異世界での異生活

なにがし

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108.取調べ

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「良かったぁぁ。あれから、5日以上経っているから間に合わないと思っていました。チャーフィーは、天才ですぅぅ。心から尊敬しますぅぅ。」

「ヤスオ殿。そのぉ、こういう事は順を追ってして頂きたいのだが。いや、もちろん、いやではありませんし、むしろ嬉しいのですが、ああ、わたしは何を言っているのだろう。でも、離さないでください。」

 チャーフィーは、そう呟いた。そう、呟いたので泣きわめくヤスオには全く聞こえてなかった。

「ヤフフォォォ。ほうしゅうのへんへんへ、はひふぉひへひふ。」

 後方からマチルダが叫んでいるが、口の中にせんべいが残っていて、何を言っているのか分からない。マチルダは、2人に追いつくとその場で、足踏みをしながら口をモグモグさせ一気に飲み込む。胸を数回叩いたら、大声を出した。

「ヤスオォォォォォ。公衆の面前で、何をしているのだ?離れろぉぉぉ。」

 マチルダの鬼のような形相に、ヤスオは我に返った。額を地面につけチャーフィーに詫び、下心がない事を必死に弁明した。チャーフィーはヤスオの肩に手を置き、優しい言葉をかけた。そして舌打ちを乱発しながら、マチルダを睨みつけた。マチルダとチャーフィーの間に火花が走る。そんな女子2人を無視して、マークはヤスオに問いかける。

「どうやらレンは無事のようだな。これからどうする。」
「いよいよ、チャーフィーの依頼に応じて、ストーを尋問します。」

 チャーフィーはそれを聞いて喜んだ。是非にと、ヤスオを城の衛兵団詰所へと案内する。城に到着すると、すぐに尋問の準備が進められた。だが、その前にもう少し話を詰めたいとチャーフィーに要望する。チャーフィーは別室を用意し、ヤスオを案内した。別室では、侍女が待機しておりチャーフィーが入室すると、頭を下げた。

「ちょっと、そなた達の用は済んだのでしょう。さっさと仕事に戻りなさい。」
「ここまで、話を聞いたのだ。気になるではないか。最後まで付き合う。」
「その通りだ。このままでは仕事が手につかん。わしも付き合うぞ。」
「はぁぁぁぁ。分かった。ソミュア、皆さんにお茶と菓子をお願い。菓子は、大食いマチルダがいるから、1つにして皆でつまむ形でいいから。」
「かしこまりました。」

 本来、城ではお茶菓子は1人に1皿で出される。マチルダ相手だと皿の中身は一瞬でなくなる。そうなれば、何度も皿を下げては出す、を繰り返さないといけない。そこで、テーブルの中央にお菓子を置き、欲しいものを取る。そのやり方なら中央のお菓子を補充するだけで済むので、侍女の負担が軽くなる配慮をしていた。
 こうして4人は城の、とある部屋で話の続きをすることになる。

「はて?あの侍女。わしはどこかで見たような気がする。」
衛兵団うちの副団長の娘だ。侍女兼衛兵見習いをしている。」
「おお、ルノー殿の娘か。思い出したわ。」
「失礼します。」

 そのルノー令嬢が台車を押して部屋に入ってきた。テーブルの中央に茶菓子を並べ、各自に紅茶を差し出した。

「衛士長様、お久しぶりです。どうぞ。」
「うむ。世話になる。」

 娘は、耳元でささやき、その場の静けさを乱さないような拝領する。

「騎士団長様。熱いので、気をつけて下さい。」
「いい香りだ。ご馳走になる。」
「団長。どうぞ。」
「うむ。ご苦労。」

 ルノー令嬢が一人一人に小声で挨拶をしながら、紅茶を配る。ヤスオの順番になるとその態度が豹変する。

「平民、ありがたく飲め。」

──おいおい、ラーメン屋のおばちゃんかぁ?

 その指摘は間違いで、言い換えれば逆おばちゃん。親指以外の4本の指を紅茶に沈めヤスオに差し出した。それは、とても汚い物で、指が入れられるくらい冷めているのだから、本来なら入れ直しを要求するか、飲まずに放置するかの2択である。しかし、その若い娘の指を出汁にした飲み物は、ヤスオにとって褒美でしかない。ヤスオは中身すべてを口の中に含むと、うがいをするかのように、しっかり味わって、飲み込む。

──ウゲッ

 まさか飲み干すとは思わず、その気持ち悪い飲み方に背筋が凍る。さらに緩みきった表情でおかわりを要求され、全身に鳥肌が立つ。

「だんちょぉぉ。気持ち悪いです。」
「いまのは、そなたが悪い。わたしの友人に無礼であろう。」
「も、申し訳ありません。」

 チャーフィーに一括されソミュアは落ち込み、おとなしく紅茶を入れ直すと部屋の外へ出て行った。

「ヤスオ殿、侍女が失礼した。」
「失礼?ご褒美を頂いただけですが。」
「ガハハハ。あの嫌がらせに、そのような対処があろうとは。いや、見事、感服した。」

 感服と言えば、ヤスオはチャーフィーの優秀さに感服していた。そして、護衛を付けてないと決めつけていたことを申し訳なく思う。この隙が無く知的な女性に、さらに聞いてみたい事が湧いてくる。

「チャーフィー。ロスニコス商会のキャロルさんの身辺調査をしていますよね?些細な事でもいいので教えてください。」
「察したか。だが、誘拐事件にかかわる事の証拠はない。ハッキリしているのは、とんでもない不貞な女で、亭主に隠れて、浮気を繰り返している事だけだ。」
「その浮気相手は誰なのですか?」
「エローラ通りに住む、クランジャンと言う男だ。その男は、相当な遊び人で、他にも多くの女がいるようだ。」
「キャロルさんの出自はどうですか?」
「……分かった。知る事すべて話す。」

 キャロルの父は、屋台通りで食堂を営んでいた商人で、名はパーソン、妻はオーデフラウ。3人姉弟で、長女のキャロル、次女がグレンダ、長男でマルシャンだと言う。

「ちょっと待て、コメット団長。その長男とレンの父親が同じ名前ではないか?」
「それに、エンベデ商会の妻と次女も同じ名前じゃない。」
「ああ、その通りだ。今回の誘拐事件はこの姉弟の3人の子供がさらわれている。」

 さらに、次女グレンダも浮気を繰り返し、長男の妻のキャシーも浮気を繰り返していて、その相手がすべて同じ人物で、クランジャンだと言った。

「おい、チャーフィー。どう考えても、クランジャンが怪しいでしょう?」
「まったくだ、コメット団長。なぜ捕らえて尋問しない?」
「ダニエルとニーニョを忘れてないか?この2人は3姉弟には繋がらない。まだ、泳がせて確実な証拠をつかむ必要がある。」
「だが、そこまで分かっていて、なぜ今まで隠していた?」
「俺に先入観を持って、尋問して欲しくなかったのですよね?」
「…すべてお見通しか。その通りだよ。」
「その期待に応えられよう、頑張りますよ。」

 いよいよ尋問が始まる。尋問室に入ると、椅子に座るストーがいる。両脇には衛兵が立っており、目の前にはテーブルが置かれ椅子が収納されていた。ヤスオは椅子を引き出すと腰を据える。3人の団長は、部屋の端に並んで立ち状況を見ている。衛兵2人は、突然の団長3人に眼を泳がせ緊張していた。

「ストーさん。子供達が馬車に乗せられた時、あなたはその場にいましたか?」
「……。」
「いませんでしたよね。そして、その馬車にマリナが乗っていたことも知らなかった。そうですよね?」
「……。」
「あなたは、馬車にマリナが乗せられていたのを、後から知って驚いたのではありませんか?」
「……。」

 ヤスオは、ストー睨み顔を近づけると、ストーはヤスオから目線をそらし、顔を伏せた。その態度を見て確信した。

「答えてくれませんか。では、話を変えます。あなたは、馬車が行方不明と聞いているようですが、実はミノタウロスに襲われ馬と仲間2人が喰われたのを知っていますか?」
「……。」

 返事こそ無かったが、ストーは目を見開いて驚いた表情をしていた。

「子供達は、酒樽に入れて運ばれたそうです。馬車の残骸から空の酒樽が5つ見つかったそうですよ。」
「う、うそだぁぁ。」

 ストーは動揺し、ヤスオを怒鳴りつけ立ち上がろうとする。

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