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51.嫌味
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シンシアは確認のため、事務室から出てきていた。
「こんなところで、アリ姉さんと話していたのですか?不審者だと思われていますよ。」
「面目ない。」
(ごめん。驚いて、つい。)
後頭部をかき、耳まで真っ赤になっていた。これからは、魔法同様、周りを気にしてアリアドネと話そうと思う。
「それで、今日は魔石の換金ですか?」
「はい。それもありますが、ちょうどよかったです。シンシアさんにも用がありまして。」
「わたしに?アリ姉さんのことでしょうか?」
「いえ。これです。」
両手の平を上に向けて、シンシアの前に差し出す。
すると突然、手品のように両手の平の上にリボンが付いた紙袋が出現した。
シンシアは無詠唱に、かなり驚いたがアリアドネが宿っていることを再認識し、受け入れた。
「これは、何ですか?」
「以前お約束した、福屋の服です。」
「まぁ、覚えていてくれたのですね。ありがとうございます。うれしいです。」
ヤスオは再び顔が真っ赤になる。シンシアは紙袋を受け取り、中身を覗いた。
そして、服を取り出すと自らに当てがって、クルリと一回転して見せた。
「どうですか?似合っていますか?」
「はい。とても。」
ここまで無邪気に喜んでくれるとヤスオ自身も嬉しくなり、胸がときめいた。
シンシアは周りの視線に気がつくと、慌てて服をたたみ紙袋に入れた。
それでも、うれしそうに紙袋を抱えヤスオに感謝した。
「これをヤスオさんからの告白として、受けとめてもいいですか?」
「いいですけど、受けていただけるのですか?」
突然のシンシアの振りに、ヤスオはもしかしたらと、胸躍らせた。
心臓が大きな音を立て、鼻息荒く、目は見開き血管が浮き上がり、頭からは湯気が大量発生して、かつてない緊張に覆われながらも大いに期待した。
「お断りします。」
──ですよねぇぇ。
自分から話を振っといて、振るなんてダジャレかよ。
などと突っ込む気力は出るはずもなく、全身脱力感に覆われ、肩を落とし一気に歳をとった気がした。
目と心には大雨が降る。
「ヤスオさんとお付き合いすると、会うたびにアリ姉さんがついてくるでしょう。親同伴のデートみたいで嫌です。」
確かに、なるほど、納得である。つまりアリアドネさえ、いなければ受けたかもしれないと。
そう考えると、涙は止まり、心の雨雲もどこかに行った。そしてアリアドネが、ものすごく邪魔だと思った。
(おい、おまえ。今何かものすごく失礼な事、考えているだろう。)
頭を左右に激しく振り、今考えた事を猛省した。
そして、シンシアが話を振っておいて、振った理由を考えた。
「そりゃ、そうですね。」
ヤスオはシンシアの顔を見ると、なぜか面白くなり、笑った。シンシアもつられてか、笑っていた。
──アハハハハハハ…。
笑いが収まるとシンシアはヤスオに手を振りながら、事務室に戻った。
完全に二人の世界に入っていたが、ここは、冒険者組合。ヤスオは公衆の面前で、告白したことになった。そして振られたのだが、相手はまんざらではなかった。そのように周囲には見えた。
ヤスオは周囲の視線に気づき、やっと自分の置かれた状況を、理解した。
恥ずかしくなり、人気のない階段の下に移動し、落ち込んだ。
(なかなかいい雰囲気ね。でもお母さんは、許しませんから。)
「あれは、本音ですね。アリ姉様がいる限り、シンシアさんとはないです。俺には“これ以上チョッカイ出さないでね”って言われた気がします。」
(さて、次は魔石の換金ね。そこで魔石証明をもらったら、受付へ行くわよ。)
受付は席が5つある。左2席が受付で、右3席が魔石受付になっていた。
今の時間帯は、受付も魔石受付も1席しか開いていない。
ヤスオは気を取り直して、解放された魔石受付に向かって進む。
(フランツだわ。受付の女の子はユキナね。因縁の相手ばかりね。)
魔石受付にいたのは領主のスパイ、フランツだ。以前ヤスオのあらぬ噂を流し、死刑に追い込もうとした奴だ。
受付のユキナは同僚のチェンチェンと食堂で、ヤスオの架空の話をしてしまい、それを周囲に聞かれてしまうという失態をしてしまった子だ。
フランツを知ったヤスオはアリアドネとの修業の成果を見せることにした。
「やぁフランツ、以前はお世話になったね。」
カウンターに肩ひじをつき、こぶしに頬を乗せ、ボーっと暇そうにしているフランツに声をかけた。
フランツはヤスオを見つけると、慌てて座り直し姿勢を正して対応する。
「はて?以前お会いしましたか?失礼ですが、どちら様で?」
「おやおや、あなたは顔も知らない相手の噂を、たれ流したのですか。それとも、この顔を忘れたのですか?そうとう、頭が悪いようですが、G級と言えば分かってもらえますか。」
フランツは両こぶしを握りしめ、顔を真っ赤にしてヤスオを睨みつける。
「なんだ、お前か。俺は、お館様の指示にしたがって、仕事をしただけだ。俺を恨むのはお門違いだぜ。」
「その指示も、お前のでたらめな報告のせいだろうが。領主さまに、こっぴどく怒られたのだろう?ん?」
ヤスオは、カマをかけたのだが、図星だったようでフランツの目が充血してきた。
そして、さらに顔を赤くし、おでこには血管が浮かび上がる。
「貴様、いい加減にしろよ。こう見えてもわたしは、お館様の衛士だ。G級ごときに遅れはとらんぞ。」
「ほう。ここでひと騒ぎを起こすというのか。それが理由で首になる。間者失格だなぁ。」
──こいつの言うとおりだ。
フランツは胸に手を当て、何度も深呼吸をして自身を落ち着かせる。
「それだけ嫌味を言えば十分だろう。今日のところは見逃してやる。消えろ。」
ヤスオもそれ以上は言うつもりはなかったので、去ろうとした。
しかし、嫌味に夢中になって忘れていたが、魔石換金が目的だったのを思い出して去るに去れなかった。
ヤスオはどう換金の話を切り出そうか考えていた。
「おめぇか。シンシアとイチャついていた奴は。」
後ろから怒鳴りつける奴がいた。
その声に聞き覚えがあり、怒りがこみ上げてきた。
すぐに攻撃魔法を後ろに、ぶっ放したかったが、それをやるわけにはいかない。
胸に手をやり、何度も深呼吸をして自身を落ち着かせた。
(ヤスオ。ヘーカーよ。)
この想定外の緊急事態に目を閉じ、頭を下げ、必死に対応を考えた。
──今こそ、アリ姉様との修業の成果を見せる時。
目を開き、頭を上げた。対応を思いついたようだ。
すると、口元に笑みが浮かぶ。
「こんなところで、アリ姉さんと話していたのですか?不審者だと思われていますよ。」
「面目ない。」
(ごめん。驚いて、つい。)
後頭部をかき、耳まで真っ赤になっていた。これからは、魔法同様、周りを気にしてアリアドネと話そうと思う。
「それで、今日は魔石の換金ですか?」
「はい。それもありますが、ちょうどよかったです。シンシアさんにも用がありまして。」
「わたしに?アリ姉さんのことでしょうか?」
「いえ。これです。」
両手の平を上に向けて、シンシアの前に差し出す。
すると突然、手品のように両手の平の上にリボンが付いた紙袋が出現した。
シンシアは無詠唱に、かなり驚いたがアリアドネが宿っていることを再認識し、受け入れた。
「これは、何ですか?」
「以前お約束した、福屋の服です。」
「まぁ、覚えていてくれたのですね。ありがとうございます。うれしいです。」
ヤスオは再び顔が真っ赤になる。シンシアは紙袋を受け取り、中身を覗いた。
そして、服を取り出すと自らに当てがって、クルリと一回転して見せた。
「どうですか?似合っていますか?」
「はい。とても。」
ここまで無邪気に喜んでくれるとヤスオ自身も嬉しくなり、胸がときめいた。
シンシアは周りの視線に気がつくと、慌てて服をたたみ紙袋に入れた。
それでも、うれしそうに紙袋を抱えヤスオに感謝した。
「これをヤスオさんからの告白として、受けとめてもいいですか?」
「いいですけど、受けていただけるのですか?」
突然のシンシアの振りに、ヤスオはもしかしたらと、胸躍らせた。
心臓が大きな音を立て、鼻息荒く、目は見開き血管が浮き上がり、頭からは湯気が大量発生して、かつてない緊張に覆われながらも大いに期待した。
「お断りします。」
──ですよねぇぇ。
自分から話を振っといて、振るなんてダジャレかよ。
などと突っ込む気力は出るはずもなく、全身脱力感に覆われ、肩を落とし一気に歳をとった気がした。
目と心には大雨が降る。
「ヤスオさんとお付き合いすると、会うたびにアリ姉さんがついてくるでしょう。親同伴のデートみたいで嫌です。」
確かに、なるほど、納得である。つまりアリアドネさえ、いなければ受けたかもしれないと。
そう考えると、涙は止まり、心の雨雲もどこかに行った。そしてアリアドネが、ものすごく邪魔だと思った。
(おい、おまえ。今何かものすごく失礼な事、考えているだろう。)
頭を左右に激しく振り、今考えた事を猛省した。
そして、シンシアが話を振っておいて、振った理由を考えた。
「そりゃ、そうですね。」
ヤスオはシンシアの顔を見ると、なぜか面白くなり、笑った。シンシアもつられてか、笑っていた。
──アハハハハハハ…。
笑いが収まるとシンシアはヤスオに手を振りながら、事務室に戻った。
完全に二人の世界に入っていたが、ここは、冒険者組合。ヤスオは公衆の面前で、告白したことになった。そして振られたのだが、相手はまんざらではなかった。そのように周囲には見えた。
ヤスオは周囲の視線に気づき、やっと自分の置かれた状況を、理解した。
恥ずかしくなり、人気のない階段の下に移動し、落ち込んだ。
(なかなかいい雰囲気ね。でもお母さんは、許しませんから。)
「あれは、本音ですね。アリ姉様がいる限り、シンシアさんとはないです。俺には“これ以上チョッカイ出さないでね”って言われた気がします。」
(さて、次は魔石の換金ね。そこで魔石証明をもらったら、受付へ行くわよ。)
受付は席が5つある。左2席が受付で、右3席が魔石受付になっていた。
今の時間帯は、受付も魔石受付も1席しか開いていない。
ヤスオは気を取り直して、解放された魔石受付に向かって進む。
(フランツだわ。受付の女の子はユキナね。因縁の相手ばかりね。)
魔石受付にいたのは領主のスパイ、フランツだ。以前ヤスオのあらぬ噂を流し、死刑に追い込もうとした奴だ。
受付のユキナは同僚のチェンチェンと食堂で、ヤスオの架空の話をしてしまい、それを周囲に聞かれてしまうという失態をしてしまった子だ。
フランツを知ったヤスオはアリアドネとの修業の成果を見せることにした。
「やぁフランツ、以前はお世話になったね。」
カウンターに肩ひじをつき、こぶしに頬を乗せ、ボーっと暇そうにしているフランツに声をかけた。
フランツはヤスオを見つけると、慌てて座り直し姿勢を正して対応する。
「はて?以前お会いしましたか?失礼ですが、どちら様で?」
「おやおや、あなたは顔も知らない相手の噂を、たれ流したのですか。それとも、この顔を忘れたのですか?そうとう、頭が悪いようですが、G級と言えば分かってもらえますか。」
フランツは両こぶしを握りしめ、顔を真っ赤にしてヤスオを睨みつける。
「なんだ、お前か。俺は、お館様の指示にしたがって、仕事をしただけだ。俺を恨むのはお門違いだぜ。」
「その指示も、お前のでたらめな報告のせいだろうが。領主さまに、こっぴどく怒られたのだろう?ん?」
ヤスオは、カマをかけたのだが、図星だったようでフランツの目が充血してきた。
そして、さらに顔を赤くし、おでこには血管が浮かび上がる。
「貴様、いい加減にしろよ。こう見えてもわたしは、お館様の衛士だ。G級ごときに遅れはとらんぞ。」
「ほう。ここでひと騒ぎを起こすというのか。それが理由で首になる。間者失格だなぁ。」
──こいつの言うとおりだ。
フランツは胸に手を当て、何度も深呼吸をして自身を落ち着かせる。
「それだけ嫌味を言えば十分だろう。今日のところは見逃してやる。消えろ。」
ヤスオもそれ以上は言うつもりはなかったので、去ろうとした。
しかし、嫌味に夢中になって忘れていたが、魔石換金が目的だったのを思い出して去るに去れなかった。
ヤスオはどう換金の話を切り出そうか考えていた。
「おめぇか。シンシアとイチャついていた奴は。」
後ろから怒鳴りつける奴がいた。
その声に聞き覚えがあり、怒りがこみ上げてきた。
すぐに攻撃魔法を後ろに、ぶっ放したかったが、それをやるわけにはいかない。
胸に手をやり、何度も深呼吸をして自身を落ち着かせた。
(ヤスオ。ヘーカーよ。)
この想定外の緊急事態に目を閉じ、頭を下げ、必死に対応を考えた。
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すると、口元に笑みが浮かぶ。
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