217 / 469
第三章 リベラティオへの旅路
第205話 追跡者
しおりを挟む
俺の驚きの声に、新刊を手にした男が振り替えり、目があってしまった。──し、しまった……。でも、どちらにしても、あの男に声を掛けて、新刊を返して貰わないといけないのか。
しかしどうだろうか? こちらを見る男の表情はみるみるうちに緩んでいき、非常に気持ち悪い満面の笑みとなったのだ……そして──!
「──ティ~~~アさんじゃないですかぁ~~!」
こ、こいつ……ティアの事を知ってるのか?
隣に立っているティアを見ると、彼女は両手で顔を覆い隠していた。
「ティアさん……アイツ、もしかして知り合いで……」
「──知りません! 私、ティア様じゃありませんから!」
食いぎみだ……。
私、ティアじゃないって……流石にそれは、ちょっと無理があるだろ?
あのティアがここまでの反応を示すとは……アイツ一体何者だ?
非常に気持ち悪い男は、人波を掻き分け俺達の近くに来てティアを覗き込む……。
「ほら、やっぱりティアさんじゃないですか~?」
目の前まで男が来て諦めたのか「あら? どちら様でしたっけ?」と、両手を下ろした。──目が……目が冷たく淀んで!
彼女の対応を見ても分かる。
目の前の男のテンションに反して、ティアは彼を歓迎していないようだ。
「やだな~ティアさん。俺ですよ俺、忘れちゃいましたか?」
それだけ言葉にした男は、左手の指を二本立て目の前に構え、右手は天井に掲げ足を大きく開き、体を若干傾けた……そして──。
「──俺様の名は、追跡者ホ~~ムラ! 大陸をも横断し、貴方に会うために現れた愛に生きる勇者です!」
う、うわ~……ダサいな。
追跡者とは、彼の二つ名なのだろうか?
「前にも再三言いましたが、私を付け回すのはやめて頂きたいのですが? 貴方これで二度目ですよ? 大陸横断してまで着いてくるの……」
…………って、ただのストーカーかよ!?
大陸横断してまでってかなりヤバイ奴だな……しかも二度って。
確かにティアは、黙っていれば顔もいいしスタイルもいい……聡明だし、ギルドでの地位も信頼も厚いかもしれない。
中身を知らなければ、俺も冒険中に冒険した可能性も、大いに考えられる……。
「ティアさん。それでも、このストーカーさん凄い人なんですよね? 二つ名付いているほどですし」
「──だ~れがストーカーだ! 私は愛に生きる男、追跡……」
「──いえ、ただのCランクの冒険者ですよ? ギルドに登録出来る二つ名は、関係者につけられるものと、自己申告でつける方法がありますので」
ティアに言葉を遮られた為か、ちょっと肩を落とすストーカーの男。──こいつ、もしかして自己申告で追跡者って二つ名を? なんて恥ずかしい……。
ストーカーの男に哀れみの目を向けていると、ティアがとんでもないことを口走った。
「カナデ様、他人事のような視線を浴びせてますけど、カナデ様にも立派な二つ名が登録されていますからね?」
「──おい、その事についてもっとしっかり説明してもらおうか!」
なんだよそれ、何も聞いてないぞ? 誰だよ、俺をはめたやつ!
「いえ、エルピスのリーダーが二つ名もないのはどうなのか? っと言う話をメンバー皆様と相談しまして、その結果立派な二つ名をつけさせて頂きました。決して、前笑われた時の仕返しとかじゃありませんよ?」
──発案者はお前か! なんで知らない所でこそこそ動いてるんだよ! もうそれ、嫌がらせだろ?
「ちなみに……どんな名前だよ……」
「最終的に、巷に浸透してたものになりましたね。よくご存じですよね? 鍛冶場荒しのカナデ様」
そいつかい! 言ってもまだ三件だぞ? 三件ぐらい、その辺の冒険者もやって……はいないか?
「貴様! いい加減にしろよ? 俺のティアさんと、な~に仲良く話してんだ!」
お、二つ名の事で、ストーカーを忘れてた……。
コイツは他っておいてもいいけど、手に持ってる物は返して貰わないとな。
「すみません、ストーカーさん。実は、その手に持っているものを返して頂きたいのですが」
「誰がストーカーだよ!」
しまった……怒らせてしまったか? 興奮させては、良い方向に運ばないだろう。しかたない、ここは謙虚に敬意を持って、相手に接しよう。
周囲の視線も集まってきてるしな……。
「すみません、ストーキングキングさん。その本を、返して……」
「──貴様! わざとだろ!」
おかしい……。王様扱いしたら怒ったぞ? まぁ、同じこと言われたら俺も怒るけどな。
ストーキングキングは、手に持っている本を俺に向けた。
「おい、貴様。この本は貴様の物なのか? 俺様のティアさんを汚すような事を描きやがって……。万死に値するぞ!」
そう言いながら本は地面に投げつけられた。
その様子を見たティアは、手で口許を押さえ、顔からは血の気が引いたようにも見えた。
「こんな下品な物……こうしてやる!」
隣からは、ティアの声にならない悲鳴が聞こえた。
大きな声を上げたストーキングキングは、右足を大きく上げ思いっきりティアの新刊に向かい、足を振り下ろしたのだ──!
しかしどうだろうか? こちらを見る男の表情はみるみるうちに緩んでいき、非常に気持ち悪い満面の笑みとなったのだ……そして──!
「──ティ~~~アさんじゃないですかぁ~~!」
こ、こいつ……ティアの事を知ってるのか?
隣に立っているティアを見ると、彼女は両手で顔を覆い隠していた。
「ティアさん……アイツ、もしかして知り合いで……」
「──知りません! 私、ティア様じゃありませんから!」
食いぎみだ……。
私、ティアじゃないって……流石にそれは、ちょっと無理があるだろ?
あのティアがここまでの反応を示すとは……アイツ一体何者だ?
非常に気持ち悪い男は、人波を掻き分け俺達の近くに来てティアを覗き込む……。
「ほら、やっぱりティアさんじゃないですか~?」
目の前まで男が来て諦めたのか「あら? どちら様でしたっけ?」と、両手を下ろした。──目が……目が冷たく淀んで!
彼女の対応を見ても分かる。
目の前の男のテンションに反して、ティアは彼を歓迎していないようだ。
「やだな~ティアさん。俺ですよ俺、忘れちゃいましたか?」
それだけ言葉にした男は、左手の指を二本立て目の前に構え、右手は天井に掲げ足を大きく開き、体を若干傾けた……そして──。
「──俺様の名は、追跡者ホ~~ムラ! 大陸をも横断し、貴方に会うために現れた愛に生きる勇者です!」
う、うわ~……ダサいな。
追跡者とは、彼の二つ名なのだろうか?
「前にも再三言いましたが、私を付け回すのはやめて頂きたいのですが? 貴方これで二度目ですよ? 大陸横断してまで着いてくるの……」
…………って、ただのストーカーかよ!?
大陸横断してまでってかなりヤバイ奴だな……しかも二度って。
確かにティアは、黙っていれば顔もいいしスタイルもいい……聡明だし、ギルドでの地位も信頼も厚いかもしれない。
中身を知らなければ、俺も冒険中に冒険した可能性も、大いに考えられる……。
「ティアさん。それでも、このストーカーさん凄い人なんですよね? 二つ名付いているほどですし」
「──だ~れがストーカーだ! 私は愛に生きる男、追跡……」
「──いえ、ただのCランクの冒険者ですよ? ギルドに登録出来る二つ名は、関係者につけられるものと、自己申告でつける方法がありますので」
ティアに言葉を遮られた為か、ちょっと肩を落とすストーカーの男。──こいつ、もしかして自己申告で追跡者って二つ名を? なんて恥ずかしい……。
ストーカーの男に哀れみの目を向けていると、ティアがとんでもないことを口走った。
「カナデ様、他人事のような視線を浴びせてますけど、カナデ様にも立派な二つ名が登録されていますからね?」
「──おい、その事についてもっとしっかり説明してもらおうか!」
なんだよそれ、何も聞いてないぞ? 誰だよ、俺をはめたやつ!
「いえ、エルピスのリーダーが二つ名もないのはどうなのか? っと言う話をメンバー皆様と相談しまして、その結果立派な二つ名をつけさせて頂きました。決して、前笑われた時の仕返しとかじゃありませんよ?」
──発案者はお前か! なんで知らない所でこそこそ動いてるんだよ! もうそれ、嫌がらせだろ?
「ちなみに……どんな名前だよ……」
「最終的に、巷に浸透してたものになりましたね。よくご存じですよね? 鍛冶場荒しのカナデ様」
そいつかい! 言ってもまだ三件だぞ? 三件ぐらい、その辺の冒険者もやって……はいないか?
「貴様! いい加減にしろよ? 俺のティアさんと、な~に仲良く話してんだ!」
お、二つ名の事で、ストーカーを忘れてた……。
コイツは他っておいてもいいけど、手に持ってる物は返して貰わないとな。
「すみません、ストーカーさん。実は、その手に持っているものを返して頂きたいのですが」
「誰がストーカーだよ!」
しまった……怒らせてしまったか? 興奮させては、良い方向に運ばないだろう。しかたない、ここは謙虚に敬意を持って、相手に接しよう。
周囲の視線も集まってきてるしな……。
「すみません、ストーキングキングさん。その本を、返して……」
「──貴様! わざとだろ!」
おかしい……。王様扱いしたら怒ったぞ? まぁ、同じこと言われたら俺も怒るけどな。
ストーキングキングは、手に持っている本を俺に向けた。
「おい、貴様。この本は貴様の物なのか? 俺様のティアさんを汚すような事を描きやがって……。万死に値するぞ!」
そう言いながら本は地面に投げつけられた。
その様子を見たティアは、手で口許を押さえ、顔からは血の気が引いたようにも見えた。
「こんな下品な物……こうしてやる!」
隣からは、ティアの声にならない悲鳴が聞こえた。
大きな声を上げたストーキングキングは、右足を大きく上げ思いっきりティアの新刊に向かい、足を振り下ろしたのだ──!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる