生け贄少女が命を落とす、しかし転生した魔女が体を使い、第二の人生をわっちTueeeするそうです。

リゥル

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第一章 目覚め

第3話 思い出

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 生け贄に捧げられたダンジョンから脱出して、半日ほどが過ぎてるじゃろう。
 わっちらは、ヒポグリフの翼を休めるため、人知れず深い深い森の中で身を潜めておった。

「ふむ、余程疲れておったのじゃな」

 わっちがヒポと名付けたヒポグリフの子供が、地面に横になり体を丸め寝ておる。
 
「ぐっすり寝おって……。わっちも少し休むかの」

 わっちは横たわるヒポに背中を預けるように座った。

 時間が出来ると駄目じゃな。
 手で顔を覆い、葉の隙間から空を見上げた。

こやつネココもわっちと同じように自らを犠牲にしよったな。何の因果かの……。余計なことを思い出してしまうわ」

 忘れも出来ぬ、終戦記念のパーティーが行われた日。そして、わっちが前世で命を落とした日を──。



「やぁネココ。こんところに居たのか、一人で何をしてるんだ?」

「ん? あぁ、ルーカスではないか」

 思い出すだけでも恥ずかしいのじゃが、当時のわっちは愛する男が訪ねてきて、自然と綻ぶ顔を必死に押さえておった。

「実は少し挨拶回りをじゃな。所でどうしたのじゃ、そんな浮かない顔で」

「あ、あぁ……。少しね」

 今改めて思い返してみれば、ルーカスの様子はこの時にはおかしかった。

「なんじゃ、煮え切らないの? 相談事なら、気軽に話すが良い。わっちはこう見えても、ぬしよりお姉さんじゃからな?」

 ルーカスは、ただただつらそうな表情のまま、口を開こうとはしなかった。
 そして次に笑顔を見せると、彼はわっちに向かい手を差し出してきたのじゃ。

「そんなことより……。ほら、良かったら飲まないか?」

 彼が握っていたのは、グラスに入った赤ワインじゃった。

「うむ、気が利くの。どれ?」

 それを受け取り、グラスに入った酒を飲もうと、口に近づけた時だ──。

「──っ!?」

 わっちは咄嗟に、飲むのを止めた。
 グラスに口をつけるには、少しばかり勇気が必要じゃったのだ……。
 
 ルーカスと目が合うと、その瞳はまるで怯えた小動物の様だったのを、今でも鮮明に覚えておる。

 わっちは全てを悟った。

 目の前の愛しき男は、何かしらの理由でわっちを毒殺しようとしている……。考えられる理由は──。

「なぁルーカスよ。そう言えば家族とはもう、顔を会わせたのかの?」

「い、いや……。まだなんだ……」

 ルーカスは嘘がつけぬ男じゃ、この様子を見たら分かる。
 彼の愛すべき家族は、何らかの手段で人質に取られていたのじゃろう。
 特別な力を持ち、国の驚異になりえるであろう、わっちを殺すため……。

「そうか、早いこと顔を合わせる事が出来るといいの……」
 
 わっちはその言葉を残し、手に握るワイングラスの中身を、一思いに飲み干した──。

「あっ……」

 わっちの愛する、目の前の男の口からは震えた声が飛び出す。
 それと同時に、喉が焼け、体には激痛が走った。

「ネココ!!」

 その場に崩れたわっちは、ルーカスに抱き抱えられる。
 わっちの最後は、痛いほど力強く抱く、小刻みに震えていた愛するものの胸のなかじゃった──。



「──つまらぬことを、思い出してしまったわ……。まぁ、目覚め方も悪かったしの。思い出さない方が無理と言う話じゃが」

 心残りがあるとしたら、使命をほったらかした事。
 それとなにより、ルーカスの奴に"気にするな"っと言ってやれなかった事かの。

 ぐぐーっと延びをしていると突然、背もたれ変りにしておったヒポが顔を舐めてきた。
 その後、こちらをまじまじと見つめ、丸い瞳にわっちを写し出す。

「ヒポ起きておったか、もしかしてわっちを心配しておるのかの?」

 わっちは驚いた。
 こやつの父親を殺したのはわっちだ。
 にも関わらず、襲う所か慰めてきおったのだ。

「なんじゃおぬし、中々にうい奴じゃの? じゃが、わっちの心配など十年早いわ──ほれ、ほれ!」

 ヒポの首や腹を撫で回すと、くすぐったいのか気持ち良いのか目を細め身をよじる。
 少しの間わっち達は戯れた。

「ありがとう、ヒポ。本当なら恨むべき相手じゃろうに……。おぬし、中々に気の良い奴じゃな?」

 こやつのマナは、普通の魔物とは違い心地が良い。
 魔物の血が薄まってるせいか、気性も穏やかじゃ。
 こやつをわっちの元に置くと言う選択、間違いではなかったの。

 ヒポは急に起き上がると、体を預けておったわっちは転がった。
 見上げると、何かを言いたそうにこちらを見ておる。

「何? 元気の無いわっちを仕留めても、嬉しくないじゃと?」 

 本気なのか冗談なのかまでは分からぬが。
 わっちにはこやつが、無理してツンツンしておるように映って見えた。
 
「くっく、まったくぬかしおる」

 それが無性に愛らしく、わっちは口を抑え笑い声を抑えた。

 こんな時間も悪くはない。しかしずっとこうしている訳にも行かぬな。

「んー。さて、今からどうしたものかの?」

 わっちは現状を整理することにした。

 食料はしばらくは持ちそうじゃが、金も住む家もない、まずはそれの確保が重要じゃな。
 しかし、代々魔女の間で引き継がれる役目がある、あまり悠長にはしてられぬか。

「悩むまでもないかの、わっちに残されたのは役目のみ……。それを成す為にも、五つの剣の回収はせねば」

 先程まで見ていた夢。ルーカスを含めた、わっちの右腕達に与えた魔術より強力な魔法の力。
 分け与えた力を回収出来ずにわっちは命を落としたそれゆえ、生活基盤を築きながら探し出す必要がある。
 
 役目をこなすには剣が必要不可欠。
 それにあれは、本来人の身には余る代物じゃからな。
 わっちの死後、あやつらにどのような悪影響を及ぼしておったか……。これは、調べねばならぬな。

「むむむ、しかしどうしたら良いかの。世界のこの変わりよう、経過した時間は四十や、五十年ではなさそうじゃ。それに剣は五本もある、探しだすには難儀しそうじゃが」

 わっちが生きてた頃は、戦争で大地は焼け焦げていた。
 木々がここまで緑豊かに育つには、相応の時間がかかる。長い月日が立ったのは間違いないじゃろう。 

 手っ取り早く情報を集めるのであれば、やはり……。

 わっちは深い溜め息をついた。

「気が進まぬが、やはり王都に行くかの……。あそこなら当時の剣達の行く末、分かるやもしれん」

 ヒポに乗り、わっちは西に向かい飛ぶよう指示を出す。
 七つの剣、その残り五つを探しだす為に──。


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