最後に、土壁魔法で出口を塞ぎ、探知魔法で残ったゴブリンを見つけては、投石魔法とタガーで仕留めた。
すべてのゴブリンが魔石化したのを確認すると、ヤスオはその場を立ち去ろうとする。

(待って、どこにいくの。魔石をすべて回収して。)
「今は、そんな事やっている場合じゃないですよね。早くアイルを連れて帰らないと。」
(気持ちは分かるけど、すでに治癒魔法を施していつから、これ以上の処置はないわ。もはや、何処にいようが結果は変わらない。それより魔石を放置する方が危険だわ。)
「放置すると、どうなるのです。」
(悪魔族によって新たに、魔物を創造されるわ。魔物は死んで魔石に戻っても、魔石を処分しないと本当の意味で死んだとは言えないの。お願いだから、魔石を回収して冒険者組合に提出して。)
「いやです。復活してもまた、殺せばいい話です。今はアイルを優先します。」
(それは、手抜きよ。また、同じ事を繰り返すの?アイルの左手に、あなたは気づかないの?)

──左手?

アイルを背中から降ろすと、強く握りしめた左手が気になった。

「アイル。左手に何を握っている?」

 アイルの顔の腫れが、引いたようで、右目が開いた。そして、左手の平を開いた。
そこには、小さな魔石があった。

(やっぱり、小鬼の魔石ね。おそらくアイルが仕留めた物よ。こんな目に遭いながらも、この子は責任を果たしているのに、あなたは放棄するの?)
「…分かりました。」

 検索魔法で魔石の位置を把握して、すべての魔石を拾い集めた。

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