異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル

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第一章 グローリア大陸編

第61話 カナデとミコの暴露術

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 ロッククラブの討伐後、折角食材も手に入った事なので、俺達は夜営の準備を始めた。
 今日も俺専用の寝床、お約束のポールテントを一個立てて……。

  そろそろ俺も、一緒の馬車に寝てもいいのではないだろうか?
 皆でキャハハ、ウフフしながらで良いのではないだろうか? ……駄目ですよね、ハイ。

「驚きました、フォルトゥナ様はともかく、カナデ様も御強かったのですね……」

「そうですか? 俺はまだまだだと思ってますけど」

 実際、じいちゃんの帯刀流たてわきりゅう剣術は、俺の抜刀術より遥かに強かった。

 本来であれば、俺もそちらの剣術を継ぎたかったんだけど、じいちゃんの希望によって、帯刀流抜刀術を体得する事に……。

 俺にはこちらの方が合ってるって言ってたけど。じいちゃんと同じが良かったな。

 何はともあれ、現在は先程討伐した蟹を塩ゆで中。
 本当は色々料理したかったが、早く食べたくて我慢できなかった……。よって、鍋の中に突っ込んだ!

 ──よし! 蟹がいい茹で上がりだ!

 ゆで上がった熱々の蟹の脚を、手拭いのような物で掴み、トゥナとハーモニー、ティアに「はい」と、渡した。

「カナデ君……これ、どうやって食べればいいの?」

 そうかそうか! トゥナは蟹デビューなのか?

 俺はトゥナの目の前で、パキっと割って見せて身をズルッ! っと引き抜ぬいた。──これはヤバイな……蟹の身が人の腕位の大きさだ。身一つで満腹になりそうだぜ!

 トゥナも真似して、同じように身を引き出す。

「カナデ君! 私、こんな風に豪快に手掴みで食べるとか初めてだわ!」

「食べるのが大変ですけど、これがまた美味しいんですよね~」

「……確かにこれは、癖になる美味しさですね」

 そう言いながら四人で口一杯にその身を頬張る!

 ……ウ、ウマイ! 大きいからもっと大味だと思ってたけど、身は甘いし引き締まっている。
 口の中に蟹の香りと幸せが広がるようだ……もう二本ぐらい、楽々行けそうな気がする!

「──それにしても、あれでまだまだって言うカナデ様は、御自身が変わっている自覚が無いようですね? 先程トゥナ様にお聞きしましたが、精霊様も従えさせているそうですし……」

 どうやら、さっきの戦闘でのセオリー無視の真っ二つが、どうにも気になっているらしい……。

「従えさせているなんて……ミコとは、ただの友だよ。ほら? ミコ出てこい」

 マジックバックからゴソゴソと「カナデ~ボクにもその食べ物、くれるカナ!」と姿を表すミコ。
 俺は、彼女に前もって小分けしておいた身を渡した。

「大精霊様…?」

 そう呟いたティアに「違うしボクはミコカナ……モゴモゴ。それにボクは、モゴモゴ……大精霊じゃなくて、武器精霊って言われたカナ」と俺の聞いたことない単語が聞こえた。

 ただ、これだけは何となく分かる……これは良くない流れだ。
 だって、トゥナの顔を見ると頭を抱えているのだから……。──これは、確実にまずったやつだな。

「……聖剣が折れたと言う噂は、本当だったのですね」

 ティアは呟きながら、何やら難しそうな顔をした。──え? なんでそう言う話になるんだよ? ハーモニーも蟹を落とすぐらい驚いているし……勿体ない。

「あのね? カナデ君。武器精霊は世界で聖剣のミコちゃんだけなの。私はカナデ君がスパン……した事を聞いてたから、さほどビックリしなかったけど、普通はこうよ? それにしてもカナデ君、本当自分の秘密隠せないのね? 逆に清々しいと思うわ……」

 誉めては……なさそうだな? そういえば、前にもこんな事あったな!
 何故だろう、ミコに俺の秘密が全部暴露されていく……。

「でも、その話を聞いてカナデ様の強さに納得いたしました……。ミコ様が着いているのであれば、あれぐらい余裕ですね」

「違うカナ、おかしいのはカナデと無銘だシ。ボクはさっき何もしてないモン」

「ま、またまたご冗談を……」

 ティアの目が泳ぎっぱなしだ。
 現実を受け入れないつもりだな? 別にいいけど……。

 大体、おかしいのは俺より無銘だよ。鑑定眼で確認したこともあるけど、圧倒的に相手の防御力を上回ってるんだからな……。
 今までコイツで切れないものと出くわしたことが無いぞ?

 それでもミコの能力。
 武器の自動修復がなければ、刃が欠けるのを恐れて切ることも出来ないわけだし……彼女も十分にチートだろう。

「カナデさん、変わってる人だと思ってましたけど……さらに際立って来ましたね? 今さら、実は勇者様でした~とか止めてくださいよ? 取り扱いに困るので~」

 取り扱いって……いつもの仕返しか? いい度胸だ、受けてたってやる。

「今さら、『勇者様かもしれないなら、ヤッパリ結婚してくれ』ってのは無しだからな? どうしてもって言うなら、後十年立ったら考えてやる」

 ハーモニーと睨み合い、まだまだ沢山あるのに一本の蟹の脚を奪い合う。別に怒っているわけではないが、こんなやり取りが心地よい。
 
 そんな中、トゥナを見ると何やら元気が無さそうだ。蟹が口に合わなかったか?

「でもそうなると、カナデ様をグローリア国で指名手配する理由も色々と仮説が立てられますね……」

「カナデさん指名手配されてるんですか! どんな軽犯罪積み重ねたんですか~!」

 あれ、ハーモニーにも説明してなかったか? 言われてみれば言ってなかった様な……ってそれより!

「おい! 軽犯罪積み重ねるって、どう言う事だよ……俺が小物だっていいたいのか?」

 反論しずらいわ! それにしても、誰が知ってて、誰が知らないかが分からないな……。
 ここで少し、腹を割って話し合ってもいいか?

「まぁ、知らない人も居るみたいだから話すけど。ティアさんが言ってる通り、俺は自分でもハッキリ理由が分からないが、指名手配をされているんだ。どうせだから今までの経緯を説明していいか?」

 俺の声にミコを除いた三人が頷く。

「事の発端は、俺がこの世界に召喚された事から始まるんだけど……」

 そう語ると三人とも、手に持っていたものを同時に地面に落とす。驚いているようだ……。

 ──あれ? どうしたんだよ……。

 三人は立ち上がり「何よそれ!」「何いってるんですか~!」「何なんですか、それは!」と、三者三様、驚いて見せた。

「あれ? 二人が驚くのはわかるけど、トゥナには言った気がするぞ?」

「本当、カナデ君は……。私は貴方が、城に呼ばれたって聞いたの! 召喚されたなんて初耳よ?」 

 あぁ~……そうだったっけ? 俺としてはそう言ったつもりだけど、招かれたって意味の捉え方もできるもんな?

「まさかの問題発言だったわ……」と、頭を抱えるトゥナ。──彼女には、本当に悩ませっぱなしだな、申し訳ない!

「でもこれで、カナデ様が指名手配をされる理由もいくらか絞られますね……。一つ、濃厚な仮説がたてられました。まずこれで間違いないかと……」
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