異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル

文字の大きさ
402 / 469
第四章 新天地

第387話 懐かしの面々2

しおりを挟む
「いやぁー、戦友ともの登場で完全に忘れていたな」

 豪快に笑い声を上げる船長。
 ここまではっきり忘れていたと豪語すると、潔くすら感じる。

「私達の船からは救助出ているようだ。護衛する身で助力をこうのはおかしいかも知れぬが、貴殿にも協力を願いたい……」

「何を言っている御嬢さん。是非任せてもらおう」

 その話を聞いて、何を思ったのか。

「あら? それなら家のウサギちゃん達も連れていって、助けになるはずよ」っと、おやびんから提案がなされる。

「そうか、では協力を頼もう!」

 腕組みをしながら船長はニッコリと白い歯を見せた。
 とんとん拍子に話が進むと、救助の準備だろう、乗組員達に指示を出しながら、船長は何処かに歩いて行った。

 そして俺は、おやびんの言うウサギちゃん達が気になり、それについて聞き返す事に。

「ウサギちゃんって、もしかしてウサーズ達も居るのか──って事は、孤児院の皆も!?」

「えぇ、クルム村から逃げてきた子達が、いち早く危険を教えてくれたの。だから私達含め、フィーデスの女子供の大半は、無事に逃げ出せたはずよ」

 クルム村から? まぁどちらにせよ、孤児院の皆が無事で良かった。
 ハーモニーもきっと喜んで……。

「ただ聖母様だけは、自分の意思で町に残ったわ。戦場で傷つく人の手当てや、食事ぐらいなら作れるって……」

「──なっ!? そんな……なんて伝えれば良いんだ……」

 母親のように慕っていた彼女の安否がわからない……。
 連絡できるはずがない──そんなの落ち込ませるに決まってるだろ?

「ごめんなさいね、カナデちゃん。本来は私達も残るべきだったんだけど『何かあったときに、子供達は誰が守るのですか?』って、マザーにどやされちゃって……」

 そうか……。
 人の良い、あの人らしいって言えば、あの人らしいけど。
 そうだ、ククルカンに頼んでフィーデスの上も飛んでもらおう。
 状況次第で安否の確認もできるかもしれない。

 それにトゥナが、困ってる人を見捨てるはずがない。知り合いならなおさらだろう。
 だからこそ、上手く行けばフィーデスにいる可能性も……。

「そういえば、クルムの子供の中にファーマって子は居なかったか?」

「確か……居た気がしたわね。お父さんを助けに行くって、ギルドで暴れていた子供、その子がそんな名前だと思ったわ」

 そうか、ってことはファーマは無事と見て良いだろう。でも──。

「ところでさっき、女子供って言ったけど、他の大人達はどうしたんだ……? 皆が皆、魔物と渡り合える訳じゃないだろ」

 おやびんは目を伏せ、首を横に振った。

「残念だけど、馬車にも限りがあるの。矢面に立つのはギルドや冒険者だとは思うけど、逃げ切れないのが分かっている以上、戦わない訳にはいかないと思うわ」

 その話を聞き、召喚されたての頃を思い出した。
 理不尽で自由はなく、生きるためには必死に何かに抗い続けねばならない……甘えの許されないそんな日々を。
 
 俺がそんな事を考えていると、何かが着水する音と共に、あいつの騒がしい声が聞こえた──。
 
「大船に乗ったつもりで、俺達に任せるッスよ! ウサーズ出陣っス」

 この声は……もしかしてシータか?
 
 きっと、救助の船が出たのだろう。
 しかし、あいつの声が聞こえるだけで、不思議と不安にさせられる。
 今となっては、ウサーズが特定の何かに秀でていることは理解してはいるのだが……。
 俺は、泥舟にならないことを切に願うのであった。


しおりを挟む
感想 439

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

処理中です...