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第二章 恋愛相談
第11話 先輩登場後
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「──それでねそれでね。ノア君、今日も人一倍走ってたんだよ。ヘトヘトになりながらも絶対に足を止めないんだ、凄いよね」
姫乃先輩にシゴキを受けた日の晩。
今日も相澤の部屋で、彼女から自分の自慢話を聞かされている。
しかし、今日はいつもとは少し違った……。
俺は仰向けに寝転がる相澤に脇を抱えられ、同時に高い高いの刑にもあっていたのだ。
「降ろせぇー! 聞く、ちゃんと話聞くから降ろしてくれー」
この年になって、後輩の女の子に高い高いされるのは精神的に来るものがある。
いつもは寝そべりながら「はいはい」っと、半分聞いていないようなものだが、これではそうは行かないじゃない。
相澤め、考えやがって。
「分かった、分かったからそろそろ離してくれ!」
かれこれ三十分程の交渉の末、ようやくこちらの言い分を聞き入れてくれたのだろうか?
俺を持ち上げていた相澤の手は、徐々に下がり……。
「ぐえぇ!?」
突然、胸元でギュッと強く抱きしめてきたのだ。
微かに感じるふにふにした天国と、息苦しい地獄が同時に俺を襲う。
「あ、相澤、ちょっといい加減に……」
欲望と理性の格闘の末、ギリギリの所で理性が勝った俺は、自由に動く顔を持ち上げ反論する事ができた。
しかし彼女は、片手で俺を抱きしめたまま、もう片手で自分の顔を覆っていたのだ。
「……相澤?」
先程までの彼女とは、様子が一変していた。
どこか、思い悩んでいるようにも見える……。
「咲百合先輩、今日もノア君にすっごく厳しかったな……」
もしかして、俺の事を心配してくれてるのか?
姫乃先輩の事で、今までこんな風に心配されたことがない俺は、その様子を見て少しだけ涙腺が緩みそうになる。
そうだよ、相澤は姫乃先輩と同じ女性。
あのおかしい状況を、色眼鏡無しで客観視してくれてるんだな……。
「やっぱり、咲百合先輩もノア君が好きなのかな?」
「──ブフッ」
違った、つい吹き出してしまった。
相澤の心配の方向性が、予想していたものとサッパリ違ったのだ。
「なんでだよ、なんでそうなるんだよ!」
「なんでって……愛情の裏返しとか?」
相澤までそんな風に思ってるのか!?
「ないない、それは無い。もしあったとしても、あんな厳しくされてたら心動かされないよ」
「本当に?」
「あぁ、間違いないね」
どれだけ見てくれがよくても、内面があれじゃな……。
例え好意をもたれていようが、飴のない鞭だけじゃ、俺の心が保たない。
謹んで願い下げだ。
「ところで、なんでノアちゃんがそんな事分かるの?」
「えっ? そりゃ……まぁ」
しまった。
自分の事なので、ついムキになって否定してしまった。
今は猫の姿で、相澤は俺の正体を知らない。
不思議がるのは当然な話だ。
何とか誤魔化さねば……。
「お、同じ雄だからな。そりゃ分かるさ」
「そう言うものなの?」
「そう言うものだ!」
根拠の無い力強い解答に、相澤は「そっかーそう言うものなんだ」っと納得してくれた様子。
相澤のそんなチョロいところ、俺は嫌いじゃないぞ。
「でもどうしよ。もしだよ? もし本当に咲百合先輩が恋のライバルなら、私に勝ち目なんてないよ……。綺麗だし頭もいいし、スタイルだって」
「まぁ、確かに。容姿を比べるには相手が悪いかな」
なんたって、比較対象は学園のアイドル。
その見た目だけで男を魅了する魔性の女だ。
それに引き換え……。
「相澤は綺麗ってタイプじゃないし、成績も下の中。細見だけど、スタイルが良いともちょっと違うしな」
「ほ、本当の事だけど酷いよ、そんなハッキリと言うなんて……」
「ちょっと、最後まで聞けって!?」
俺の感想を聞き、相澤は涙目で声を潤ませた。
調子が狂うな、まったく。
「俺が言いたいのは、戦う土俵が違うんじゃないか? ってことなんだ」
この後言う台詞が恥ずかしく、目を背けた。
それでも少しでも傷つけた手前、伝えなきゃいけない。そう思った。
「相澤は綺麗とは違うけど可愛いし、何より一途で一生懸命だ。それに誰かの事で落ち込む事ができる優しい子なのを、俺は知っているから……」
言った、言ってしまった。
自分のストーカー相手に、俺はいったい何を口走ってるんだ。
チラリと横目で相澤の様子を見ると口元が緩み、まるで花が咲いたような笑顔取り戻していた。
「えへーー、ありがとう。少し元気が出てきちゃった。そうだよね、ノア君を思う気持ちなら誰にも負けないもん。例えそれが、咲百合先輩が相手だろうと!!」
今までは下ろしていた前髪で気付けなかったけど、表情がよくコロコロと変わる。
外でも家の中みたいに、前髪を上げておけばいいのに。
「ふふふ、なんかノア君に励まされたみたい」
「ギクッ!? えっと……。なんでそんな風に思うのかな?」
「うーん。声色は違うけど、口調だったり言葉選びだったりイントネーションだったり……。あとは目が垂れてる所!」
流石ストーカーとでも言うべきなのだろうか……。
これだけ外見が違えど、日輪と結びつけてくるなんて、油断ならない奴だ。
「まぁでも、猫相手に恋愛相談されてるようじゃ、日輪との関係も先が思いやられるな。俺じゃなくて仲の良い友達とかにしろよ、こう言う話は」
「そ……それは」
相澤の手の力が緩み、その隙に俺は彼女腕から抜け出した。
歯切れの悪いセリフに突然の開放。
そんな様子が気になり、彼女の顔を見た。
すると何故か、先程まで話していた俺ではなく相澤は何もない壁を見つめていた。
「今、目そらしてるだろ?」
「そらしてない」
「いや、そらして……」
「──そらしてない」
食い気味だ。ってか無理があるだろ?
今のやり取りの中に、彼女にとって都合の悪い何かがある事は明白だった。
しかし踏み込まれたくないだろう相澤の様子に、俺はこれ以上の追求をする事が出来ないのだった。
姫乃先輩にシゴキを受けた日の晩。
今日も相澤の部屋で、彼女から自分の自慢話を聞かされている。
しかし、今日はいつもとは少し違った……。
俺は仰向けに寝転がる相澤に脇を抱えられ、同時に高い高いの刑にもあっていたのだ。
「降ろせぇー! 聞く、ちゃんと話聞くから降ろしてくれー」
この年になって、後輩の女の子に高い高いされるのは精神的に来るものがある。
いつもは寝そべりながら「はいはい」っと、半分聞いていないようなものだが、これではそうは行かないじゃない。
相澤め、考えやがって。
「分かった、分かったからそろそろ離してくれ!」
かれこれ三十分程の交渉の末、ようやくこちらの言い分を聞き入れてくれたのだろうか?
俺を持ち上げていた相澤の手は、徐々に下がり……。
「ぐえぇ!?」
突然、胸元でギュッと強く抱きしめてきたのだ。
微かに感じるふにふにした天国と、息苦しい地獄が同時に俺を襲う。
「あ、相澤、ちょっといい加減に……」
欲望と理性の格闘の末、ギリギリの所で理性が勝った俺は、自由に動く顔を持ち上げ反論する事ができた。
しかし彼女は、片手で俺を抱きしめたまま、もう片手で自分の顔を覆っていたのだ。
「……相澤?」
先程までの彼女とは、様子が一変していた。
どこか、思い悩んでいるようにも見える……。
「咲百合先輩、今日もノア君にすっごく厳しかったな……」
もしかして、俺の事を心配してくれてるのか?
姫乃先輩の事で、今までこんな風に心配されたことがない俺は、その様子を見て少しだけ涙腺が緩みそうになる。
そうだよ、相澤は姫乃先輩と同じ女性。
あのおかしい状況を、色眼鏡無しで客観視してくれてるんだな……。
「やっぱり、咲百合先輩もノア君が好きなのかな?」
「──ブフッ」
違った、つい吹き出してしまった。
相澤の心配の方向性が、予想していたものとサッパリ違ったのだ。
「なんでだよ、なんでそうなるんだよ!」
「なんでって……愛情の裏返しとか?」
相澤までそんな風に思ってるのか!?
「ないない、それは無い。もしあったとしても、あんな厳しくされてたら心動かされないよ」
「本当に?」
「あぁ、間違いないね」
どれだけ見てくれがよくても、内面があれじゃな……。
例え好意をもたれていようが、飴のない鞭だけじゃ、俺の心が保たない。
謹んで願い下げだ。
「ところで、なんでノアちゃんがそんな事分かるの?」
「えっ? そりゃ……まぁ」
しまった。
自分の事なので、ついムキになって否定してしまった。
今は猫の姿で、相澤は俺の正体を知らない。
不思議がるのは当然な話だ。
何とか誤魔化さねば……。
「お、同じ雄だからな。そりゃ分かるさ」
「そう言うものなの?」
「そう言うものだ!」
根拠の無い力強い解答に、相澤は「そっかーそう言うものなんだ」っと納得してくれた様子。
相澤のそんなチョロいところ、俺は嫌いじゃないぞ。
「でもどうしよ。もしだよ? もし本当に咲百合先輩が恋のライバルなら、私に勝ち目なんてないよ……。綺麗だし頭もいいし、スタイルだって」
「まぁ、確かに。容姿を比べるには相手が悪いかな」
なんたって、比較対象は学園のアイドル。
その見た目だけで男を魅了する魔性の女だ。
それに引き換え……。
「相澤は綺麗ってタイプじゃないし、成績も下の中。細見だけど、スタイルが良いともちょっと違うしな」
「ほ、本当の事だけど酷いよ、そんなハッキリと言うなんて……」
「ちょっと、最後まで聞けって!?」
俺の感想を聞き、相澤は涙目で声を潤ませた。
調子が狂うな、まったく。
「俺が言いたいのは、戦う土俵が違うんじゃないか? ってことなんだ」
この後言う台詞が恥ずかしく、目を背けた。
それでも少しでも傷つけた手前、伝えなきゃいけない。そう思った。
「相澤は綺麗とは違うけど可愛いし、何より一途で一生懸命だ。それに誰かの事で落ち込む事ができる優しい子なのを、俺は知っているから……」
言った、言ってしまった。
自分のストーカー相手に、俺はいったい何を口走ってるんだ。
チラリと横目で相澤の様子を見ると口元が緩み、まるで花が咲いたような笑顔取り戻していた。
「えへーー、ありがとう。少し元気が出てきちゃった。そうだよね、ノア君を思う気持ちなら誰にも負けないもん。例えそれが、咲百合先輩が相手だろうと!!」
今までは下ろしていた前髪で気付けなかったけど、表情がよくコロコロと変わる。
外でも家の中みたいに、前髪を上げておけばいいのに。
「ふふふ、なんかノア君に励まされたみたい」
「ギクッ!? えっと……。なんでそんな風に思うのかな?」
「うーん。声色は違うけど、口調だったり言葉選びだったりイントネーションだったり……。あとは目が垂れてる所!」
流石ストーカーとでも言うべきなのだろうか……。
これだけ外見が違えど、日輪と結びつけてくるなんて、油断ならない奴だ。
「まぁでも、猫相手に恋愛相談されてるようじゃ、日輪との関係も先が思いやられるな。俺じゃなくて仲の良い友達とかにしろよ、こう言う話は」
「そ……それは」
相澤の手の力が緩み、その隙に俺は彼女腕から抜け出した。
歯切れの悪いセリフに突然の開放。
そんな様子が気になり、彼女の顔を見た。
すると何故か、先程まで話していた俺ではなく相澤は何もない壁を見つめていた。
「今、目そらしてるだろ?」
「そらしてない」
「いや、そらして……」
「──そらしてない」
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