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93話 初めての馬車が楽しい
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マチルダの訪問で遅くなったが、冒険者組合に行くことにする。今から行けば、到着する頃は混雑の時間から外れ、ゆっくりと換金できる。
歩いていると、すぐ横を小さい荷車が追い越していく。路地でも通れるよう小さく作られ、人が座れるような構造になっていて人力車を馬が引いている感じだ。その馬力車の馬子が、ヤスオを追い越すと立ち止まり、声をかけてきた。
「兄ちゃん。北門に行くのだったら、これで送ってやるよ」
「いや、冒険者組合に行くから、いいよ」
「なんだ、方向は同じじゃないか。乗れよ。ついでだから料金はいらないよ」
「いいのか、ありがとう」
別に急いでいるわけではないので、無理に乗る必要はない。ただ、無料と聞くと乗らなければ損だと思い、誘いに乗ってしまった。街を歩いていると、時々見かけることがあり、気にはなっていた。だが、荷車と馬の背に荷物を載せて運んでいる姿しか見たことがなく、人が乗れるとは思っていなかった。これも、異世界の経験だと初めての馬車を楽しむことにする。
荷車にも馬にも荷物はなく、一体、何のついでなのだろうかと疑問に思ったが、とりあえず初めて乗る馬力車を楽しんだ。この世界にサスペンションがあるとは思えないので、最悪の乗り心地を想像したが、人の歩きよりも少し速いぐらいで進むからか、意外と乗り心地がよい。
──ガタン。
車輪が段差に乗り上げ、荷車が揺れる。だが、想像よりも揺れが少ない。せっかく体に力を入れていたのに、ムダに終わってしまった。しかも、乗り上げた車輪とヤスオとの距離が少し縮んだように見えた。
「ひょっとして、この荷車。サスペンションが付いているのか?」
(さ、さすぺん…何?)
一体、どんな構造なのか気になったが、確認は降りてからにして、今は普段とは少し違った景色を楽しむ事にした。景色を眺めていると、馬車が止まる。目の前に冒険者組合にがあった。
「じゃぁな、兄ちゃん」
「ああ、ありがとう。乗り心地が良くて驚いたよ」
馬車は早々に行ってしまったので、ゆっくり足回りを見る事ができなかった。ただ、ほとんど木造で金属が少なかったので、ヤスオの思うサスペンションはないように見えた。だが、かなりゴチャゴチャした足回りだったので、何かあるのだろうとは思った。
予定時間よりかなり早く着いてしまい、組合内は、まだ混んでいた。そこで、誰もいない、解体受付に足を運ぶ。
「おはようございます、親父さん。ご無沙汰です」
「よう、兄ちゃん。一週間、いや10日ぶりくらいか。解体か?」
「はい、お願いします」
「先日、魔石を大量に持ち込んで、皆を驚かしたみたいじゃねぇか。まさか解体も大量に持ち込む気じゃねぇだろうな?」
「大量かどうかは分かりませんが、全部で6匹ですけど」
「そりゃあ、一般的には大量という。補助魔法使いでなけりゃ、野生動物を6匹も運べる奴はいないからな。裏にまわってくれ」
「裏、ですか?」
「裏口だよ。兄ちゃん、何回か使っているだろう」
「ああ。了解しました」
以前、アガサに案内された裏口にまわる。すでに、扉は開けてあり、中でセセが待機していた。中に入ると、奥にテーブルが3つ置いてあり、そこに獲物を置くように指示された。言われた通りテーブルに、ウサギ1、雉2、猪2、鹿1匹を置いた。
「猪と雉1匹分の肉をください。あとは買取りで」
「兄ちゃん、これは時間が、かかるよ。明日、取りにきてくれないか」
「分かりました」
裏口を出ると再び正面口にまわり、組合内に入る。混雑が収まっている時間のはずだが、まだ冒険者達でごった返していた。各受付に並んでいる人は少なくなっているのだが、組合内の人口密度は高かった。ヤスオは気にせず、魔石受付の最後尾に並んだ。それに気がついた冒険者達がざわめき始めた。前回、魔石の高額換金をしたことは、すでに知れ渡っていて、今回はどうなのかと冒険者達が予想していた。ただ前回から、まだ一週間も経ってないので、今回は多くないだろうというのが大方の予想だった。
「次の方どうぞ」
すでにピークが過ぎているので魔石受付は1席になっていた。その席を担当したのがフランツだった。ヤスオはフランツの前に立つ。
「また、お前か?この前は騎士団長を追い詰めたそうだな。さらに衛兵団長に貸しまで作ったとか」
フランツの情報は数日遅れている。面会を断り、マチルダを追い詰め、子供達を救い出しチャーフィーに借りを作ったことを言っているようだ。
「奇遇と言うか、もはや因縁なのか?俺の換金は必ずフランツなのだな」
「知っての通り、俺は間者だからな。受付以外の仕事は任せてもらえない。それで用件は?食料?魔石?両方か?」
「魔石だけど。先に謝っておく。手数かけてごめん」
「また嫌がらせか。分かったから、さっさと出せ。まずはスライムか?」
「いや、小鬼だ。一番大きい入れ物で頼む」
フランツは大きく底の浅い器を差し出した。その頃には、奥で事務をしていた受付嬢達が組合内の異常な雰囲気に気がつき様子を見ていた。そして、ヤスオが魔石受付を行っているのを知ると、シンシアとイーシアが、じゃんけんを始めた。
ヤスオは巾着袋を出すと、ひっくり返し、器に魔石を入れる。
──ジャラ、ジャラ、ジャラ、……。
一つ目、二つ目、三つ目の巾着袋をひっくり返し、器に入れた。器の中心に大きな山ができたので、手で整地した。平らにすると溢れるので、山なりになるようにした。
──エェェェェェェェ。
「お、お前、どういうことだ。どうみても前よりも多いじゃぁねぇか」
「ああ、でも、残りあと一個だから」
ヤスオの魔石受付の結果を知りたくて、多くの冒険者が出発を遅らせた。期待せず、見ていたが、予想に反しての魔石の多さに驚いていた。前回を知る者は、倍以上の数に前回を上回る金額を予想した。
その頃、事務室ではじゃんけん勝負に決着がついたようで、イーシアが、悔しそうにジダンダを踏んでいた。
すぐにフランツに応援が来ると、山盛りになった器を奥の事務室に運んだ。
「残り1個ならこれで、いいよな」
「ああ、これでいい」
フランツは、小さい器を差し出した。ヤスオは、その手の平サイズの器に、手の平サイズの魔石を置いた。
歩いていると、すぐ横を小さい荷車が追い越していく。路地でも通れるよう小さく作られ、人が座れるような構造になっていて人力車を馬が引いている感じだ。その馬力車の馬子が、ヤスオを追い越すと立ち止まり、声をかけてきた。
「兄ちゃん。北門に行くのだったら、これで送ってやるよ」
「いや、冒険者組合に行くから、いいよ」
「なんだ、方向は同じじゃないか。乗れよ。ついでだから料金はいらないよ」
「いいのか、ありがとう」
別に急いでいるわけではないので、無理に乗る必要はない。ただ、無料と聞くと乗らなければ損だと思い、誘いに乗ってしまった。街を歩いていると、時々見かけることがあり、気にはなっていた。だが、荷車と馬の背に荷物を載せて運んでいる姿しか見たことがなく、人が乗れるとは思っていなかった。これも、異世界の経験だと初めての馬車を楽しむことにする。
荷車にも馬にも荷物はなく、一体、何のついでなのだろうかと疑問に思ったが、とりあえず初めて乗る馬力車を楽しんだ。この世界にサスペンションがあるとは思えないので、最悪の乗り心地を想像したが、人の歩きよりも少し速いぐらいで進むからか、意外と乗り心地がよい。
──ガタン。
車輪が段差に乗り上げ、荷車が揺れる。だが、想像よりも揺れが少ない。せっかく体に力を入れていたのに、ムダに終わってしまった。しかも、乗り上げた車輪とヤスオとの距離が少し縮んだように見えた。
「ひょっとして、この荷車。サスペンションが付いているのか?」
(さ、さすぺん…何?)
一体、どんな構造なのか気になったが、確認は降りてからにして、今は普段とは少し違った景色を楽しむ事にした。景色を眺めていると、馬車が止まる。目の前に冒険者組合にがあった。
「じゃぁな、兄ちゃん」
「ああ、ありがとう。乗り心地が良くて驚いたよ」
馬車は早々に行ってしまったので、ゆっくり足回りを見る事ができなかった。ただ、ほとんど木造で金属が少なかったので、ヤスオの思うサスペンションはないように見えた。だが、かなりゴチャゴチャした足回りだったので、何かあるのだろうとは思った。
予定時間よりかなり早く着いてしまい、組合内は、まだ混んでいた。そこで、誰もいない、解体受付に足を運ぶ。
「おはようございます、親父さん。ご無沙汰です」
「よう、兄ちゃん。一週間、いや10日ぶりくらいか。解体か?」
「はい、お願いします」
「先日、魔石を大量に持ち込んで、皆を驚かしたみたいじゃねぇか。まさか解体も大量に持ち込む気じゃねぇだろうな?」
「大量かどうかは分かりませんが、全部で6匹ですけど」
「そりゃあ、一般的には大量という。補助魔法使いでなけりゃ、野生動物を6匹も運べる奴はいないからな。裏にまわってくれ」
「裏、ですか?」
「裏口だよ。兄ちゃん、何回か使っているだろう」
「ああ。了解しました」
以前、アガサに案内された裏口にまわる。すでに、扉は開けてあり、中でセセが待機していた。中に入ると、奥にテーブルが3つ置いてあり、そこに獲物を置くように指示された。言われた通りテーブルに、ウサギ1、雉2、猪2、鹿1匹を置いた。
「猪と雉1匹分の肉をください。あとは買取りで」
「兄ちゃん、これは時間が、かかるよ。明日、取りにきてくれないか」
「分かりました」
裏口を出ると再び正面口にまわり、組合内に入る。混雑が収まっている時間のはずだが、まだ冒険者達でごった返していた。各受付に並んでいる人は少なくなっているのだが、組合内の人口密度は高かった。ヤスオは気にせず、魔石受付の最後尾に並んだ。それに気がついた冒険者達がざわめき始めた。前回、魔石の高額換金をしたことは、すでに知れ渡っていて、今回はどうなのかと冒険者達が予想していた。ただ前回から、まだ一週間も経ってないので、今回は多くないだろうというのが大方の予想だった。
「次の方どうぞ」
すでにピークが過ぎているので魔石受付は1席になっていた。その席を担当したのがフランツだった。ヤスオはフランツの前に立つ。
「また、お前か?この前は騎士団長を追い詰めたそうだな。さらに衛兵団長に貸しまで作ったとか」
フランツの情報は数日遅れている。面会を断り、マチルダを追い詰め、子供達を救い出しチャーフィーに借りを作ったことを言っているようだ。
「奇遇と言うか、もはや因縁なのか?俺の換金は必ずフランツなのだな」
「知っての通り、俺は間者だからな。受付以外の仕事は任せてもらえない。それで用件は?食料?魔石?両方か?」
「魔石だけど。先に謝っておく。手数かけてごめん」
「また嫌がらせか。分かったから、さっさと出せ。まずはスライムか?」
「いや、小鬼だ。一番大きい入れ物で頼む」
フランツは大きく底の浅い器を差し出した。その頃には、奥で事務をしていた受付嬢達が組合内の異常な雰囲気に気がつき様子を見ていた。そして、ヤスオが魔石受付を行っているのを知ると、シンシアとイーシアが、じゃんけんを始めた。
ヤスオは巾着袋を出すと、ひっくり返し、器に魔石を入れる。
──ジャラ、ジャラ、ジャラ、……。
一つ目、二つ目、三つ目の巾着袋をひっくり返し、器に入れた。器の中心に大きな山ができたので、手で整地した。平らにすると溢れるので、山なりになるようにした。
──エェェェェェェェ。
「お、お前、どういうことだ。どうみても前よりも多いじゃぁねぇか」
「ああ、でも、残りあと一個だから」
ヤスオの魔石受付の結果を知りたくて、多くの冒険者が出発を遅らせた。期待せず、見ていたが、予想に反しての魔石の多さに驚いていた。前回を知る者は、倍以上の数に前回を上回る金額を予想した。
その頃、事務室ではじゃんけん勝負に決着がついたようで、イーシアが、悔しそうにジダンダを踏んでいた。
すぐにフランツに応援が来ると、山盛りになった器を奥の事務室に運んだ。
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