異世界での異生活

なにがし

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42.追跡

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エガートは目を閉じ眠ろうとする。

「ハイルン。」

 エガートに治癒魔法をかけた。
傷の痛みが引いてきたせいか、エガートから寝息が聞こえてくる。
ヤスオは部屋を出ようと扉を開けると、すぐ横にアンナが壁によりかかっていた。

「エガート寝ちゃったよ。傷は大丈夫そうだ。少しして様子を見にきてくれ。」
「本当。良かった。じゃ、あとでまたくるね。」

 アンナは嬉しそうにどこかへ行ってしまった。

「アリ姉様。トイ爺さんもアンナもエガートも、みんな、できる事を必死でやりました。誰にも責任はありません。すべての責任は手抜きをした俺にあります。」

 ヤスオは自身にかつてないような、腹立たしさを覚え、自分を殴りたくなった。

(悔やんでいる暇はないわ。すぐに取り返しに行くわよ。)
「はい。」

──まずは小鬼共、アイルは返してもらうぞ。

 自身への罰は、それからだ、と腹を決めた。

 セメレとマイヤは孤児院に戻り、夕飯の支度をしていた。
それに伴い、子供達とシンシア達も孤児院に戻り、手伝いをしていた。
ヤスオはシンシアを見つけると、歩み寄り声をかけた。

「シンシアさん。組合長はどこを探索しているのですか?」

 シンシアは、ヤスオの苦悶に満ちた表情に、何かあると感じていた。

「アイルがさらわれたのは北門近くだから、北門に近い西の森を探索していると思うわ。トイ爺さんも姿が見えないから、そこに行ったと思う。」

 マルの報告は間に合わなかった。おそらく巣は東の森。

──ならば、俺が行こう。

「分かりました。では俺が、東の森を探してきます。」
「ヤスオさんが?今から?ダメよ。G級冒険者にゴブリン退治は無理だわ。」
「じっとして、いれないです。小鬼なら倒した事がありますから。」
「シンシア行かせてやれよ。東の森なら、魔物は、ほとんどいないから安全だし、大人だから、小鬼に遅れをとることはないよ。まさか、小鬼相手に浮気をすると心配しているのか?」

 イーシアもヤスオの表情から何かあると感じ、行かせないほうが、余計な問題を生むのではと心配していた。
イーシアの挑発的な発言に、シンシアは額に十字路を浮かべ、声を荒げた。

「わ、わたしとヤスオさんは、そういった関係ではありません。なので、ゴブリンとどうなろうが、浮気にはなりません。」
「じゃぁ、何がダメなのだ?」
「これ以上、騒ぎが大きくなるのを、心配しているだけです。」
「心配し過ぎだ。今は捜し手が1人でも多い方がいい。」
「…分かりました。ヤスオさん必ず無事に、帰ってきてください。」
「はい。分かりました。」

 なぜイーシアが、行かせる方に票を入れたのか分からないが、ヤスオは、借りができたと感謝した。


「G級さん、さすがに、これからは無理だ。夜になっちまう。」

 東門の門番は必死にヤスオを止めていた。

「お願いします。東の森を、確認するだけですから。」
 
 必死の表情で、引き下がらないヤスオに、門番は根負けした。

「いいですか。無茶は絶対にしないでください。そして必ず帰ると約束してください。」
「はい。約束します。」
「いいでしょう。G級ヤスオ、通ってよし。」
 こうしてヤスオは門を走り抜け、東の森へと急いだ。

(ヤスオ。前にも言ったけど小鬼は労働の為にさらうから、殺したりしないわ。でも、労働はかなり苦痛だから時間の勝負よ。)
「はい。急ぎましょう。」
(しかも、薬は全部換金したから予備はない。今、持っている魔力を使い果たしたら、終わりだから覚悟してね。)
「はい。節約します。」
(まず装備を身に付ける。次に、前に小鬼に遭遇した場所に移動してアイルを検索魔法で探す。そこで範囲内に当たればいいけど、いなければ次の場所に移動して検索魔法を繰り返すわよ。)
「はい。了解です。」
(じゃ、装備品を出して。魔力がもったいないからランタンも一緒に出してよ。)
「ビファイオン。」

 装備を身に纏い、森に入る。まだ、陽は落ちてないが、光は森の木々に遮られ、薄暗かった。

「ランタンに火を入れましょうか?」
(いいえ、まだ前がみえるわ。ランタンに火を入れると、こちらが丸見えになるからできるだけ、つけないようにしましょう。)

 そのまま小鬼遭遇場所まで、なんとかたどり着き、検索魔法をかけた。

「スチェ。」
(どう?)
「ダメです。いません。」

 アリアドネは、ゴブリンと遭遇した時の記憶を思い起こし考えた。

(あの二体は、河の方へ逃げて行ったわよね。追いかけましょう。ここからはランタンに火を入れて。)
「はい。ツンドン。」

 着火魔法でランタンに火を灯し、先を急ぐ。
枝がたくさん折れ、不自然な空洞がある茂みを見つけた。

(ここを何者かが強引に通ったみたいね。)
「小鬼ですか。」
(おそらく。わたし達もここを抜けましょう。)

 さらに進むと、低い崖のふもとに出た。

「これくらいなら、登れますよ。」
(待って。ここで、検索魔法をかけましょう。)

──この辺に何かある。
 アリアドネの長年の経験が、何かを訴えていた。

「スチェ。」
(どう?)
「いました。この崖の中?」
(やはり、巣があったわね。入り口を探すわよ。そのままで、探知魔法を使って。近くに生き物がいないかしら?)
「分かりました。エケンヌン。」
……。
「いました。2体ゆっくりこちらに向かってきます。」
(明かりを消して。ゆっくりならまだこちらに、気がついてないようね。隠れてやり過ごしましょう。)
ランタンの火を消し、近くの茂みに入り、息を殺した。

──ギッ、ギャギャギャァァ

 遠くの方から、ご機嫌そうな声が近づいてくる。

(ヤスオ、暗視魔法。)
「ナックシット。」

 小声で唱え、声のする方向を注視した。
近づいてくるのは、ご機嫌そうにウリ坊を運んでいる、2体のゴブリンだった。

(これは、わたしにも見えるのね。跡をつけて入り口に案内してもらいましょう。)

 やり過ごし、ランタンはその場で放棄して後をつけた。

──ここで、枝を踏んで、気づかれるのがお約束だよな。

 ヤスオはお約束を履行しないよう、足元に細心の注意を払った。

──ゴチン。

 頭に激痛が走り、亀のように、首を体内に収納しそうになった。
口を開けられなかったので、声は出なかったが、代わりに鼻水が出た。
 突然、音がして木が大きく揺れたので、ゴブリン達は驚いてウリ坊を投げ捨て、逃げ出した。
ヤスオは涙目でうずくまり、激しく頭をさすっていた。

(何やっているのよ。痛いし、見失ったじゃない。魔力が勿体ないから、治癒魔法使わないでよ。わたしだって痛いのだから。)
「すいません。おーいて。」
  
 頭をさわると、痛く、膨らみができていた。
タンコブを両手でかばいながら、とりあえず、見失った場所まで行ってみた。

「この辺までは、見えましたけど。」

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