ちびっ子には見せられないよ!魔法少女と、その使い魔。

リゥル

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第一章 魔法少女の使い魔

第3話 シロルと通学

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「おい、いったい何処に行ってたんだよ。昨日は大変だったんだぞ!」
 
 俺はまるで、溜まったストレスを吐き出すかの様に文句を口にした。
 しかしなにやら、シロルの様子がおかしい。
 なんていえばいいか、真っすぐ立たず、千鳥足って感じだ。

「どうした、体調でも悪いのか? あれ、何か変わった匂いがする気が……」

 この匂いを嗅ぐと、俺までも視界が揺らぐ。
 なんか気持ちいいような、骨抜きにされたような。

「どうにゃら兄さん、ひくっ。猫の姿になって感覚が鋭くなったみたいだにゃ」
「お、おい。本当に大丈夫か、いったい何があったんだよ?」

 ベランダと部屋を繋ぐ窓のレールから飛び降り、つまづき倒れてしまうシロル。
 そしてふらふらと二本足で立ち上がると、腰に手をあてた。

「大丈夫にゃ~。お姉チャンが沢山居る所で、マタタビキメて来ただけにゃから」
「マタタビって、人が大変な時に何やってんだよ! 心配して損したぞ」

 まさか本当に酔っぱらっている様な状態とは……。
 でも今は、そんな事より確認しないといけない事が一つ。

「まぁ何も良くはないが、今はその話を置いておこう。それよりシロル、お前知ってただろ? 相澤のストーキング癖を」
「ひくっ。何が不満にゃ、純粋に、一途に兄さんを思う乙女心。少しぐらい変わっている愛情表現には目を瞑るにゃ」
「少しどころじゃないし、相澤のは純粋とは言わない! 不純か、病的か、もしくは狂気と呼ばれるものだ」

 この酔っぱらい、他人事だと思って楽しんでるだろ。
 他人の不幸は蜜の味と言わんばかりに、不敵な笑みをうかべ、尻尾をピーンと立ていた。

「にゃら、ハッキリ言ってやるかにゃ? 人の姿で自分を好いてる後輩に、俺にまとわりつくにゃって」
「それは……。出来ないけど」

 正直、相澤の行動や言動は恐ろしくは感じている。
 でも現実の俺に直接被害が出ていない以上、文句の言いようもない……。 
 なにより異性に好かれている事は悪い気がしないし、好いてくれてる子をなるべくなら傷つけたくはない。

「にゃらその話はここまでにゃ。あの子の願いも一歩近づいて、めでたしめでたしにゃ」
「相澤の……願い?」

 シロルは両手で口を塞いだ。
 どうやら話してはいけない事らしい。
 俺は俺で、これ以上は恐ろしくて聞き返すことは出来ないが。

「それに俺っちの気持ちも考えて欲しいにゃ。毎晩毎晩、好きな男のノロケ話を、何時間も聞かされる俺っちの気持ちを。休みの時ぐらい、マタタビぐらいにゃいとやってられにゃいにゃ……。ひくっ」

 先程落ちた窓枠に飛び乗り、シロルは文句を垂れながら外へと出て行く。

「あ、ちょっと何処へ行くんだよ。話はまだ──」
「何処って学校にゃ。兄さん無断欠席する気かにゃ?」

 そう言うと、シロルは屋根づたいに歩き出した。

「待ってくれ、俺も行く!」

 そして俺もよっらぱいの後に続き、相澤の部屋から外へと飛び出した。

 ◇

 学校へと向かう道中、俺はシロルについていきながらも色々と話を聞いている。
 その中でも特に興味がそそられた話に、魔法少女とゾーオの正体についての話があった。

 負の感情。知らぬ間に人から溢れ出す、ストレスなどの集合体、それが人類の宿敵であるゾーオの正体。
 魔法少女とはそれに対抗すべく、相反する正の感情を多く有するもの。
 特にゾーオが苦手とする恋する想いを、魔法に変え戦う存在を指すらしい。

 正の感情? あれがか? っとも思わなくも無かったが、話がすすまないので黙っておいた。

「雰囲気だけはなんとなく分かったよ、雰囲気だけは。それはそれとしてずっと疑問だったんだけど、なんでシロルが使い魔を続けないんだよ」
「俺っちもやる事があるにゃよ。いつまでも澪ばっかりに負担はかけられにゃいにゃ」
「シロル……」

 酔っ払いが何を言って……。
 いい話風に言ってるが、言葉と行動が伴ってないってツッコミを入れるべきなのか?

 ただ、横から覗いた顔は真剣そのものだ。
 まぁきっと、俺よりシロルの方が相沢の事をよく知っている。
 口出しするほうが、野暮と言うものか。

「それにしても、少し想像と違ったな。魔法っててっきり、魔法少女が杖とか使って出すイメージだったけど」
「何も違ってないにゃ、澪が特別なだけにゃから」
「特別?」
「そうにゃ、特別にゃ……。思い出すだけでも酔いが醒めるにゃ」

 シロルが足を止め、後ろを歩く俺へと振り返る。
 その表情は先程とは違い、とても険しく、どこか怯えても見えた。

「前に飛ばすはずの魔法が、真横に飛んでくる。そんな子に直接魔法を使わせるとか、自殺行為もいいところにゃ」
「アレが……真横に?」

 そういえば相澤のやつ、極度の運動音痴だったな。
 マネージャーなのに、部活でも歩く度にしょっちゅう転んで……。

「それに杖ってのは、魔法の増幅装置なのにゃ。あの娘にそんなのを持たせたら、町が一晩で焦土とかすにゃよ」
「それはまた……。笑えない話だな」

 そう、笑えない。
 実際に魔法を見たから分かるが、現代兵器でもあの威力の兵器などそう多くはないだろう。
 さらにそれ以上の大規模の破壊魔法なんて……。考えただけでも頭が痛くなりそうだ。

 そんなこんなで頭を悩ませている内に、俺達は学校に到着し、柵を潜り容易に中に忍び込む。

「ココにゃ、ついてこいにゃ」

 そしてシロルは身をかがめ、ひとっ飛びで校舎の窓に飛び乗った。

「そこは確か……。トイレ?」

 二年の教室がある棟、その一階の窓にシロル隣に飛び移る。

「ここでなら元の姿に戻っても誰にもバレないにゃ」

 なるほど。確かにここなら鍵もかかる。
 万が一にも正体がバレる事はないだろう。
 俺もシロルに続き、トイレの窓へと上がった。

「ドアに掛かってる制服、あれってもしかして俺のやつか?」
「今回はサービスで運んでおいたにゃ。変身は元の服装に戻るから、今後はそれを踏まえて変身するにゃよ。変身の魔法は、首輪をしたままメタモルフォーゼと唱えるにゃ 」

 伝える事を伝え終わったのだろう。
 彼は外へと飛び降り、そのままスタスタと歩いて行く。

「シロル、ありがとう!」

 俺のお礼の言葉にシロルからの返事が帰って来る事は無く、ただ立てた尻尾をフリフリと振りその場を去って行ったのだった。
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