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68.意地悪
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ヤスオは音を立てないよう部屋を出て、1階の様子を見る。
1階は人でごった返していた。ほとんどが冒険者で、昼食目的の者が大半を占めていた。昼食ついでに、魔石換金や野生動物の解体をする者が多くいる。証明書を持った者も多く、どの受付前にも、たくさんに人が並んでいた。
ヤスオはこれといってやることがないので、この機会に魔石を換金しようと硬貨の入った巾着袋からスライムなどの魔石を取り出し、列の最後尾に並んだ。
ヤスオの前に並んでいる冒険者が、初めて見る冒険者に声をかけた。
「お前、見ない顔だな。新人か?」
「はい、冒険者になってまだ1か月ちょっとしか経っていないです。」
「換金は初めてか?」
「そうですけど。」
「ここでは、証明書しか発行してくれない。金は受付で貰う。気をつけな。」
「それは、知っています。親切にありがとう。」
「まだ1か月なら、等級はFだろう。今回で昇級できそうか?」
「それが、まだGでして。」
「そうか、大抵の奴はFから始まるから…G?…。お前、G級ヤスオか。」
「そうだけど…?」
G級ヤスオ。この言葉を耳にし、周りの冒険者がヤスオに注目した。前を並んでいた者も振り返り、ヤスオを凝視した。そして、伝言ゲームのように隣へ、その隣へと伝えられ、瞬く間に組合中に広まった。
冒険者達は、街の外に出て仕事をこなしている。街に滞在する時間が少ないので、街の人達と違って、ヤスオの顔はもちろん、容姿さえ聞いたことはなく、その姿を見たこともなかった。そのため、耳に入るのは、名前と悪い噂ばかり。その影響で、その場にいた女性冒険者達は、置いていた武器を手にし、警戒態勢をとり、きつい視線を送った。
「そうか、お前があの有名な。まぁ、頑張りな。」
男は、少し委縮した表情を見せ、前を向き何事もなかったように振舞った。その様子に、何か嫌な予感がしてきた。
案の定、ヤスオの後ろに屈強な男達が集まってきていた。それは、女性冒険者の好感度を上げる工作で、悪名高い男から女性達を守る。そう言う名目の新人いじめを行いに来ていた。ただ、以前ヘーカーを手玉にとった話も聞いている。もちろん、そんなことできる訳ないと信じていないが、念のため慎重に行動し単独ではなく集団で、いじめようとした。
そのヘーカー達は、集団には混ざらず距離をおいたところで腕組みをし、壁に寄りかかりヤスオを眺めていた。
「よぉ、新人。ここは魔石の換金所だぜ。間違っちゃぁいねぇか?」
体格がよく、顔が傷だらけで、いかにも怖そうな奴が話しかけてきた。
「いや、間違っていない。ちゃんと魔物を狩ってきた。」
「スライムを1,2匹、狩ってきたのか?そのくらいで、ここに並ぶのは、迷惑だぜ。」
「4匹だ。」
その言葉に、男達が大声で笑う。周りの冒険者も、失笑する者がいて、中には手を叩いて笑う者もいた。男達の目的はヤスオを袋叩きにするものではなく、散々、恥をかかし逃げるように帰る姿をさらし、自分たちの株を上げるのが狙いだ。
「そりゃすげぇ。G級が4匹も倒したのか。それが、本当かどうか、俺達が見届けてやるよ。」
屈強な男達が、腕組みをして、ヤスオを取り囲んだ。ニヤニヤと笑い、明らかにヤスオを見下していた。ヤスオは男達に囲まれ内心、怖かったが、こんなところで暴力は振るわないだろうと思い、耐えることができた。
「バカが。」
これを見ていたヘーカーが目を伏せ、独り言を言う。
──あいつら、恥かくぞ。
受付にいたイーシアも手を止め、面白そうに見ていた。シンシアは淡々と仕事をこなしていたが、口元が笑っていた。
男達は周りの迷惑も考えずにヤスオを取り囲んだので、ものすごく邪魔だった。前を並んでいた冒険者達は、この迷惑集団が早く、いなくなって欲しく、順番を譲ってくれた。そうして、気づけば、列の先頭に立っていた。
魔石受付は、3席開かれており、すべての窓口に人が立っていた。そして、その中の一人が終わったのか、その場を去った。
「次の方、どうぞ。」
そう声をかけたのは、フランツだ。ヤスオはフランツの前に立つ。男達はヤスオの後ろを、腕組みをして囲むように立ち並ぶ。
「フランツ、昼は摂らないのかい?」
「これが、終わったら摂るよ。先日、お館様に会ったようだな。なぜか褒められたよ。それに関しては礼を言う。それで今日は?後ろの男達と組んでの嫌味か?」
「いや、本当に換金だ。全部出せばいいのか?」
「ん?複数の種類があるのなら、種類別に出してくれると助かる。ここに入れてくれ。」
フランツは手の平サイズの底の浅い丸い容器をヤスオの前に差し出した。
「わかった。まずはスライム。」
──カラン、カラン、カラン、カラン。
「おいおい、本当に4つあるぜ。拾いでもしたか?運のいい野郎だな。」
男は皮肉った言い方をして、周りに笑いを誘う。つられて笑う者が多くいた。だが、ヤスオの手は、まだ何かを握っていて、これで終わりではない事を察し、笑いのキレが悪くなっていた。
フランツは空の容器と、魔石の入った容器を入れ替え、スライムの魔石を回収した。
「次に小鬼。まずは1つ。」
アイルが仕留めた魔石だ。これだけは特別で別に保管していた。だが、魔石を持ち続けるのは危険なので、ここで換金することにした。
「ほう、ゴブリンも拾ったのか。おめでとう、これでランクアップだな。それでも、G級上位になっただけで、G級には変りねぇけど、な。アハハハハハハ。」
ヤスオが何も持っていないのを確認し、これで終わりと確信して冷やかした。男達は腹を抱えて笑い、周りも失笑していた。
フランツは、器を回収しようと手を伸ばそうとして、思いとどまる。
──今、まずは、って言ったか?
「まぁG級にしては、よく頑張ったよ。お小遣いができてよかったですねぇ。僕ちゃん。アァ、ハハハハ…はぁ?」
突然、ヤスオの手に小さな巾着袋が出てきた。袋の紐をほどき、口を開くと器に向けてひっくり返した。
──ジャラジャラジャラ…
「待て、待て、待てぇぇ。」
フランツが慌ててヤスオを止めた。瞬く間に器は満杯になり溢れそうになったからだ。
「ちょっと待て。これでは入りきらん。これを使う。」
大きい器を用意して、前の器の中身を移してヤスオの前に差し出す。引き続き袋をひっくり返し、魔石を入れ始める。
1階は人でごった返していた。ほとんどが冒険者で、昼食目的の者が大半を占めていた。昼食ついでに、魔石換金や野生動物の解体をする者が多くいる。証明書を持った者も多く、どの受付前にも、たくさんに人が並んでいた。
ヤスオはこれといってやることがないので、この機会に魔石を換金しようと硬貨の入った巾着袋からスライムなどの魔石を取り出し、列の最後尾に並んだ。
ヤスオの前に並んでいる冒険者が、初めて見る冒険者に声をかけた。
「お前、見ない顔だな。新人か?」
「はい、冒険者になってまだ1か月ちょっとしか経っていないです。」
「換金は初めてか?」
「そうですけど。」
「ここでは、証明書しか発行してくれない。金は受付で貰う。気をつけな。」
「それは、知っています。親切にありがとう。」
「まだ1か月なら、等級はFだろう。今回で昇級できそうか?」
「それが、まだGでして。」
「そうか、大抵の奴はFから始まるから…G?…。お前、G級ヤスオか。」
「そうだけど…?」
G級ヤスオ。この言葉を耳にし、周りの冒険者がヤスオに注目した。前を並んでいた者も振り返り、ヤスオを凝視した。そして、伝言ゲームのように隣へ、その隣へと伝えられ、瞬く間に組合中に広まった。
冒険者達は、街の外に出て仕事をこなしている。街に滞在する時間が少ないので、街の人達と違って、ヤスオの顔はもちろん、容姿さえ聞いたことはなく、その姿を見たこともなかった。そのため、耳に入るのは、名前と悪い噂ばかり。その影響で、その場にいた女性冒険者達は、置いていた武器を手にし、警戒態勢をとり、きつい視線を送った。
「そうか、お前があの有名な。まぁ、頑張りな。」
男は、少し委縮した表情を見せ、前を向き何事もなかったように振舞った。その様子に、何か嫌な予感がしてきた。
案の定、ヤスオの後ろに屈強な男達が集まってきていた。それは、女性冒険者の好感度を上げる工作で、悪名高い男から女性達を守る。そう言う名目の新人いじめを行いに来ていた。ただ、以前ヘーカーを手玉にとった話も聞いている。もちろん、そんなことできる訳ないと信じていないが、念のため慎重に行動し単独ではなく集団で、いじめようとした。
そのヘーカー達は、集団には混ざらず距離をおいたところで腕組みをし、壁に寄りかかりヤスオを眺めていた。
「よぉ、新人。ここは魔石の換金所だぜ。間違っちゃぁいねぇか?」
体格がよく、顔が傷だらけで、いかにも怖そうな奴が話しかけてきた。
「いや、間違っていない。ちゃんと魔物を狩ってきた。」
「スライムを1,2匹、狩ってきたのか?そのくらいで、ここに並ぶのは、迷惑だぜ。」
「4匹だ。」
その言葉に、男達が大声で笑う。周りの冒険者も、失笑する者がいて、中には手を叩いて笑う者もいた。男達の目的はヤスオを袋叩きにするものではなく、散々、恥をかかし逃げるように帰る姿をさらし、自分たちの株を上げるのが狙いだ。
「そりゃすげぇ。G級が4匹も倒したのか。それが、本当かどうか、俺達が見届けてやるよ。」
屈強な男達が、腕組みをして、ヤスオを取り囲んだ。ニヤニヤと笑い、明らかにヤスオを見下していた。ヤスオは男達に囲まれ内心、怖かったが、こんなところで暴力は振るわないだろうと思い、耐えることができた。
「バカが。」
これを見ていたヘーカーが目を伏せ、独り言を言う。
──あいつら、恥かくぞ。
受付にいたイーシアも手を止め、面白そうに見ていた。シンシアは淡々と仕事をこなしていたが、口元が笑っていた。
男達は周りの迷惑も考えずにヤスオを取り囲んだので、ものすごく邪魔だった。前を並んでいた冒険者達は、この迷惑集団が早く、いなくなって欲しく、順番を譲ってくれた。そうして、気づけば、列の先頭に立っていた。
魔石受付は、3席開かれており、すべての窓口に人が立っていた。そして、その中の一人が終わったのか、その場を去った。
「次の方、どうぞ。」
そう声をかけたのは、フランツだ。ヤスオはフランツの前に立つ。男達はヤスオの後ろを、腕組みをして囲むように立ち並ぶ。
「フランツ、昼は摂らないのかい?」
「これが、終わったら摂るよ。先日、お館様に会ったようだな。なぜか褒められたよ。それに関しては礼を言う。それで今日は?後ろの男達と組んでの嫌味か?」
「いや、本当に換金だ。全部出せばいいのか?」
「ん?複数の種類があるのなら、種類別に出してくれると助かる。ここに入れてくれ。」
フランツは手の平サイズの底の浅い丸い容器をヤスオの前に差し出した。
「わかった。まずはスライム。」
──カラン、カラン、カラン、カラン。
「おいおい、本当に4つあるぜ。拾いでもしたか?運のいい野郎だな。」
男は皮肉った言い方をして、周りに笑いを誘う。つられて笑う者が多くいた。だが、ヤスオの手は、まだ何かを握っていて、これで終わりではない事を察し、笑いのキレが悪くなっていた。
フランツは空の容器と、魔石の入った容器を入れ替え、スライムの魔石を回収した。
「次に小鬼。まずは1つ。」
アイルが仕留めた魔石だ。これだけは特別で別に保管していた。だが、魔石を持ち続けるのは危険なので、ここで換金することにした。
「ほう、ゴブリンも拾ったのか。おめでとう、これでランクアップだな。それでも、G級上位になっただけで、G級には変りねぇけど、な。アハハハハハハ。」
ヤスオが何も持っていないのを確認し、これで終わりと確信して冷やかした。男達は腹を抱えて笑い、周りも失笑していた。
フランツは、器を回収しようと手を伸ばそうとして、思いとどまる。
──今、まずは、って言ったか?
「まぁG級にしては、よく頑張ったよ。お小遣いができてよかったですねぇ。僕ちゃん。アァ、ハハハハ…はぁ?」
突然、ヤスオの手に小さな巾着袋が出てきた。袋の紐をほどき、口を開くと器に向けてひっくり返した。
──ジャラジャラジャラ…
「待て、待て、待てぇぇ。」
フランツが慌ててヤスオを止めた。瞬く間に器は満杯になり溢れそうになったからだ。
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