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第一章 グローリア大陸編
第67話 トゥナはどうして
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「トゥナン、トゥナン、聞きたいことあるカナ?」
それは、大きな問題もない平和なとある日、イーデル港町に向かって移動をしている時の事だ。
考えずに聞いたのだろう。そんな、ミコの一つの質問から始まった。
「うん、何かしら? ミコちゃん」
「トゥナンってお姫様なのカナ? どうしてこんな所にいるのカナ?」
──おぉ、言われてみれば……。 ミコ中々いい質問するじゃないか。今日の晩御飯は大盛にしてやる!
「トゥナ、それは俺も気になるな? 良かったら話してくれよ」
「私も聞きたいです~」と、馬車の手綱を御しながら俺の言葉に便乗するハーモニー。しっかり盗み聞きしていたようだ。
ただ、目の前のトゥナは何やら気まずそうに視線をそらしている。そして、彼女は言うべきか悩んでいるのだろう、複雑そうな顔をし始めた。
「どうしたのカナ? 言えない理由があるなら聞かないシ」
ミコの言葉を聞き、トゥナは何かを諦めたように「う~ん、笑わないでね?」と、覚悟を決めた面持ちで、ゆっくりと説明を始めた。
「私の国にはね、一人の有名な占い師がいるの。星読みの巫女って言うのだけど……」
へぇ~……この世界にも占いみたいなものがあるのか?
巫女って事は、占いと言うよりは神託に近いのだろうな。
「その方の占いでこう言われたらしいの『リベラティオ王家の血縁者がグローリア王国に向かうことで、人類滅亡の危機から救われる……』ってね」
そ、それはまた……えらい、規模の大きな話だな? でもそれって確実に当たる訳じゃないよな?
……ってか、当たったらそれはもう占いじゃなくて、完全な未来予知だ。
「なるほど~それでトゥナさんが、その一人に選ばれた訳なんですか~?」
ハーモニーの質問に、気まずそうに顔を反らすトゥナ……。──トゥナさん? そちらには誰もいませんよ?
「どうも、フォルトゥナ様が話しにくいようなので、ここからは私がお変わりいたしましょうか?」
そう言うティアの声に、横を向きながらも頷くトゥナ。──語り部が変わるものの、どうやら話の続きが聞けるらしいな。
「要約するとですね……」
彼女の溜めに、一同が静まり返る。──話の間を取ったぞ、ティアめ……中々焦らしてくるな? このエンターテイナーめ!
真剣顔で俯くティアが。顔を上げて、ビックリするほどあっさりと、事の本末を説明したのだった。
「──ただの、家出なのです」っと。
はっ? ティアの発言に一瞬頭を悩ませる。しかしトゥナの様子から察するに、彼女が口にした内容に間違いはなさそうだ。
「「「──えぇ~~~~!」」」
俺達の驚きの声を聞き、トゥナは両手で顔を覆い、イヤイヤと首を左右に振った。──いや、仕草は可愛いけれども!
「私も聞いた話になるのですが、フォルトゥナ様は占いの話を小耳に挟み、王様に直接立候補したらしいのです。しかし、リベラティオ王が、フォルトゥナ様に何かあったらと言った理由で、無念にも却下されたそうなのです」
ま、まさか却下されたから家出を……? た、確かに良くも悪くも真っ直ぐな彼女なら、無くも無いか……?
「しかし、幼い頃より勇者の物語に憧れを抱いていたフォルトゥナ様は、私が人類を救います! と、書き置きを残して国を出たとか……。どこまで本当なのかは知りませんが、私が聞かされたのはここまでです」
ティアが話し終わると、一同がトゥナに注目する。──おい! ハーモニーは、前向いて手綱を握れよ!
「わ、私も反省はしてるわよ? だ、だからティアさんに身辺報告の了承をしたわけで……」
ティアに気遣ってじゃなくて、ただ後ろめたさからだったのか……。いや、もしくは両方かもしれないな。
「それで? 結局のところ、人類は救われたのか?」
俺の質問に対して、トゥナは何故か俺を熱いまなざし? で、真っ直ぐ見据えたのだ……。──っえ?
「これは、私の直感なのだけど……。カナデ君が私を助けてくれた時に、あぁ~……この人が、占い師様の言ってた人類を救う人じゃないかな? って思ったの」
彼女の発言に、今度は俺が注目の的になる。──あ~……トゥナは何を言ってるのかな?
「カナデさんが人類滅亡の危機に関係してるなんて思えないですよ~? だってカナデさんですよ~?」
「──おい……! カナデさんは名称であって、物事を否定する理由にはならない! だから、カナデさんですよ~っはおかしいからな? ちびっ子」
「カナデさん、後で覚悟しておいてくださいよ~?」と、不穏な台詞を残すハーモニー。──覚悟するのが嫌なので、謝ってしまおうか?
「そうですよね……ハーモニー様が言うことにも一理あると思います。だってカナデ様ですから」
やっぱ謝らねぇ! って言うか、お前ら泣くぞ! 俺が泣いてもっと注目を集めてやろうか?
「──それでも、カナデ君が切った魔物の断面を見た時、それが人間業に感じられなかったの……。あの時は、この人がグローリア国に入る事自体が、他国に驚異になる気がしたのよ……」
しかし、トゥナのその言葉に誰も賛同することはなかった。そして俺は、なぜか皆から疑惑の目で注目を受けることになった。
「なるほどカナ、なるほどカナ。人は色々とあるのカナ」
そう言って頷くミコ。──本当に理解できたのか? お前は一体、何に納得して満足しているんだよ……。
その後、この話は一区切りつき別の話題が始まった。馬車は止まることなく、旅は続いて行く。
別の話題の中、小声で「で、でも私はカナデ君が本物の勇者だって思ってるもん……」と、トゥナが呟いたように聞こえたが……。チラッと聞こえた俺は、その声を聞かなかった事にしたのであった。
それは、大きな問題もない平和なとある日、イーデル港町に向かって移動をしている時の事だ。
考えずに聞いたのだろう。そんな、ミコの一つの質問から始まった。
「うん、何かしら? ミコちゃん」
「トゥナンってお姫様なのカナ? どうしてこんな所にいるのカナ?」
──おぉ、言われてみれば……。 ミコ中々いい質問するじゃないか。今日の晩御飯は大盛にしてやる!
「トゥナ、それは俺も気になるな? 良かったら話してくれよ」
「私も聞きたいです~」と、馬車の手綱を御しながら俺の言葉に便乗するハーモニー。しっかり盗み聞きしていたようだ。
ただ、目の前のトゥナは何やら気まずそうに視線をそらしている。そして、彼女は言うべきか悩んでいるのだろう、複雑そうな顔をし始めた。
「どうしたのカナ? 言えない理由があるなら聞かないシ」
ミコの言葉を聞き、トゥナは何かを諦めたように「う~ん、笑わないでね?」と、覚悟を決めた面持ちで、ゆっくりと説明を始めた。
「私の国にはね、一人の有名な占い師がいるの。星読みの巫女って言うのだけど……」
へぇ~……この世界にも占いみたいなものがあるのか?
巫女って事は、占いと言うよりは神託に近いのだろうな。
「その方の占いでこう言われたらしいの『リベラティオ王家の血縁者がグローリア王国に向かうことで、人類滅亡の危機から救われる……』ってね」
そ、それはまた……えらい、規模の大きな話だな? でもそれって確実に当たる訳じゃないよな?
……ってか、当たったらそれはもう占いじゃなくて、完全な未来予知だ。
「なるほど~それでトゥナさんが、その一人に選ばれた訳なんですか~?」
ハーモニーの質問に、気まずそうに顔を反らすトゥナ……。──トゥナさん? そちらには誰もいませんよ?
「どうも、フォルトゥナ様が話しにくいようなので、ここからは私がお変わりいたしましょうか?」
そう言うティアの声に、横を向きながらも頷くトゥナ。──語り部が変わるものの、どうやら話の続きが聞けるらしいな。
「要約するとですね……」
彼女の溜めに、一同が静まり返る。──話の間を取ったぞ、ティアめ……中々焦らしてくるな? このエンターテイナーめ!
真剣顔で俯くティアが。顔を上げて、ビックリするほどあっさりと、事の本末を説明したのだった。
「──ただの、家出なのです」っと。
はっ? ティアの発言に一瞬頭を悩ませる。しかしトゥナの様子から察するに、彼女が口にした内容に間違いはなさそうだ。
「「「──えぇ~~~~!」」」
俺達の驚きの声を聞き、トゥナは両手で顔を覆い、イヤイヤと首を左右に振った。──いや、仕草は可愛いけれども!
「私も聞いた話になるのですが、フォルトゥナ様は占いの話を小耳に挟み、王様に直接立候補したらしいのです。しかし、リベラティオ王が、フォルトゥナ様に何かあったらと言った理由で、無念にも却下されたそうなのです」
ま、まさか却下されたから家出を……? た、確かに良くも悪くも真っ直ぐな彼女なら、無くも無いか……?
「しかし、幼い頃より勇者の物語に憧れを抱いていたフォルトゥナ様は、私が人類を救います! と、書き置きを残して国を出たとか……。どこまで本当なのかは知りませんが、私が聞かされたのはここまでです」
ティアが話し終わると、一同がトゥナに注目する。──おい! ハーモニーは、前向いて手綱を握れよ!
「わ、私も反省はしてるわよ? だ、だからティアさんに身辺報告の了承をしたわけで……」
ティアに気遣ってじゃなくて、ただ後ろめたさからだったのか……。いや、もしくは両方かもしれないな。
「それで? 結局のところ、人類は救われたのか?」
俺の質問に対して、トゥナは何故か俺を熱いまなざし? で、真っ直ぐ見据えたのだ……。──っえ?
「これは、私の直感なのだけど……。カナデ君が私を助けてくれた時に、あぁ~……この人が、占い師様の言ってた人類を救う人じゃないかな? って思ったの」
彼女の発言に、今度は俺が注目の的になる。──あ~……トゥナは何を言ってるのかな?
「カナデさんが人類滅亡の危機に関係してるなんて思えないですよ~? だってカナデさんですよ~?」
「──おい……! カナデさんは名称であって、物事を否定する理由にはならない! だから、カナデさんですよ~っはおかしいからな? ちびっ子」
「カナデさん、後で覚悟しておいてくださいよ~?」と、不穏な台詞を残すハーモニー。──覚悟するのが嫌なので、謝ってしまおうか?
「そうですよね……ハーモニー様が言うことにも一理あると思います。だってカナデ様ですから」
やっぱ謝らねぇ! って言うか、お前ら泣くぞ! 俺が泣いてもっと注目を集めてやろうか?
「──それでも、カナデ君が切った魔物の断面を見た時、それが人間業に感じられなかったの……。あの時は、この人がグローリア国に入る事自体が、他国に驚異になる気がしたのよ……」
しかし、トゥナのその言葉に誰も賛同することはなかった。そして俺は、なぜか皆から疑惑の目で注目を受けることになった。
「なるほどカナ、なるほどカナ。人は色々とあるのカナ」
そう言って頷くミコ。──本当に理解できたのか? お前は一体、何に納得して満足しているんだよ……。
その後、この話は一区切りつき別の話題が始まった。馬車は止まることなく、旅は続いて行く。
別の話題の中、小声で「で、でも私はカナデ君が本物の勇者だって思ってるもん……」と、トゥナが呟いたように聞こえたが……。チラッと聞こえた俺は、その声を聞かなかった事にしたのであった。
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