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59話 騎士団による刑の執行
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ヤスオは謁見の間を後にし、そのまま城を出て帰ろうとした。
「待て、G級ヤスオ」
マチルダが息を切らしながら追っかけてきた。表情からして、怒っているのが分かる。
「先ほどのお館様に対しての態度はなんだ。無礼にも程があるぞ」
「領主様は、お気を悪くされましたか?」
「お館様はお優しい方だ。あれくらいでは怒りはせん」
「ならば問題ないのでは?」
「臣下として見過ごすわけにはいかない、と言っているのだ」
マチルダは怒りに任せ、腰の剣に手をかけた。
「それで俺に、どうしろというのです。怒ってもいない領主に謝罪するのも変でしょう」
「これから訓練をする。それに参加してもらおう」
「つまり、勝負しろと」
「ついてこい」
ヤスオは城内の訓練場に案内された。訓練場には、多くの騎士が訓練をしていて、己の技術を磨いていた。立ち合いをする者、素振りをする者、教わる者とそれぞれが思うような訓練をしていた。
マチルダは腰の剣を外し、剣置き場にかける。そして適当な木刀を手にすると、片手で何度か素振りをして感触を確かめた。ヤスオにも適当なものを選べと指示をして、自身は訓練場に先に入り待った。
訓練場の壁に、多くの木刀がかけてあり、たくさんの盾が吊るされていた。ヤスオは盾を取り、片手で振るので、短いが軽い木刀を選んだ。
そして、訓練場で待つマチルダの前に立った。
突然、始まった団長の立ち合いに、周りの騎士は訓練をやめ観客になった。皆が息を飲む中、マチルダが木刀を構えた。
(ヤスオこの勝負、勝ってはダメよ。何とか痛くないように負けなさい)
──無茶を言う。
だが、ヤスオも勝つ気はなかった。負けた方が丸く収まると思っていたから。
木刀を腰に置き、素早く切りつける抜刀の構え。マチルダはじわじわと距離を縮める。ヤスオは盾を構え、距離をはかる。
──バン。
マチルダが斬りつけ、ヤスオが盾で防いだ。ように見えるが、ヤスオには何が起こったか分からなかった。
──バン、バン、バン、バン。
マチルダの連続攻撃をヤスオが盾で防いでいるように見える。マチルダはわざと盾に向かって斬りつけていた。ヤスオは全く見えない剣筋に混乱した。これは、勝とうと思っても勝てる相手じゃない。
そう悟り、勝ちに行くことにした。相手は盾を攻撃してくる。盾に当たるタイミングで、相手に突けば一本入るのではと企んだ。
──バン。
ヤスオはマチルダに向かって、突いた。
「あれ?」
木刀はマチルダまで届かなかった。互いの木刀の長さに大きな違いがあった。すかさず盾の裏を斬りつけられ左手をはじかれた後、左肩に激痛が走る。
「いっ」(いたぁぁぁぁ)
ヤスオは肩に手をやり、左の手と膝を床につけた。
「その態勢をひざまずくというのだ。次からお館様の前ではそういう姿勢でいろ」
そう言うと木刀を部下に渡し、剣を持って訓練場を後にした。
(やられたわね。あれで手加減しているのだから、かなわないわね)
悔しいが、狙い通り負けたのだから丸く収まったと思った。
「お前何者だ?団長があんなに怒っているのを、久しぶりに見たぜ」
だが、これで終わらなかった。他の騎士たちが木刀を持ち始めていた。
「何をやったか知らないが、我々の刑の執行が必要なようだな」
一人の男がヤスオに木刀を振り下ろしてきた。マチルダと違って、はっきりと剣筋が見える。簡単に盾で防いだがマチルダにやられた左肩が痛み、力が入らず盾ごと弾かれてしまった。さらに、別の男に背中を打ち込まれ、また別の男に喉を突かれた。こうして、ヤスオ一人に対して騎士団全員が襲いかかり、足腰が立たなくなるまで叩きつけられた。
「そーらよ」
ヤスオは二人の騎士に脇を持って運ばれ、折れた足を引きずられながら城外に連れ出された。そのまま、両手、両足を持ってブランコのように揺らされて、道端に放り投げられた。
(いたたたたた。何やっているのよ、あの女。部下の教育がなってないじゃない)
アリアドネはかつて経験のない屈辱に心底、怒っていた。天罰を下すのには十分の行為だが、自らの手で仕返しがしたくて天罰を求めるのを今は、控えた。
ヤスオの体はかなりひどい状態で集団暴行中、死を覚悟したくらいだ。でもなんとか生き残った。ヤスオは治癒魔法をかけ回復を待つ。
「あんな状態になると、集中できなくて魔法が使えませんね。あーなったら終わりだと、よく分かりました。痛かったけど、前向きに考えましょう」
ヤスオは身体の穴すべてから出血し、顔の原型はなく、両手足の先はありえない方を向き、芋虫のようになっていた。
(どう考えるのよ)
「いい訓練になったとか、次からの面会に断る理由ができたとか」
(次の面会を断れるのは、いいわね)
「じゃあ、それにしましょう」
ヤスオのそばを多くの人が通ったが、誰も助けてはくれなかった。この街では罪を犯した人間が、騎士団に百人斬りの刑を受け、道端に捨てられることがある。その罪人に手を貸せば、その者も罰を受けることになる。最低でも一刻は放置され、その後付き添いの衛兵が治癒薬を飲ましてくれる。
ヤスオがやられたのが、まさに百人斬りの刑で、街の人からは罪人に間違われ手を貸しもらえなかった。さらに、予定外の刑だったので、衛兵が付き添っていない。
かなりの時間が過ぎ、傷も癒え、両手足の向きが正常に戻った。起き上がり、身体の状態を確認したら、北門に向かって歩き出す。
「さて、遅くなりましたが西の森に行きますか」
(その前に何か食べよう。冒険者組合でどう?)
「あまり、お金がないのですが」
(一食分くらいあるでしょ。パーと食べて切り替えましょう)
「…そうですね」
ヤスオは冒険者組合の前まで来ていた。入口を静かに半分ほど開け、中の様子を覗く。前日、フランツにヘーカーと一悶着あったので二人がいないか様子を見ていた。
二人の姿が見えないので、中に入り食堂の適当な場所に座った。
お昼には少し早い時間なので、客は誰もいなかった。ウエイトレスが注文を取りに来ようとするが、ヤスオと分かると立ち止まる。ウエイターに視線を送り、代わりにウエイターがやって来た。
「いらっしゃいませ。ご注文は何にします」
(唐揚げ定食とビール中)
「唐揚げ定食と“びぃるちゅう”?」
「かしこまりました」
「待て、G級ヤスオ」
マチルダが息を切らしながら追っかけてきた。表情からして、怒っているのが分かる。
「先ほどのお館様に対しての態度はなんだ。無礼にも程があるぞ」
「領主様は、お気を悪くされましたか?」
「お館様はお優しい方だ。あれくらいでは怒りはせん」
「ならば問題ないのでは?」
「臣下として見過ごすわけにはいかない、と言っているのだ」
マチルダは怒りに任せ、腰の剣に手をかけた。
「それで俺に、どうしろというのです。怒ってもいない領主に謝罪するのも変でしょう」
「これから訓練をする。それに参加してもらおう」
「つまり、勝負しろと」
「ついてこい」
ヤスオは城内の訓練場に案内された。訓練場には、多くの騎士が訓練をしていて、己の技術を磨いていた。立ち合いをする者、素振りをする者、教わる者とそれぞれが思うような訓練をしていた。
マチルダは腰の剣を外し、剣置き場にかける。そして適当な木刀を手にすると、片手で何度か素振りをして感触を確かめた。ヤスオにも適当なものを選べと指示をして、自身は訓練場に先に入り待った。
訓練場の壁に、多くの木刀がかけてあり、たくさんの盾が吊るされていた。ヤスオは盾を取り、片手で振るので、短いが軽い木刀を選んだ。
そして、訓練場で待つマチルダの前に立った。
突然、始まった団長の立ち合いに、周りの騎士は訓練をやめ観客になった。皆が息を飲む中、マチルダが木刀を構えた。
(ヤスオこの勝負、勝ってはダメよ。何とか痛くないように負けなさい)
──無茶を言う。
だが、ヤスオも勝つ気はなかった。負けた方が丸く収まると思っていたから。
木刀を腰に置き、素早く切りつける抜刀の構え。マチルダはじわじわと距離を縮める。ヤスオは盾を構え、距離をはかる。
──バン。
マチルダが斬りつけ、ヤスオが盾で防いだ。ように見えるが、ヤスオには何が起こったか分からなかった。
──バン、バン、バン、バン。
マチルダの連続攻撃をヤスオが盾で防いでいるように見える。マチルダはわざと盾に向かって斬りつけていた。ヤスオは全く見えない剣筋に混乱した。これは、勝とうと思っても勝てる相手じゃない。
そう悟り、勝ちに行くことにした。相手は盾を攻撃してくる。盾に当たるタイミングで、相手に突けば一本入るのではと企んだ。
──バン。
ヤスオはマチルダに向かって、突いた。
「あれ?」
木刀はマチルダまで届かなかった。互いの木刀の長さに大きな違いがあった。すかさず盾の裏を斬りつけられ左手をはじかれた後、左肩に激痛が走る。
「いっ」(いたぁぁぁぁ)
ヤスオは肩に手をやり、左の手と膝を床につけた。
「その態勢をひざまずくというのだ。次からお館様の前ではそういう姿勢でいろ」
そう言うと木刀を部下に渡し、剣を持って訓練場を後にした。
(やられたわね。あれで手加減しているのだから、かなわないわね)
悔しいが、狙い通り負けたのだから丸く収まったと思った。
「お前何者だ?団長があんなに怒っているのを、久しぶりに見たぜ」
だが、これで終わらなかった。他の騎士たちが木刀を持ち始めていた。
「何をやったか知らないが、我々の刑の執行が必要なようだな」
一人の男がヤスオに木刀を振り下ろしてきた。マチルダと違って、はっきりと剣筋が見える。簡単に盾で防いだがマチルダにやられた左肩が痛み、力が入らず盾ごと弾かれてしまった。さらに、別の男に背中を打ち込まれ、また別の男に喉を突かれた。こうして、ヤスオ一人に対して騎士団全員が襲いかかり、足腰が立たなくなるまで叩きつけられた。
「そーらよ」
ヤスオは二人の騎士に脇を持って運ばれ、折れた足を引きずられながら城外に連れ出された。そのまま、両手、両足を持ってブランコのように揺らされて、道端に放り投げられた。
(いたたたたた。何やっているのよ、あの女。部下の教育がなってないじゃない)
アリアドネはかつて経験のない屈辱に心底、怒っていた。天罰を下すのには十分の行為だが、自らの手で仕返しがしたくて天罰を求めるのを今は、控えた。
ヤスオの体はかなりひどい状態で集団暴行中、死を覚悟したくらいだ。でもなんとか生き残った。ヤスオは治癒魔法をかけ回復を待つ。
「あんな状態になると、集中できなくて魔法が使えませんね。あーなったら終わりだと、よく分かりました。痛かったけど、前向きに考えましょう」
ヤスオは身体の穴すべてから出血し、顔の原型はなく、両手足の先はありえない方を向き、芋虫のようになっていた。
(どう考えるのよ)
「いい訓練になったとか、次からの面会に断る理由ができたとか」
(次の面会を断れるのは、いいわね)
「じゃあ、それにしましょう」
ヤスオのそばを多くの人が通ったが、誰も助けてはくれなかった。この街では罪を犯した人間が、騎士団に百人斬りの刑を受け、道端に捨てられることがある。その罪人に手を貸せば、その者も罰を受けることになる。最低でも一刻は放置され、その後付き添いの衛兵が治癒薬を飲ましてくれる。
ヤスオがやられたのが、まさに百人斬りの刑で、街の人からは罪人に間違われ手を貸しもらえなかった。さらに、予定外の刑だったので、衛兵が付き添っていない。
かなりの時間が過ぎ、傷も癒え、両手足の向きが正常に戻った。起き上がり、身体の状態を確認したら、北門に向かって歩き出す。
「さて、遅くなりましたが西の森に行きますか」
(その前に何か食べよう。冒険者組合でどう?)
「あまり、お金がないのですが」
(一食分くらいあるでしょ。パーと食べて切り替えましょう)
「…そうですね」
ヤスオは冒険者組合の前まで来ていた。入口を静かに半分ほど開け、中の様子を覗く。前日、フランツにヘーカーと一悶着あったので二人がいないか様子を見ていた。
二人の姿が見えないので、中に入り食堂の適当な場所に座った。
お昼には少し早い時間なので、客は誰もいなかった。ウエイトレスが注文を取りに来ようとするが、ヤスオと分かると立ち止まる。ウエイターに視線を送り、代わりにウエイターがやって来た。
「いらっしゃいませ。ご注文は何にします」
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「かしこまりました」
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