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第三章 リベラティオへの旅路
第223話 勇者を知る者
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「ほ、本当にカナデさんが……勇者様のお孫さんなのですか~?」
にわかには信じがたいが、判断材料が揃っている……状況的に考えると否定しがたいな。
しかし俺は、そんな事じいちゃんからは一言も聞いていないぞ? それに──。
「──やっぱり何かの間違いじゃないか? 二百年前だぞ……。世代的にも合わないだろ」
時間の流れが違うとかのお約束か?
それに皆が勇者の事を知っている程有名なのに、謎に包まれ過ぎている……。おかしいだろ?
キサラギさんが嘘を言ってるとは思えないが、他に誰か勇者の事を知ってる人に話が聞ければ、証明になるんだが……。
「──そうだ、ミコ! お前もじいちゃんを、響を知ってるのか?」
完全に忘れてたよ!
魔王勇者と共に倒してるんだ、知らないわけが無いじゃないか!
「──なに! あの精霊もおるのか!?」
俺達の声を聞き、ミコがマジックバックから顔を覗かせた。
「ぬしがあの、魔王を打ち取ったとういう聖剣の武器精霊か! わっちはぬしが生まれる前、響の身辺の世話をしておったキサラギじゃ。以後、よろしく頼む」
「初めましてカナ。キサラっちの事は、響から沢山聞いてたシ。あいつの料理が恋しいって、ずっと言ってたモン」
話を聞くと、どうやら二人に直接の面識は無いのか。
それでもお互いを全く知らない訳じゃないみたいだ。
俺がミコを見ると、彼女と視線があった。
「ご、ごめんカナ。カナデと会ったときに、何処かで聞いた事ある名前だと思ったけど、その時は思い出せなかったカナ……」
そう言えば、俺のフルネームを言った時に何やら言いづらそうにして……。
あれは言いづらかったんじゃなくて“帯刀”の名を聞いたことがあったからなのか!?
「カナデ間違いないカナ、ボクと魔王を打ち倒した勇者の名前は……帯刀 響だシ」
……どうやら間違い無いようだ。
地球にも帯刀響なんて名前、そうそういるものじゃない。
じゃぁじいちゃんは、何故俺に秘密にしていたんだよ!?
「ぬしは、本当に何も聞かされておらぬのだな……」
肩を落とす俺を心配するかのように、キサラギさんが俺の頭を撫でる。
「あやつも自分の孫が召喚されるなど、考えてもせんかったのじゃろう。口数も少ない奴じゃ、わっちの知り得る事で良いなら話すぞ?」
キサラギさんに聞けば、俺のじいちゃんの話を知れる?
ミコは普段から寝てばかりだし、彼女しか知らないじいちゃんの話が聞けるかもしれない……。
──でも!
「キサラギさん──それよりあなたに聞きたいことがある!!」
じいちゃんの話しは聞きたい。お互いに語り合い、情報を共有したい!
でも……いつの間にか、俺にはもっと大事なものが出来てしまったんだ。
薄情な孫でごめんな……じいちゃん。
「──くくっ。己の爺様が勇者やも知れんと言うに、それよりとな!」
俯くようにキサラギさんは呟くと、手で口許を隠した。──い、言い方が悪かっただろうか? 怒こらせたかな……。
「くぅ──良い、良いぞ! さすがはあやつの血筋じゃ! そんな所もよう似ておる。聞いてやるから言うてみろ!」
なにがご満悦なのだろうか? 俺は面と向かった彼女に、両肩をバシバシと叩かれた。──痛い……けっこう痛いから。
俺は咳払いの後、キサラギさんを見つめ心からのお願いをのべた。
「大切な人が大変なんだ。キサラギさん、頼むよ! エルクシルの事を知っていたら何でもいい、教えてくれないか!?」
「──エルクシル? 何故、ぬしがその名を……そうか、ハーモニーじゃな?」
そうだよな? 伝説とも言われる秘宝。
もしエルフが隠してたのなら、情報を漏らしたハーモニー心象が悪くなるか?
そこまでは想定していなかった……しまったな。
「キサラギ様申し訳ありません! で、でもどうしても助けたい人が居るのです~!」
ハーモニーも悪いとは思っているのだろう、顔を見れば分かる。
しかし、俺達は一歩も引くことは出来ないんだ。
「……ふむ。ぬしらにも事情がある事は分かった。一度話してみると良い。わっちも話を聞いた上で、考えさせてもらう」
俺達は、キサラギに必死に説明した。
病状、トゥナの境遇、俺達の気持ち……それらを全て、捲し立てる様に、思い付く事すべてを彼女に話した。
「──なるほど。ハーフのキメラとはまた厄介な。しかしそれは、病と言うより呪いと言ってもよい……確かに、そのままでは長くは無い事は事実じゃな」
彼女の発言に、俺とハーモニーは顔を伏せてしまう。
やっぱりトゥナのあの症状は、命に関わるものなのか……っと。
「結論から言わせてもらおう。それであれば、エルクシルで完治することはできるじゃろう。あれはその手の呪いにも効果はある」
「「ほ、ほんとうですか!」」
良かった……これで、一握りかもしれないが希望が見えてきたぞ!
「──しかしすまぬが、ぬしらに渡すことは出来んのじゃ」
にわかには信じがたいが、判断材料が揃っている……状況的に考えると否定しがたいな。
しかし俺は、そんな事じいちゃんからは一言も聞いていないぞ? それに──。
「──やっぱり何かの間違いじゃないか? 二百年前だぞ……。世代的にも合わないだろ」
時間の流れが違うとかのお約束か?
それに皆が勇者の事を知っている程有名なのに、謎に包まれ過ぎている……。おかしいだろ?
キサラギさんが嘘を言ってるとは思えないが、他に誰か勇者の事を知ってる人に話が聞ければ、証明になるんだが……。
「──そうだ、ミコ! お前もじいちゃんを、響を知ってるのか?」
完全に忘れてたよ!
魔王勇者と共に倒してるんだ、知らないわけが無いじゃないか!
「──なに! あの精霊もおるのか!?」
俺達の声を聞き、ミコがマジックバックから顔を覗かせた。
「ぬしがあの、魔王を打ち取ったとういう聖剣の武器精霊か! わっちはぬしが生まれる前、響の身辺の世話をしておったキサラギじゃ。以後、よろしく頼む」
「初めましてカナ。キサラっちの事は、響から沢山聞いてたシ。あいつの料理が恋しいって、ずっと言ってたモン」
話を聞くと、どうやら二人に直接の面識は無いのか。
それでもお互いを全く知らない訳じゃないみたいだ。
俺がミコを見ると、彼女と視線があった。
「ご、ごめんカナ。カナデと会ったときに、何処かで聞いた事ある名前だと思ったけど、その時は思い出せなかったカナ……」
そう言えば、俺のフルネームを言った時に何やら言いづらそうにして……。
あれは言いづらかったんじゃなくて“帯刀”の名を聞いたことがあったからなのか!?
「カナデ間違いないカナ、ボクと魔王を打ち倒した勇者の名前は……帯刀 響だシ」
……どうやら間違い無いようだ。
地球にも帯刀響なんて名前、そうそういるものじゃない。
じゃぁじいちゃんは、何故俺に秘密にしていたんだよ!?
「ぬしは、本当に何も聞かされておらぬのだな……」
肩を落とす俺を心配するかのように、キサラギさんが俺の頭を撫でる。
「あやつも自分の孫が召喚されるなど、考えてもせんかったのじゃろう。口数も少ない奴じゃ、わっちの知り得る事で良いなら話すぞ?」
キサラギさんに聞けば、俺のじいちゃんの話を知れる?
ミコは普段から寝てばかりだし、彼女しか知らないじいちゃんの話が聞けるかもしれない……。
──でも!
「キサラギさん──それよりあなたに聞きたいことがある!!」
じいちゃんの話しは聞きたい。お互いに語り合い、情報を共有したい!
でも……いつの間にか、俺にはもっと大事なものが出来てしまったんだ。
薄情な孫でごめんな……じいちゃん。
「──くくっ。己の爺様が勇者やも知れんと言うに、それよりとな!」
俯くようにキサラギさんは呟くと、手で口許を隠した。──い、言い方が悪かっただろうか? 怒こらせたかな……。
「くぅ──良い、良いぞ! さすがはあやつの血筋じゃ! そんな所もよう似ておる。聞いてやるから言うてみろ!」
なにがご満悦なのだろうか? 俺は面と向かった彼女に、両肩をバシバシと叩かれた。──痛い……けっこう痛いから。
俺は咳払いの後、キサラギさんを見つめ心からのお願いをのべた。
「大切な人が大変なんだ。キサラギさん、頼むよ! エルクシルの事を知っていたら何でもいい、教えてくれないか!?」
「──エルクシル? 何故、ぬしがその名を……そうか、ハーモニーじゃな?」
そうだよな? 伝説とも言われる秘宝。
もしエルフが隠してたのなら、情報を漏らしたハーモニー心象が悪くなるか?
そこまでは想定していなかった……しまったな。
「キサラギ様申し訳ありません! で、でもどうしても助けたい人が居るのです~!」
ハーモニーも悪いとは思っているのだろう、顔を見れば分かる。
しかし、俺達は一歩も引くことは出来ないんだ。
「……ふむ。ぬしらにも事情がある事は分かった。一度話してみると良い。わっちも話を聞いた上で、考えさせてもらう」
俺達は、キサラギに必死に説明した。
病状、トゥナの境遇、俺達の気持ち……それらを全て、捲し立てる様に、思い付く事すべてを彼女に話した。
「──なるほど。ハーフのキメラとはまた厄介な。しかしそれは、病と言うより呪いと言ってもよい……確かに、そのままでは長くは無い事は事実じゃな」
彼女の発言に、俺とハーモニーは顔を伏せてしまう。
やっぱりトゥナのあの症状は、命に関わるものなのか……っと。
「結論から言わせてもらおう。それであれば、エルクシルで完治することはできるじゃろう。あれはその手の呪いにも効果はある」
「「ほ、ほんとうですか!」」
良かった……これで、一握りかもしれないが希望が見えてきたぞ!
「──しかしすまぬが、ぬしらに渡すことは出来んのじゃ」
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