異世界での異生活

なにがし

文字の大きさ
50 / 117

50.解体

しおりを挟む
(やっぱりわたしのせいで、ヤスオは元の世界に戻れなかったのね。ごめんね。)

「美人の神様が住みついて、文句言う男がいると思います?光栄にしか思っていませんよ。」
(わかっているじゃない。辛抱していたらそのうち加護があるわよ。)
「もう、もらっています。それより、優しい旦那様ですね。」
(ええ。自慢の旦那様で大好きよ。)
「はいはい。ご馳走様です。」


翌朝、完全に日が昇りご近所さんが外出し始めた頃、ヤスオは目を覚ました。

「あーよく寝た。」
(本当によく寝ていたわね。遅くまで柿を吊るすからよ。わたしの部屋、柿だらけじゃない。)

 柿の皮をむき、紐につけ、日当たりのよい部屋に吊るし、窓を少し開け、風通しを良くする。
これらを、一晩で行ってしまい、夜がすっかり更けてしまった。
しかも、その部屋がアリアドネの私室だったので、ものすごく怒られ、ヤスオは何度も頭を下げ説得し、やっと許してもらった。
こうして、寝るのが遅くなった。
ここで蒸し返されたら、また説教を食らうと思い話題をかえる。

「今日から西の森に行くのですよね。」
(今日は休みにして準備をしましょう。)
「何の準備ですか?」
(西の森に行く準備よ。日帰りだと効率悪いから、一週間は覚悟してね。)
「わかりました。それで、どこから行きます?」
(冒険者組合よ。猪と角ウサギの解体と魔石の換金。それにまだシンシアに服を渡せてないでしょ。)
「そうでした、忘れていました。昨日渡せばよかったですね。」
(昨日は色々あったから無理よ。今日がベストよ。それが終わったら、ダナエの店に行って、わたしの服を買ってね。その後は食料の買い出し。)
「服、いります?」 (い、る、の。)
「はい。」

 支度をして朝食を済まし、冒険者組合へ。朝食は前日に食べ残した串焼きだった。
これは、アリアドネのリクエストで、昨夜の事もあり、渋々応じた。
朝から肉で、喉を通りにくかったがアリアドネは大喜びだった。

 冒険者組合に到着した。冒険者組合は、正面に立って左端に入口がある。そこを抜けると、正面奥に各受付があり、さらに奥が事務所になる。入って右側は食堂になっており、その奥が厨房になっていた。建物のほぼ中央に2階に上がる階段が見え、階段の下の空間に職員専用の扉がある。その扉の向こうに解体場があるらしい。
受付には順番待ちの冒険者が数人並んでいて、まだ幼さが残る可愛らしい女性が対応していた。

「まず、何から始めます?」
(まずは、解体。それから魔石換金をして、最後に受付ね。)

 受付の隣が魔石の換金受付になっている。その受付カウンターが手前に直角に曲がっており、曲がった先が解体受付になっていた。
朝の時間帯に解体依頼をする人は珍しく、解体受付には職員を含めて誰もいなかった。

「すいません。誰かいませんか?」

 声をかけながら、角ウサギと猪とウリ坊を出した。
奥の扉から、無精ひげをはやしたおじさんがでてきた。
帽子をかぶり、胸まであるエプロンをつけ、血だらけの長靴を履いていた。

「待たせたな、兄ちゃん。解体か?」
「はい。これをお願いします。」
「おいおい、兄ちゃん。こんな子供まで殺すことは、ねぇだろう。」

おじさんはウリ坊を手に取り、顔をしかめた。

「ち、違います。これは小鬼から奪い取ったものです。」
「なんでい、そういう事か。じゃぁ、仕方ねぇな。これぐらいならすぐ済むからちょっと待っていな。」

おじさんは軽々と素材を持ち上げると、次々と台車に乗せた。
 
(肉以外は買取りで。)
「あのー。肉以外は買取で、お願いします。」
「あいよ。」
 
おじさんは、台車を押しながら手を振って、奥に行ってしまった。
 
(今の人はセセ。みんなは親父さんと呼ぶから、ヤスオもそう呼んで。)
 
 その後どうしていいか分からず、振り返りカウンターに寄りかかる。
 目の前に、受付に並んでいる人達がいる。その人達全員がヤスオに背を向け、壁の方を見ていた。壁には、依頼書がたくさん貼ってあり、それを見て、あぁでもない、こぉでもないと話していた。
 
(朝に並んでいる人の大半は、依頼を他の冒険者に達成された人達ね。何とかお金にならないか、受付で相談するのよ。)
「早い者、勝ちですか。」
(そうよ。でも、組合がうまく立ちまわってくれるから、ここにいる人達が損をすることはないわ。)
 
 宣言通り、親父さんはすぐに帰ってきた。
 
「そらよ。肉と討伐証明と受取証明だ。内容に文句があるのなら、受付で言ってくれ。」
 
 そう言い残し、早々に奥へ引っ込んでしまった。
 
「討伐証明と受取証明?」
(討伐証明は、角ウサギを間違いなく討伐していました、の証明。受取証明は肉以外の革や角を買い取りしました、の証明。どれも受付に持って行けば、加点、換金されるわ。)
「ここで、加点換金はしてくれないのですか。」
(親父さんは解体が仕事でとても忙しいのよ。そんなことまでやらせたら、暴れるわね。)
「それもそうか。」

 ヤスオは肉が入っていると推測される紙袋が気になった。
紙袋は5つあり、それぞれにいろんな部位の肉が入っていると予測される。
恐る恐る、袋を覗いてみる。

──ホッ。
 
 大惨事を想像したが、それとは程遠く、肉は各部位に分かれていて、丁寧に布で包んであった。
袋の中身を確認すると一歩下がって袋に手をかざし、目を閉じた。
 
(何、しているの?)
 
 目を開くと袋が消えていた。
 
「できた。」 
(まさか、無詠唱で収納したの?)
「はい。」
(いくら何でも、成長が早すぎる。)
「成長しているわけではないと思います。アリ姉様の技術を再現しているだけかと。」
(つまり、わたしの能力を利用して魔法を使っていると。)
「はい。でないと人である俺が全属性を使えるのは、おかしいですから。」
(じゃあ、わたしがヤスオから消えたら?)
「すべて失い、振り出しに戻ると思いますよ。」
(わたしが身体を取り戻したら、すべてを失うということ。いつから?いつからそれに気がついたの?)
「全属性使いだとわかってからしばらくして、ですけど。……ちょっと待ってください。」
 
 誰もいない解体受付で、誰かと話をしているヤスオを、周りが気持ち悪がっていた。
 
「ヤスオさん?あぁやっぱりヤスオさんだ。」
 
 声をかけてきたのは、職員専用扉からでてきたシンシアだった。
受付の女の子が、ブツブツと何か言っている不審者がいるとシンシアに相談していた。
シンシアは確認のため、事務室からでてきていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~

渡琉兎
ファンタジー
政権争いに巻き込まれた騎士団長で天才剣士のアルベルト・マリノワーナ。 彼はどこにも属していなかったが、敵に回ると厄介だという理由だけで毒を盛られて殺されてしまった。 剣の道を極める──志半ばで死んでしまったアルベルトを不憫に思った女神は、アルベルトの望む能力をそのままに転生する権利を与えた。 アルベルトが望んだ能力はもちろん、剣術の能力。 転生した先で剣の道を極めることを心に誓ったアルベルトだったが──転生先は魔法が発展した、魔法師だらけの異世界だった! 剣術が廃れた世界で、剣術で最強を目指すアルベルト──改め、アル・ノワールの成り上がり物語。 ※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうにて同時掲載しています。

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

処理中です...