異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル

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第四章 新天地

第377話 迎え

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 リベラティオに到着し、早速馬車で前回と同じ、城への入口へ向かった。

 入口の門番に事情を説明して、中へと入れてもらおうとしたのだが……。

「──中に……入れてもらえない?」

「申し訳ないが、現在リベラティオは第三警戒態勢が発令されております。そのため、城内は関係者以外の立ち入りを禁止されております」

 警戒体制って……もしかしてグローリアの影響か!

「そんな……誰でもいいから上に掛け合ってくれ! そうだ、ソインさんなら!?」

「駄目です、お繋ぎする事は出来ません」

「くっ……」

 何度も繰り返し交渉に望むものの、良い返事を頂くことは出来なかった。

 当然兵士の彼も、自分の責務があるのだろう。
 警戒体制中に、誰とも分からない輩の話を鵜呑みになどしないか……。

 ──こうなったら!

「この髪を見て分かりませんか? 勇者の孫が来たと言えば……!」

「──カナデさん!! ……ここは一度引くべきです。連絡なら、ティアさんを経由すれば行えるのでは無いですか~?」

「あ、あぁ……そうだな……」

 こんな都合の良いときだけ、じいちゃんの名前を出すのは確かに粋じゃない。
 ハーモニーが止めなければ、口に出していたな。

 なに、地盤が固まっているんだ……焦ることなど無いじゃないか。

 門番に背を向け、俺は馬車に乗り込みその場を立ち去ろうとした。
 しかしその時、重い扉が音を立て開いたのだ。

 そして──。

「お待ち下さい、カナデ様」

 っと、俺の名前を呼ぶ声がした。

「あなたは……どこかで?」

 門から顔を覗かせた女性には、見覚えがあった。
 メイド服に見を包み、凛とした立ち振る舞い……。確か、彼女は──。

「私は、フォルテア様の侍女です。我が主から、貴方を呼ぶように仰せつかりました」

「フォルテア様って……」

 そうだ、出した。

 彼女はパーティー会場で、トゥナのお母さんの車椅子を押していた女性だ。
 
「分かりました。ハーモニーは馬車を頼む。ルーム、ついて来てくれ」

「──いえ、今回フォルテア様が御呼びになったのはカナデ様だけです。他の方々には大変申し訳ありませんが、こちらで御待ち下さい」

 俺だけ? 一人は緊張するが、まぁいいか。中に入れるなそれで……。

「すまないが、俺しか立ち入り出来ないらしい。皆待っててくれ」

「分かりました~……交渉、頑張って下さい」

 俺は「任せろ!」っと右手を上げ、門の中へと足を踏み入れた。

「どうぞ、こちらです」

 俺は侍女の女性に案内され、後へと着いて行く──。
 
 緑のトンネルを抜け、庭園へと足を踏み入れる。
 周りを見渡しても随分と人が少ないような………。

 それは気のせいでは無いのかもしれない。
 場内に入り、目的の部屋に向かうまで結局ほとんど人に会わず終いだった。
 


「──フォルテア様、御客人を連れしました」

 四度のノックの後、侍女が部屋の扉に向かい声をかける。
 すると直ぐ「どうぞ」っと、か細い声が聞こえた。

 室内からの返事の後、侍女により部屋の扉が開かれる。
 大きな一室。そのテラスには、トゥナによく似た女性が、車椅子の上からこちらに微笑みかけていた。

 俺はそんなトゥナのお母さんに歩み寄る。

「お久しぶりですね、カナデ君。貴方が顔を見せてくれるのを、待ちわびてました」

 しかしその言葉とは裏腹に、彼女の表情は雲って見える。
 それだけじゃない……。よく見ると、前より随分と痩せて見えた。

「ご無沙汰しております。その……お義母さん──」
 


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