異世界での異生活

なにがし

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117.出発

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「2人共、よさぬか。そろそろ失礼しよう。これ以上はお邪魔のようだ。」

「そうだな、ヤスオまた会おう。」
「ヤスオ殿、世話になった。」

 こうして3人はアリアドネ邸を後にし、城へと出勤していく。
 あの時、ヤスオを殺そうとした男が、そこまで気の毒な奴だとは思わなかった。マルシャンがいい方向に向かうよう、3人には期待する。

 それからの後、レスボン史上最悪の事件として、街の人が見守る中、クランジャンとキャシーは極刑に処された。股間男は、エイシア王国の首都エヌコートに送られ、5年間の強制労働に服する。そして、マルシャンだが、3団長の嘆願もあり、情状酌量の余地ありと判断され、3か月の禁固刑後、釈放された。

 今回で不貞が亭主に知られた3姉弟の長女キャロルは、一応はマーチャントに許された。ただし、マリナの母として専念し商会の金銭は勿論、経営や人事については一切、口出しできなくなった。長女同様、不貞が亭主に知られた次女グレンダは、コンメルチャンテに必死に謝罪した。だが、病弱な娘を放置し浮気した事が、どうしても許せず三行半みくだりはんを下した。グレンダは実家に帰り父パーソンを助け、亡き母に変わりダニエルとニーニォの母としてやり直すことになる。そんなグレンダに、長女キャロルは自由が利かなくなった家の金銭を何とかやり繰りし、わずかだが仕送りをした。そればかりは、マーチャントも見逃していた。

 キャシーとクランジャンの子レンは孤児院に預けられることになった。レンのショックは大きく毎日、口を閉ざして過ごし、決して子供達と馴染むことはなかった。3か月過ごした後、レンは孤児院を去ることになる。なんとマルシャンが引取りに来たのだ。

「血の繋がりが無かろうとも、この子は俺の子です。」

 父親との再会に泣きながら喜ぶレン。この時、セメレ、マイヤ、トイ爺は初めて、レンの笑顔を見たという。そんなレンを子供達が祝い、レンは照れくさそうに感謝した。


 時は戻り、3人の長が帰った後のテーブルの上は嵐が過ぎ去ったようだった。結局多めに作った、朝食は消滅し、ついでにせんべいまで消え去った。ヤスオは出発を1日遅らせ、今日は買い出しと味噌汁など食料の作り置きに専念する。
 まずは買い出しに出かける。アリアドネ邸は大通りから外れた路地にあり、その路地は緩やかな坂になっていてカミサカ通りと呼ばれる。そのカミサカ通りを北に進むと別の路地と接続している。その路地、カミソク通りを東に進むと、冒険者組合がある北の大通りに出る。大通りを横切り、さらに路地に入る。その路地、アルカニス通りを東に進むと、雑貨屋に着く。ちなみに、雑貨屋と呼んでいるがベニバリ商会と言う名がある。この雑貨屋の前にアルカニス通りと屋台通りを結ぶ、丁字路になった交差点がある。そこを南に向かって屋台通りがある。屋台通りも通称で、正式にはオーランド通りと言う。

 屋台通りと呼ばれるだけあってたくさんの屋台が並んでいる。ただこの屋台は、行商人が、商品を持ってきて店先で広げて販売している屋台とは違う。この通りは商店が並ぶ商店街で、屋台は各お店が店頭に出している。どの店も店内は所狭しと、商品が並べられておりお客様が入る空間がない。そこで店先に、屋台を出し商品の見本を並べ、店頭販売をしている。ただ、すべての商店がそうしている訳ではないので、中には屋台を出していない店もある。
これまでのヤスオは、どの店にも歓迎されていなかったので、串焼き屋と総菜屋とパン屋しか行った事がなく、他は何を売っているのかよく知らない。アリアドネも買い物はアントの夢にお願いすることが多く、屋台通りを利用したことがなかった。でも今なら、そんなに邪険にされないだろう。今日は時間もあるので、全部の店をゆっくり見て回る事にする。

(きゃぁぁぁぁ。うそ、さいこー。いいじゃないこの通り。わたし、どうして来てなかったのだろう。)

 以前、ヤスオが観察しリンゴを買った八百屋から始まり、店舗ごとゆっくりと見る。するといきなり、八百屋の隣が酒屋だと分かった。この店は屋台を出していなかったので見向きもしていなかった。さらに、豆腐、肉、お菓子、米などの店があり、何でも補充できた。ヤスオは屋台通りを何度も往復して、何度も店を見てまわった。するとある事に気が付く。今まで、雑貨屋しか気にしてなかったが、その隣も何か売っている。ヤスオはアルカニス通りの店も観察した。その中の1軒に革製品専門店があった。ヤスオはその店に入ると、いきなり大きなカバンが目に付く。一目でそのカバンが気に入り、すぐに購入した。

(ヤスオには収納魔法があるから、こんな大きくて高価なカバンなんて、いらないじゃない。どうして買うのよ。)
「へへぇ、これは、俺が使う物じゃありません。」
(ああ、なるほど、そういうこと。仕方ないわね。)

──えっ?分かっちゃったの。

 アリアドネには、ヤスオが簡単のようだ。



 時は戻り、城に出勤した3人は領主の元へ向かう。衛士長は、領主の警護に。衛兵団長は、事件の報告に。騎士団長は、報告会に立ち会うために。

「…以上が今回の人さらい事件の、すべてでございます。」
「そうか、またヤスオ殿の尽力あっての解決じゃなぁ。褒賞を検討せねばなるまい。ところでコメット団長。」
「はっ。」
「これまで、散々ヤスオ殿には世話になっておるようだが、それらの清算は済ませておるのだろうな?」
「あっ!申し訳ありません。失念しておりました。」
「まぁ色々あって忙しかったからのぉ。早めに清算、致せよ。」
「承知いたしました。」

──やったぁぁぁ。これでヤスオ殿に会える口実ができた。

 チャーフィーは内心喜んだ。さて、どうやって清算しようかと考え、少しでも長くなるよう計画を練った。そんなチャーフィーを横から見ていたマチルダは、チャーフィーの計画を察知し、それにどう便乗しようかと画策した。


 翌日、陽が昇り始めた頃アリアドネ邸の扉が開く。周りはまだ寝ている時間帯なので、物音を立てぬよう慎重に歩く。静かに扉を閉め、鍵をかけ、いざ南門へ。目的地はレスボンの北に位置する街エヌコートの南の森。本来、北門から出るのが近いのだがサーチェに会いに行くので、南門から出ることにする。

「やぁ、ヤスオさん。西の森に行くのか?」

 門番がヤスオに向かって、気さくに声をかける。ヤスオが冒険者証を出そうとすると、手の平を左右に振って必要ないと伝える。まだ、こちらに来て2か月も経っていないのだが、すでに顔パスの地位を得ていた。だが、ヤスオはニヤニヤしながら冒険者証を出して見せた。

「えぇぇぇ。あんたもうC級に上がったのかい。こないだDにあがったばかりだろう。」

 門番は赤い冒険者証に驚いていた。ヤスオはこの反応が見たくて、わざわざ冒険者証を見せていた。門番の驚いた顔に満足したので門を抜けて、西の森へ向かう。

(さてヤスオ、地竜でも蹴散らしに行きますか。)
「はい。アリ姉様。」
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