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第三章 変化、成長?
第20話 雑貨屋
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ただ今の時刻は、午前十時を少し過ぎたぐらいだ。
相澤より先に家へとついた俺は、人の姿に戻り、準備を終え、買い物に出ていた。
そして妹へのプレゼントを買うため、家から最寄りのアンティーク雑貨店に来ている。
「おっ、珍しいな。今日は一樹が店番か?」
ここは、幼馴染の茂木一樹の両親が経営する店だ。
店内は、シックで落ち着いた雰囲気。
そして今は、店を開けて直ぐなためだろう。
店には俺以外の客は居なく、眠そうにカウンターに突っ伏す一樹が、一人店番をしていた。
「部活が休みだってバレてな。ほらコーヒーやるよ」
「お、サンキュー」
カウンターの下から、一樹は缶コーヒーを出し俺に差し出した。
それ受け取り、店の商品を見ながら、頂いたコーヒーのプルタブを開け口にする。
「それより、ノアこそ約束も無しにこんな店に来るなんて珍しいな」
「おい、こんな店って。オバサンに聞かれたら怒られるぞ」
一樹の母親は控えめに言って怖い。
まぁそうなったのも、十中八九ろくな事をしない一樹のせいでもあるんだが。
「バイト代が入ったからな。母さんには食事を、小夜には、何かプレゼントでもしようと思ったんだ。オススメあるか?」
「普通、妹にまでやるか? 相変わらずシスコンだな。まぁ小夜ちゃん可愛いし、気持ちは分からなくもねぇが」
「絶対に手を出すなよ? 茜にチクるからな」
「なぁーんで茜が出てくんだよ」
不満の声を上げながら一樹は立ち上がり、店内の品を眺めた。
自分で選んでもいいが、センスが絶望的なのを自覚している。
その点こいつは、雑貨屋の息子だけあってプレゼント選びの感性は優れている。
「まぁ、お前からの贈り物なら、何でも喜びそうっちゃ喜びそうだが……。おっ、これなんてどうだ?」
一樹が手にした箱の中には、アンティーク調の、フェザーをモチーフにしたヘアピンが入っていた。
「んー、小夜が着けるには少し大人びてないか?」
「馬鹿だな、だから良いんだよ。俺らの年頃の女ってのはな、少し背伸びをしたいもんなんだって」
コイツの持論が合っているかは分からないが、ヘアピンそのものは確かに可愛い。
まぁ値段も高すぎず安すぎず、手頃で丁度いいか。
「じゃぁ一樹、包んでくれよ。もちろん、少しはサービスしてくれんだろ?」
「毎度あり。じゃぁ、さっきのコーヒーはサービスしてやるよ」
「おい、金取る気だったのかよ!」
悪どい商売しやがって。
俺は支払いのため、飲みかけのコーヒーをカウンターに置いて、肩掛けのショルダーバッグから財布を取り出す。
「──なぁノア。ところで、茜にはプレゼントしてやらなくて良いのか?」
一樹が突拍子の無い事を口にした。
平然を装い、俺は支払いをする。
「……なんで家族でもない茜にプレゼントすんだよ、近く誕生日でもあったか?」
「いや、なんでもない。そうか……」
静かになった店内、レジを打つ音が無性に大きく聞こえる。
釣り銭と商品を受け取る頃には、一樹の表情はいつものフザけた笑い顔を見せていた。
「残念だ。茜に何かやるってことは、同じ幼馴染の俺も何か貰えんのかなって期待したんだけど」
「なに馬鹿言ってんだよ、あるわけ無いだろ」
俺は財布と商品をショルダーバッグへとしまうと、コーヒーを手に取る。
いつからだろうな、昔は──。
そんな事が脳裏を横切った時だ。
「なあノア、いつからだろうな? 昔はもっと、馬鹿みたいに、何も考えず笑えてたのに」
「……何いってんだ、一樹らしくない。別に、今も昔も何一つ変わってなんてないだろ?」
商品が並んだ陳列棚を抜け、店の外へと向かう。
そして指先が、冷えているドアノブに触れた──。
「まぁなんだ、時間が合えば飯ぐらい奢ってやるよ。もちろん、俺と茜とお前の三人でな?」
「あぁ、楽しみにしてる。何せタダメシは美味い」
一樹の顔を見ないまま「じゃあな」っと、店からでた。
そして建付けの悪いドアが、音を慣らし閉じられる。
「本当……。いつからだろうな?」
昔は、毎日のように三人で遊んでたのに。
ズレ始めた理由も時期も思い出せない。
いや、理由だけはハッキリしてるか……。
空を仰ぎ、日差しを手で覆う。
五月晴れの清々しさとは程遠い、変わりゆく関係に、少し物思いに耽てみせた──。
「うぅ、寒気が」
しかし、それも長くは続かない。
突然、背中に寒気を感じた。
五月も終わるこの時期に?
いや、まさか……。
「でも、何故か居る気がするんだよな……」
はぁー、実際にこれを使う日が来るとは……。
ため息混じりに、右手で顔の右反面を覆う。
そして人差し指と中指の隙間から、覗くように──。
「トレース!!」
魔法を唱えると、アンティーク雑貨店の窓から、斜め向かいにある交差点に向かうほど濃く、赤い靄が見える。
そしてその発生源だと思われる人物が、壁越しに透過して見えた。
「おい、なんで居るんだよ……」
これだけくっきり、鮮明に見える靄の犯人の正体。
それは言わずとしれた相澤 澪、その人でまず間違いないだろう……。
相澤より先に家へとついた俺は、人の姿に戻り、準備を終え、買い物に出ていた。
そして妹へのプレゼントを買うため、家から最寄りのアンティーク雑貨店に来ている。
「おっ、珍しいな。今日は一樹が店番か?」
ここは、幼馴染の茂木一樹の両親が経営する店だ。
店内は、シックで落ち着いた雰囲気。
そして今は、店を開けて直ぐなためだろう。
店には俺以外の客は居なく、眠そうにカウンターに突っ伏す一樹が、一人店番をしていた。
「部活が休みだってバレてな。ほらコーヒーやるよ」
「お、サンキュー」
カウンターの下から、一樹は缶コーヒーを出し俺に差し出した。
それ受け取り、店の商品を見ながら、頂いたコーヒーのプルタブを開け口にする。
「それより、ノアこそ約束も無しにこんな店に来るなんて珍しいな」
「おい、こんな店って。オバサンに聞かれたら怒られるぞ」
一樹の母親は控えめに言って怖い。
まぁそうなったのも、十中八九ろくな事をしない一樹のせいでもあるんだが。
「バイト代が入ったからな。母さんには食事を、小夜には、何かプレゼントでもしようと思ったんだ。オススメあるか?」
「普通、妹にまでやるか? 相変わらずシスコンだな。まぁ小夜ちゃん可愛いし、気持ちは分からなくもねぇが」
「絶対に手を出すなよ? 茜にチクるからな」
「なぁーんで茜が出てくんだよ」
不満の声を上げながら一樹は立ち上がり、店内の品を眺めた。
自分で選んでもいいが、センスが絶望的なのを自覚している。
その点こいつは、雑貨屋の息子だけあってプレゼント選びの感性は優れている。
「まぁ、お前からの贈り物なら、何でも喜びそうっちゃ喜びそうだが……。おっ、これなんてどうだ?」
一樹が手にした箱の中には、アンティーク調の、フェザーをモチーフにしたヘアピンが入っていた。
「んー、小夜が着けるには少し大人びてないか?」
「馬鹿だな、だから良いんだよ。俺らの年頃の女ってのはな、少し背伸びをしたいもんなんだって」
コイツの持論が合っているかは分からないが、ヘアピンそのものは確かに可愛い。
まぁ値段も高すぎず安すぎず、手頃で丁度いいか。
「じゃぁ一樹、包んでくれよ。もちろん、少しはサービスしてくれんだろ?」
「毎度あり。じゃぁ、さっきのコーヒーはサービスしてやるよ」
「おい、金取る気だったのかよ!」
悪どい商売しやがって。
俺は支払いのため、飲みかけのコーヒーをカウンターに置いて、肩掛けのショルダーバッグから財布を取り出す。
「──なぁノア。ところで、茜にはプレゼントしてやらなくて良いのか?」
一樹が突拍子の無い事を口にした。
平然を装い、俺は支払いをする。
「……なんで家族でもない茜にプレゼントすんだよ、近く誕生日でもあったか?」
「いや、なんでもない。そうか……」
静かになった店内、レジを打つ音が無性に大きく聞こえる。
釣り銭と商品を受け取る頃には、一樹の表情はいつものフザけた笑い顔を見せていた。
「残念だ。茜に何かやるってことは、同じ幼馴染の俺も何か貰えんのかなって期待したんだけど」
「なに馬鹿言ってんだよ、あるわけ無いだろ」
俺は財布と商品をショルダーバッグへとしまうと、コーヒーを手に取る。
いつからだろうな、昔は──。
そんな事が脳裏を横切った時だ。
「なあノア、いつからだろうな? 昔はもっと、馬鹿みたいに、何も考えず笑えてたのに」
「……何いってんだ、一樹らしくない。別に、今も昔も何一つ変わってなんてないだろ?」
商品が並んだ陳列棚を抜け、店の外へと向かう。
そして指先が、冷えているドアノブに触れた──。
「まぁなんだ、時間が合えば飯ぐらい奢ってやるよ。もちろん、俺と茜とお前の三人でな?」
「あぁ、楽しみにしてる。何せタダメシは美味い」
一樹の顔を見ないまま「じゃあな」っと、店からでた。
そして建付けの悪いドアが、音を慣らし閉じられる。
「本当……。いつからだろうな?」
昔は、毎日のように三人で遊んでたのに。
ズレ始めた理由も時期も思い出せない。
いや、理由だけはハッキリしてるか……。
空を仰ぎ、日差しを手で覆う。
五月晴れの清々しさとは程遠い、変わりゆく関係に、少し物思いに耽てみせた──。
「うぅ、寒気が」
しかし、それも長くは続かない。
突然、背中に寒気を感じた。
五月も終わるこの時期に?
いや、まさか……。
「でも、何故か居る気がするんだよな……」
はぁー、実際にこれを使う日が来るとは……。
ため息混じりに、右手で顔の右反面を覆う。
そして人差し指と中指の隙間から、覗くように──。
「トレース!!」
魔法を唱えると、アンティーク雑貨店の窓から、斜め向かいにある交差点に向かうほど濃く、赤い靄が見える。
そしてその発生源だと思われる人物が、壁越しに透過して見えた。
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