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第三章 リベラティオへの旅路
第175話 シンシ
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俺が駆け寄ると、ルームは少年を抱きかえるように起こしていた。
「ルーム、ちょっと待った! 頭を打ってると危険だ、俺がスキルで健康状態を確認するから」
先ほどなで意識が無かった以上、頭を打っているかもしれない。
こんな時は下手に動かさない方が良いだろう。
「せ、せやな」
少年は、まだ意識がハッキリとしていないのだろうか? 目がトロンとしている。──外傷もなく、出血などは見られないけど……。
「鑑定!」
俺の眼が、対象の状態異常をすべて見通す…………はずであったのに。──おかしい。この子の状態異常どころか、ステータスを見ることも出来ない。
「兄さん、どうなんや?」
「す、すまない。鑑定スキルでも分からなかった。こんなこと、今まで無かったんだけど……」
俺が動揺している中、何事もないように起き上がる少年……。
白く、長い前髪で片側の瞳しか見えないが、先程とはとは違いその瞳はしっかりと開かれていた。
「僕なら大丈夫だヨ……ありがとうネ」
意識はしっかりしてるようにも思える。
そんなことを考えていると、ハーモニーが少年に近づいた。
「僕、名前は何ていうのかな~? お姉ちゃんに教えてほしいな」
ハ──ハーモニーが少しだけお姉さんに見える! ……って、それどころじゃないな。
この悲惨な状況の理由を……何とか彼から、聞き出さねば。
「えっと……名前? シンシ……シンシだと思うヨ」
質問は理解してるみたいだけど、自分の名前に思うって……。──嫌な予感がするぞ?
「痛いところはないか? 大丈夫なようなら、村がこうなった切っ掛け……どうしてこんな風になったか、教えてくれないか?」
俺の質問に、自分をシンシと名乗った少年が頭を抱え、必死に考え込む。
「うぅ。ごめんネ……思い出せないヨ。ここは……どこなの?」
まさか、記憶喪失? そんなベタな展開……。
しかし、この子が嘘をついている様にも見えない。
もし嘘をつく必要があるとしたら、この子がこの村を焼いた? こんな子供が、そんな大それた事が出来るとは思えないし。
それにこの規模だと、一人の犯行だとも思えないんだよな……。
「──クシュン!」
シンシがくしゃみをしながら、痩せ細った体を震わせた。
彼の衣類が濡れている……このまま他っておくわけにもいかないだろう。
「ひとまずこの子を連れて、馬車に帰ろう。雨も降っているし、見た感じ、顔色もあまり良くないみたいだ」
自分のカッパを少年にかけ、シンシを抱き抱えた。
その時、彼が背負っている何かが手に触れる。──なんだ? シンシが身に付けている剣……ロングソード? 子供に不釣り合いだろ。
「兄さん、馬車にいかんのかいな?」
「あ、あぁ~悪い、馬車にいこうか」
シンシを連れて、急いで馬車へと戻った。するとギルドと連絡を取り終わったのか、トゥナとティア達が待機をしていた。
「カナデ君……その子は?」
「魔物に襲われてる所を見つけたんだ。トゥナ、この子に着替えを、ハーモニーは何か温かいものを作ってあげてくれ」
俺の指示に、彼女達がすぐさま動きを見せた。
「うちもハーモニーの嬢ちゃんの手伝いするわ、この天気やしな? 嬢ちゃん一人じゃ焚き火も一苦労やろ?」
まったく、うちの女性人は優秀だよ……俺がとやかく言う必要は無さそうだな。
「カナデ様、こちらは伝鳥で知らせを送りました。間もなくつく頃かと。それより、村の状況はどうでしたか?」
一人残ったティアが、淡々と報告を済ませ、俺に質問を問いかけた。──そうか、無事に連絡は出来たようだな。ひとまず最低限の依頼は完了だ。
「報告ありがとうございます。それが不自然なことに、今の少年……シンシ以外に人影も死体も無かったんですよ。そんな大それた事をする魔物って、存在するのですか?」
「いえ、聞いたことがありません……。どちらにしても、私達だけでは手に余るようですね。もう一度、マールギルドに連絡を入れて、応援を呼びたいと思います。内容が内容です。ギルド本部にも」
ティアが知らないのか……魔物の可能性はやはり低そうだな?
彼女の顔を見ると、うつむき考え込む仕草を見せる。
完全にギルド職員としての顔つきだ……彼女に任せれば間違いは無いだろう。
「分かりました。俺はもう一度だけ、村を捜索してきます。一つ、人命救助に役立つスキルを思い出したので。皆はここに居てください」
「分かりました。雨の中大変だと思いますが、よろしくお願いします」
「はい、任せてください」
深く深呼吸をして、最善の答えを探し出す。──俺が第ー第に探し出さないといけない事は……。よし!
「力動眼! 対象、生存者!」
馬車を見ると、透過して中にいる一人の姿が映し出された。──よし、思った通りだ! 対象を指定すれば、物体を透けて見ることが出来るぞ。
「さて──捜索開始するか!」
「ルーム、ちょっと待った! 頭を打ってると危険だ、俺がスキルで健康状態を確認するから」
先ほどなで意識が無かった以上、頭を打っているかもしれない。
こんな時は下手に動かさない方が良いだろう。
「せ、せやな」
少年は、まだ意識がハッキリとしていないのだろうか? 目がトロンとしている。──外傷もなく、出血などは見られないけど……。
「鑑定!」
俺の眼が、対象の状態異常をすべて見通す…………はずであったのに。──おかしい。この子の状態異常どころか、ステータスを見ることも出来ない。
「兄さん、どうなんや?」
「す、すまない。鑑定スキルでも分からなかった。こんなこと、今まで無かったんだけど……」
俺が動揺している中、何事もないように起き上がる少年……。
白く、長い前髪で片側の瞳しか見えないが、先程とはとは違いその瞳はしっかりと開かれていた。
「僕なら大丈夫だヨ……ありがとうネ」
意識はしっかりしてるようにも思える。
そんなことを考えていると、ハーモニーが少年に近づいた。
「僕、名前は何ていうのかな~? お姉ちゃんに教えてほしいな」
ハ──ハーモニーが少しだけお姉さんに見える! ……って、それどころじゃないな。
この悲惨な状況の理由を……何とか彼から、聞き出さねば。
「えっと……名前? シンシ……シンシだと思うヨ」
質問は理解してるみたいだけど、自分の名前に思うって……。──嫌な予感がするぞ?
「痛いところはないか? 大丈夫なようなら、村がこうなった切っ掛け……どうしてこんな風になったか、教えてくれないか?」
俺の質問に、自分をシンシと名乗った少年が頭を抱え、必死に考え込む。
「うぅ。ごめんネ……思い出せないヨ。ここは……どこなの?」
まさか、記憶喪失? そんなベタな展開……。
しかし、この子が嘘をついている様にも見えない。
もし嘘をつく必要があるとしたら、この子がこの村を焼いた? こんな子供が、そんな大それた事が出来るとは思えないし。
それにこの規模だと、一人の犯行だとも思えないんだよな……。
「──クシュン!」
シンシがくしゃみをしながら、痩せ細った体を震わせた。
彼の衣類が濡れている……このまま他っておくわけにもいかないだろう。
「ひとまずこの子を連れて、馬車に帰ろう。雨も降っているし、見た感じ、顔色もあまり良くないみたいだ」
自分のカッパを少年にかけ、シンシを抱き抱えた。
その時、彼が背負っている何かが手に触れる。──なんだ? シンシが身に付けている剣……ロングソード? 子供に不釣り合いだろ。
「兄さん、馬車にいかんのかいな?」
「あ、あぁ~悪い、馬車にいこうか」
シンシを連れて、急いで馬車へと戻った。するとギルドと連絡を取り終わったのか、トゥナとティア達が待機をしていた。
「カナデ君……その子は?」
「魔物に襲われてる所を見つけたんだ。トゥナ、この子に着替えを、ハーモニーは何か温かいものを作ってあげてくれ」
俺の指示に、彼女達がすぐさま動きを見せた。
「うちもハーモニーの嬢ちゃんの手伝いするわ、この天気やしな? 嬢ちゃん一人じゃ焚き火も一苦労やろ?」
まったく、うちの女性人は優秀だよ……俺がとやかく言う必要は無さそうだな。
「カナデ様、こちらは伝鳥で知らせを送りました。間もなくつく頃かと。それより、村の状況はどうでしたか?」
一人残ったティアが、淡々と報告を済ませ、俺に質問を問いかけた。──そうか、無事に連絡は出来たようだな。ひとまず最低限の依頼は完了だ。
「報告ありがとうございます。それが不自然なことに、今の少年……シンシ以外に人影も死体も無かったんですよ。そんな大それた事をする魔物って、存在するのですか?」
「いえ、聞いたことがありません……。どちらにしても、私達だけでは手に余るようですね。もう一度、マールギルドに連絡を入れて、応援を呼びたいと思います。内容が内容です。ギルド本部にも」
ティアが知らないのか……魔物の可能性はやはり低そうだな?
彼女の顔を見ると、うつむき考え込む仕草を見せる。
完全にギルド職員としての顔つきだ……彼女に任せれば間違いは無いだろう。
「分かりました。俺はもう一度だけ、村を捜索してきます。一つ、人命救助に役立つスキルを思い出したので。皆はここに居てください」
「分かりました。雨の中大変だと思いますが、よろしくお願いします」
「はい、任せてください」
深く深呼吸をして、最善の答えを探し出す。──俺が第ー第に探し出さないといけない事は……。よし!
「力動眼! 対象、生存者!」
馬車を見ると、透過して中にいる一人の姿が映し出された。──よし、思った通りだ! 対象を指定すれば、物体を透けて見ることが出来るぞ。
「さて──捜索開始するか!」
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