異世界での異生活

なにがし

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50話 久しぶりの冒険者組合

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(やっぱり私のせいで、ヤスオは元の世界に戻れなかったのね。ごめんね)

「美人の神様が住みついて、文句言う男がいると思います?光栄にしか思っていませんよ」
(わかっているじゃない。辛抱していたらそのうち加護があるわよ)
「もう、もらっています。それより、優しい旦那様ですね」
(ええ。自慢の旦那様で大好きよ)
「はいはい。ご馳走様です」


翌朝、完全に陽が昇りご近所さんが外出し始めた頃、ヤスオは目を覚ました。

「あーよく寝た」
(本当によく寝ていたわね。遅くまで柿を吊るすからよ。わたしの部屋、柿だらけじゃない)

 柿の皮をむき、紐につけ、日当たりのよい部屋に吊るし、窓を少し開け、風通しを良くする。これらを、一晩で行ってしまい、夜がすっかり更けてしまった。しかも、その部屋がアリアドネの私室だったので、ものすごく憤慨しヤスオは何度も頭を下げ説得して、やっと許してもらった。こうして、寝るのが遅くなった。
 ここで蒸し返されたら、また説教を食らうと思い話題を変える。

「今日から西の森に行くのですよね」
(今日は休みにして準備をしましょう)
「何の準備ですか?」
(西の森に行く準備よ。日帰りだと効率悪いから、一週間は覚悟してね)
「わかりました。それで、どこから行きます?」
(冒険者組合よ。猪と角ウサギの解体と魔石の換金。それにまだシンシアに服を渡せてないでしょ)
「そうでした、忘れていました。昨日渡せばよかったですね」
(昨日は色々あったから無理よ。今日がベストよ。それが終わったら、ダナエの店に行って、わたしの服を買ってね。その後は食料の買い出し)
「服、いります?」 (い、る、の)
「はい」

 朝食を何にしようかと考える。といっても、和にするか洋にするかの二択なのだが。だが、今朝は前日に食べ残した串焼きにするようアリアドネが要望した。昨夜の事もあり、渋々応じた。寝起きに肉で、喉を通りにくかったがアリアドネは大喜びだった。少し機嫌がよくなったようだ。

 朝食を済ませ家を出て、すでに冒険者組合の前まで来ていた。冒険者組合は、建物の正面に立って左端に入口がある。そこに入ると、正面奥に各受付があり、さらに奥が事務所になる。入って右側は食堂になっており、その奥が厨房になっていた。建物のほぼ中央に2階に上がる階段が見え、階段の下の空間に職員専用の扉がある。その扉に入ると解体場があるらしい。
 受付には順番待ちの冒険者が数人並んでいて、まだ幼さが残る可愛らしい女性が対応していた。

「まず、何から始めます?」
(まずは、解体。それから魔石換金をして、最後に受付ね)

 受付の隣が魔石の受付になっている。その受付カウンターが手前に直角に曲がっており、曲がった先が解体受付になっていた。
朝の時間帯に解体依頼をする人は珍しく、解体受付には職員を含めて誰もいなかった。

「すいません。誰かいませんか?」

 声をかけながら、角ウサギと猪とウリ坊を出した。奥の扉から、無精ひげをはやしたおじさんが出て来た。帽子をかぶり、胸まであるエプロンをつけ、血だらけの長靴を履いていた。

「待たせたな、兄ちゃん。解体か?」
「はい。これをお願いします」
「おいおい、兄ちゃん。こんな子供まで殺すことは、ねぇだろう」

おじさんはウリ坊を手に取り、顔をしかめた。

「ち、違います。これは小鬼から奪い取ったものです」
「なんでい、そういう事か。じゃぁ、仕方ねぇな。これぐらいならすぐ済むからちょっと待っていな」

おじさんは軽々と素材を持ち上げると、次々と台車に乗せた。
 
(肉以外は買取りで)
「あのー。肉以外は買取りで、お願いします」
「あいよ」
 
おじさんは、台車を押しながら手を振って、奥に行ってしまった。
 
(今の人はセセ。みんなは親父さんと呼ぶから、ヤスオもそう呼んで)
 
 その後どうしていいか分からず、振り返りカウンターに寄りかかる。
 目の前に、受付に並んでいる人達がいる。その人達全員がヤスオに背を向け、壁の方を見ていた。壁には、依頼書がたくさん貼ってあり、それを見て、あぁでもない、こぉでもないと待ちながら話していた。
 
(朝に並んでいる人の大半は、依頼を他の冒険者に達成された人達ね。何とかお金にならないか、受付で相談するのよ)
「早い者、勝ちですか」
(そうよ。でも、組合がうまく立ちまわってくれるから、ここにいる人達が損をすることはないわ)
 
 宣言通り、親父さんはすぐに帰ってきた。
 
「そらよ。肉と討伐証明と受取証明だ。内容に文句があるのなら、受付で言ってくれ」
 
 そう言い残し、早々に奥へ引っ込んでしまった。
 
「討伐証明と受取証明?」
(討伐証明は、角ウサギを間違いなく討伐していました、の証明。受取証明は肉以外の革や角を買い取りしました、の証明。どれも受付に持って行けば、加点、換金されるわ)
「ここで、加点換金はしてくれないのですか」
(親父さんは解体が仕事でとても忙しいのよ。そんなことまでやらせたら、暴れるわね)
「それもそうか」

 ヤスオは肉が入っていると推測される紙袋が気になった。紙袋は5つあり、それぞれにいろんな部位の肉が入っていると予測される。恐る恐る、袋を覗いてみる。

──ホッ。
 
 大惨事を想像したが、それとは程遠く、肉は各部位に分かれていて、丁寧に布で包んであった。
 袋の中身を確認すると一歩下がって袋に手をかざし、目を閉じた。
 
(何、しているの?)
 
 目を開くと袋が消えていた。
 
「できた」 
(まさか、無詠唱で収納したの?)
「はい」
(いくら何でも、成長が早すぎる)
「成長しているわけではないと思います。アリ姉様の技術を再現しているだけかと」
(つまり、私の能力を利用して魔法を使っていると)
「はい。でないと人である俺が全属性を使えるのは、おかしいですから」
(じゃあ、私がヤスオから消えたら?)
「すべて失い、振り出しに戻ると思いますよ」
(私が身体を取り戻したら、すべてを失うということ。いつから?いつからそれに気がついたの?)
「全属性使いだとわかってからしばらくして、ですけど。……ちょっと待ってください」
 
 誰もいない解体受付で、誰かと話をしているヤスオを、周りが気持ち悪がっていた。
 
「ヤスオさん?あぁやっぱりヤスオさんだ」
 
 声をかけてきたのは、職員専用扉から出て来たシンシアだった。受付の女の子が、ブツブツと何か言っている不審者がいるとシンシアに相談していた。シンシアは確認のため、事務室から出て来ていた。
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