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第二章 海上編─オールアウト号─
第85話 木刀完成
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「ふぁぁぁぁ~よく寝たシ……。カナデおはようカナ」
どうやら、テーブルの上で大の字になって、ヨダレを垂らしながら寝ていたウチの精霊様が目を覚ましたようだ。
「あぁ……ミコか、おはよう」
俺は朧気な意識の中、半開きの目をしながら一枚布をゴソゴソと広げていた。
「カ、カナデ。まだやってたのカナ? もう朝だシ!」
目の下にはクマが出来てるかもしれないな……眠い。俺は、瞼を手で擦りながら周囲を見渡した。
眠い眠いとは思ってはいたが、いつの間にか明るくなっているじゃないか。
船室にある窓から刺し込む光が、室内を鮮やかに彩り朝になったことを知らせている。
窓の外を見てみると太陽が昇っていた。──そう聞くと、普通なら昇りかけをイメージするだろう。しかし今回は違う。ガッツリ昇っているのだ。
「お、おぉ……完全に徹夜してしまった」
いくら集中をしていたとはいえ、朝になった事に気づかなかった。そんな事がありえるのか? いや、現にありえているわけで。
「カナデもかなり変なやつだシ。周りの人の事、変とか言えないカナ……」
おい、ミコよ! ソイツはちょっと酷いだろ、俺は一般人だ普通なんだよ。
異世界の変わり者と同じにしないでもらおうか!
「で、でも俺はただじゃ起きないぜ?」
「起きないって……そもそも寝てもないカナ」
そんなミコの突っ込みをさらっと無視すると、俺は壁に立て掛けている物に指をさした。
見ればわかるのだが、そこには布を被せられた何かがあった。
「昨日作ってたやつカナ? どうして布が被ってるシ?」
彼女の質問に「その方が雰囲気が出るかと思ってな? 実はコレな? いいサイズの布が無かったから縫ったんだぜ!」と答え、ミコを呆れさせてやった。
「だから寝れないんダシ……」
今日のミコは中々手痛いところを突っ込んでくるな……。
彼女も伊達に一緒に冒険して来た訳ではない……っと言う事なのだろうか?
いや、今はそんな事はどうでもいい!
「──さぁミコよ、これを見よ!」
俺は大声を上げ、布を勢いよくめくった。憧れの演出だったのだ!
しかし目の前の彼女は、少々予定外のリアクションをしたのであった。
驚くと思いきや、やれやれっと頭を抱えるジェスチャーと共にため息を付くのだ。──そ……それはトゥナの真似!
「カナデ、寝れない訳カナ。やっぱカナデは変人だモン」
……まさかの感想だった、厳しい言葉が俺の胸を貫く。
布で隠してあったものは、無銘をモデルに作られた木刀と、ソレのセットの鞘。
更には極めつけに、レーヴァテインのデザインを模した木剣まで置いてあるのだ。普通は驚くだろ?──作品共に、演出まで完璧だったのに、なぜこの反応……納得がいかぬ。
「カナデ、そんな事よりボクお腹すいたカナ。朝ごはん食べたいシ」
ミコが構ってくれない。
興味を示さないので、製作者自らプレゼンをすることにした。
「いやいや、これなんて中々の出来だぞ? ほら、無銘木刀が鞘に収まるようになってるんだ! こんなスムーズな出し入れが可能なんだぜ!」
そう言いながら木刀を鞘に納め、抜刀と納刀を繰り返しアピールした。
「でもそれ、食べられないカナ」
──完敗だ。自慢する相手を完全に間違えてしまった。
ミコは俺の気も知らずマジックバックの中に収まり「早くご飯行くかな!」っとドアに向かって指をさす。
諦めた俺は、作ったものをマジックバックにしまい、軽く朝食を取り甲板にあがった。
「──な、なんだよこれ……」
甲板の外に出ると、ソコは昨日の装いとは全く違った。いつの間にか、戦闘会場と装飾が出来上がっていたのだ。
しかも明確な開始時間も決めていなかったのに、既に何人かの乗組員が観客席に座っている。──おい、お前達仕事しろよな。
「カナデさん~! あまり無様な姿、見せないでくださいね~」
聞きなれた声がしたので振り返ると、観客席には見慣れた二人が座っていた。
「ハーモニー……ティア、なんでこんな所にいるんだよ?」
まさか、変な噂でも立ったのか? 確かにこの閉鎖空間だ、噂など一晩もあれば船内に広がってもおかしくない。
「なんでって、カナデさんがやられるところを見に来たに決まってるじゃないですか。感謝してくださいね~?」
──やられるのが前提なのかよ! ちびっ子め……後でどうしてくれようか?
「お二人が決闘すると聞きまして。もし、フォルトゥナ様の柔肌を傷つけようものなら、すり潰して海の藻屑にしようと思った次第です」
──怖いから! それ怖いから!
それにしてもアウェイ感が半端ない。
バランス悪いから、どっちか一人ぐらい俺の応援してくれないものだろうか? 一応これでも集団のリーダーなんだけど……。
「あらカナデ君、思ったより早かったわね? 待たせちゃったかしら?」
二人と話していると、船内の入口から声をかけられた。その正体は、本日の対戦相手であるトゥナだ。
「気にすんなよ、今来たところだから」
長年言いたかった台詞を言うことができた。
まぁ、実際に今来たところだけど。
「それよりトゥナ……なんで今日も帽子してるんだよ?」
「い、いいじゃない……これがお気に入りなのよ。それに心配する事はないわよ? 今日は、ティアさんにピンでとめて貰ってるから、動いた程度で飛ばないわ」
彼女のその発言、何処か引っかかる。
まるで帽子を取りたくないかの様な雰囲気だ。
もしかして、寝癖が付いてるとか、髪を切り損なったとかなのか?
俺は指摘後、不意にハーモニーとティアを見た。しかし二人は、目線をそらしたのだ。──どうも二人は理由を知っているようだな? ってことは俺は仲間外れか。
俺の表情をうかがってなのか「カ、カナデ君。それより木剣は出来たの?」と、トゥナは話を反らした。──どうやら、本人は言いたくないみたいだな。それは致し方ない!
とりあえずマジックバックから、徹夜で作り上げた木剣と木刀を出した。
そして三人に見せると「おぉ~!」と歓喜の声があがる。──これだよ! このリアクションを待っていた。
トゥナに木剣の方を渡すと「これ、レーヴァテインよね?」と喜んで受け取った。
目の前で何度か振り回し、驚いているようだ。
「重さこそ違うけど、重量のバランスがレーヴァテインと同じだわ……」
彼女の言う通り重さこそ違うが、全体の重量のバランスを意識して仕上げたのだ。──流石トゥナ。違いの分かる子だ。
「カナデ君、ありがとね」と、それを抱き抱えて微笑む彼女の姿は、徹夜明けには少々眩しく感じたのだ。
どうやら、テーブルの上で大の字になって、ヨダレを垂らしながら寝ていたウチの精霊様が目を覚ましたようだ。
「あぁ……ミコか、おはよう」
俺は朧気な意識の中、半開きの目をしながら一枚布をゴソゴソと広げていた。
「カ、カナデ。まだやってたのカナ? もう朝だシ!」
目の下にはクマが出来てるかもしれないな……眠い。俺は、瞼を手で擦りながら周囲を見渡した。
眠い眠いとは思ってはいたが、いつの間にか明るくなっているじゃないか。
船室にある窓から刺し込む光が、室内を鮮やかに彩り朝になったことを知らせている。
窓の外を見てみると太陽が昇っていた。──そう聞くと、普通なら昇りかけをイメージするだろう。しかし今回は違う。ガッツリ昇っているのだ。
「お、おぉ……完全に徹夜してしまった」
いくら集中をしていたとはいえ、朝になった事に気づかなかった。そんな事がありえるのか? いや、現にありえているわけで。
「カナデもかなり変なやつだシ。周りの人の事、変とか言えないカナ……」
おい、ミコよ! ソイツはちょっと酷いだろ、俺は一般人だ普通なんだよ。
異世界の変わり者と同じにしないでもらおうか!
「で、でも俺はただじゃ起きないぜ?」
「起きないって……そもそも寝てもないカナ」
そんなミコの突っ込みをさらっと無視すると、俺は壁に立て掛けている物に指をさした。
見ればわかるのだが、そこには布を被せられた何かがあった。
「昨日作ってたやつカナ? どうして布が被ってるシ?」
彼女の質問に「その方が雰囲気が出るかと思ってな? 実はコレな? いいサイズの布が無かったから縫ったんだぜ!」と答え、ミコを呆れさせてやった。
「だから寝れないんダシ……」
今日のミコは中々手痛いところを突っ込んでくるな……。
彼女も伊達に一緒に冒険して来た訳ではない……っと言う事なのだろうか?
いや、今はそんな事はどうでもいい!
「──さぁミコよ、これを見よ!」
俺は大声を上げ、布を勢いよくめくった。憧れの演出だったのだ!
しかし目の前の彼女は、少々予定外のリアクションをしたのであった。
驚くと思いきや、やれやれっと頭を抱えるジェスチャーと共にため息を付くのだ。──そ……それはトゥナの真似!
「カナデ、寝れない訳カナ。やっぱカナデは変人だモン」
……まさかの感想だった、厳しい言葉が俺の胸を貫く。
布で隠してあったものは、無銘をモデルに作られた木刀と、ソレのセットの鞘。
更には極めつけに、レーヴァテインのデザインを模した木剣まで置いてあるのだ。普通は驚くだろ?──作品共に、演出まで完璧だったのに、なぜこの反応……納得がいかぬ。
「カナデ、そんな事よりボクお腹すいたカナ。朝ごはん食べたいシ」
ミコが構ってくれない。
興味を示さないので、製作者自らプレゼンをすることにした。
「いやいや、これなんて中々の出来だぞ? ほら、無銘木刀が鞘に収まるようになってるんだ! こんなスムーズな出し入れが可能なんだぜ!」
そう言いながら木刀を鞘に納め、抜刀と納刀を繰り返しアピールした。
「でもそれ、食べられないカナ」
──完敗だ。自慢する相手を完全に間違えてしまった。
ミコは俺の気も知らずマジックバックの中に収まり「早くご飯行くかな!」っとドアに向かって指をさす。
諦めた俺は、作ったものをマジックバックにしまい、軽く朝食を取り甲板にあがった。
「──な、なんだよこれ……」
甲板の外に出ると、ソコは昨日の装いとは全く違った。いつの間にか、戦闘会場と装飾が出来上がっていたのだ。
しかも明確な開始時間も決めていなかったのに、既に何人かの乗組員が観客席に座っている。──おい、お前達仕事しろよな。
「カナデさん~! あまり無様な姿、見せないでくださいね~」
聞きなれた声がしたので振り返ると、観客席には見慣れた二人が座っていた。
「ハーモニー……ティア、なんでこんな所にいるんだよ?」
まさか、変な噂でも立ったのか? 確かにこの閉鎖空間だ、噂など一晩もあれば船内に広がってもおかしくない。
「なんでって、カナデさんがやられるところを見に来たに決まってるじゃないですか。感謝してくださいね~?」
──やられるのが前提なのかよ! ちびっ子め……後でどうしてくれようか?
「お二人が決闘すると聞きまして。もし、フォルトゥナ様の柔肌を傷つけようものなら、すり潰して海の藻屑にしようと思った次第です」
──怖いから! それ怖いから!
それにしてもアウェイ感が半端ない。
バランス悪いから、どっちか一人ぐらい俺の応援してくれないものだろうか? 一応これでも集団のリーダーなんだけど……。
「あらカナデ君、思ったより早かったわね? 待たせちゃったかしら?」
二人と話していると、船内の入口から声をかけられた。その正体は、本日の対戦相手であるトゥナだ。
「気にすんなよ、今来たところだから」
長年言いたかった台詞を言うことができた。
まぁ、実際に今来たところだけど。
「それよりトゥナ……なんで今日も帽子してるんだよ?」
「い、いいじゃない……これがお気に入りなのよ。それに心配する事はないわよ? 今日は、ティアさんにピンでとめて貰ってるから、動いた程度で飛ばないわ」
彼女のその発言、何処か引っかかる。
まるで帽子を取りたくないかの様な雰囲気だ。
もしかして、寝癖が付いてるとか、髪を切り損なったとかなのか?
俺は指摘後、不意にハーモニーとティアを見た。しかし二人は、目線をそらしたのだ。──どうも二人は理由を知っているようだな? ってことは俺は仲間外れか。
俺の表情をうかがってなのか「カ、カナデ君。それより木剣は出来たの?」と、トゥナは話を反らした。──どうやら、本人は言いたくないみたいだな。それは致し方ない!
とりあえずマジックバックから、徹夜で作り上げた木剣と木刀を出した。
そして三人に見せると「おぉ~!」と歓喜の声があがる。──これだよ! このリアクションを待っていた。
トゥナに木剣の方を渡すと「これ、レーヴァテインよね?」と喜んで受け取った。
目の前で何度か振り回し、驚いているようだ。
「重さこそ違うけど、重量のバランスがレーヴァテインと同じだわ……」
彼女の言う通り重さこそ違うが、全体の重量のバランスを意識して仕上げたのだ。──流石トゥナ。違いの分かる子だ。
「カナデ君、ありがとね」と、それを抱き抱えて微笑む彼女の姿は、徹夜明けには少々眩しく感じたのだ。
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