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第四章 新天地
398話 防衛網の先に
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「目的地まで私が手綱を握ります。お客様は私に捕まって頂ければ……」
「そんなの危険すぎますよ、道中には魔物もいて、その先には何があるか」
そう、危険すぎる。世界が恐怖する存在、魔王が待ち構えているはずなのだから。
「前に、ファーマを助けて頂いた彼女を助けに行かれるのですよね? でしたら尚更、私にも行かせてください。あの時のお詫び……この機会を逃したら出来そうにありませんから」
そうか、この人はあの時の事を気にして……。
だからと言って、流石に連れて行ってもらう訳には──。
「お願いします、送らせてください! 息子の憧れである貴方達に協力出来をしたいのです。それに、怯えて手をこまねいているだけでは、カドモス様にも顔向けができません……」
彼は悔しそうに、今は亡きカドモスさんを見つめる。
血が滲む程強く握られた手からは、強い意思が見てとれた。
「……言っても聞いてくれそうにないですね? 分かりました、お願いします。でも、何かあったら俺を下ろして直ぐに逃げてください。貴方が居ないと、ファーマが悲しみます」
息子の名前を出すと彼は何処か遠い目をし、手の力は緩む。
血が繋がっていないとは言え親子と言う事だ、心配なのだろう。
「……ファーマ、あの子が無事だといいのですが」
やっぱり……。
「大丈夫ですよ、来る途中で大陸外に脱出つしたと聞いてます。きっと無事ですよ」
「──そうですか! よかった……本当に無事でよかった」
どうやら安心させることが出来たらしい。
俺もいい加減、トゥナを助けないとな……皆が首を長くして待ってる!
「では、行きましょうか。後、今は客じゃ無いのでカナデって読んでもらえば」
「はい、行きましょうカナデさん!」
俺達は聖母様に挨拶を済ませ、馬のいる厩舎へと向かった──。
◇ ◇
「──カナデさん乗れましたか? では、しっかり捕まって下さい」
「はい、それではお願いします」
ムチを打つ音と共に、俺達がまたがった馬は甲高い声を上げ教会の庭を駆け出した。
人が見当たらない中央の通りを抜け、真っ直ぐと出口に向かい突っ走る。
「──そりゃさっきの今だ、まだ塞がれてるよな……」
今だ、出入り口では生きる為の攻防が繰り広げている。
通り道の魔物だけでも蹴散らさねば、外に出ることも叶わない……。
ここで魔力を使うのは勿体ない気もするが今は急ぎ。仕方がない、後の事は未来の俺に考えさせようか──!
「ミコ、行くぞ! 逆丁子を使う!」
『分かったカナ! とびっきり大きなのをおみまいすシ‼』
いや、あまり大きいのは止めてくれ。灯心の中でも、コイツは格段に燃費が悪い……。
収束して刃の様に放つ直線範囲、高威力の直刃。
それに対し威力は落ちてしまうものの、さらに広範囲で複数の相手に放つ──それが逆丁子だ。
「馬が通る──道を開けてくれ!!」
俺は大声で、マーカス率いる防衛組に大声で指示を出した。
「勇者様が通るぞ、道を作れ!!」
盾をもった騎士を最前線に、皆がスクラムを組む様に通路を押し広げていく。
なんとあれだけ巨大な魔物相手達に、強引にだ‼
「今だ──灯心、逆丁子!!」
彼等の奮起により、出入り口に馬が通れるほどの隙間が出来る。
鞘から抜かれ、前方に向けられた無銘から幅の狭い扇状に光が放たれた──。
光は複数の魔物を包み、飲み込まれた魔物は体を焦がし、目を押さえ悶絶する。
「このまま突破を──!」
俺達を乗せた馬は防衛網の先に進み、のたうち回る魔物達の間を抜け、フィーデスの外へと走り去っていくのだった……。
「そんなの危険すぎますよ、道中には魔物もいて、その先には何があるか」
そう、危険すぎる。世界が恐怖する存在、魔王が待ち構えているはずなのだから。
「前に、ファーマを助けて頂いた彼女を助けに行かれるのですよね? でしたら尚更、私にも行かせてください。あの時のお詫び……この機会を逃したら出来そうにありませんから」
そうか、この人はあの時の事を気にして……。
だからと言って、流石に連れて行ってもらう訳には──。
「お願いします、送らせてください! 息子の憧れである貴方達に協力出来をしたいのです。それに、怯えて手をこまねいているだけでは、カドモス様にも顔向けができません……」
彼は悔しそうに、今は亡きカドモスさんを見つめる。
血が滲む程強く握られた手からは、強い意思が見てとれた。
「……言っても聞いてくれそうにないですね? 分かりました、お願いします。でも、何かあったら俺を下ろして直ぐに逃げてください。貴方が居ないと、ファーマが悲しみます」
息子の名前を出すと彼は何処か遠い目をし、手の力は緩む。
血が繋がっていないとは言え親子と言う事だ、心配なのだろう。
「……ファーマ、あの子が無事だといいのですが」
やっぱり……。
「大丈夫ですよ、来る途中で大陸外に脱出つしたと聞いてます。きっと無事ですよ」
「──そうですか! よかった……本当に無事でよかった」
どうやら安心させることが出来たらしい。
俺もいい加減、トゥナを助けないとな……皆が首を長くして待ってる!
「では、行きましょうか。後、今は客じゃ無いのでカナデって読んでもらえば」
「はい、行きましょうカナデさん!」
俺達は聖母様に挨拶を済ませ、馬のいる厩舎へと向かった──。
◇ ◇
「──カナデさん乗れましたか? では、しっかり捕まって下さい」
「はい、それではお願いします」
ムチを打つ音と共に、俺達がまたがった馬は甲高い声を上げ教会の庭を駆け出した。
人が見当たらない中央の通りを抜け、真っ直ぐと出口に向かい突っ走る。
「──そりゃさっきの今だ、まだ塞がれてるよな……」
今だ、出入り口では生きる為の攻防が繰り広げている。
通り道の魔物だけでも蹴散らさねば、外に出ることも叶わない……。
ここで魔力を使うのは勿体ない気もするが今は急ぎ。仕方がない、後の事は未来の俺に考えさせようか──!
「ミコ、行くぞ! 逆丁子を使う!」
『分かったカナ! とびっきり大きなのをおみまいすシ‼』
いや、あまり大きいのは止めてくれ。灯心の中でも、コイツは格段に燃費が悪い……。
収束して刃の様に放つ直線範囲、高威力の直刃。
それに対し威力は落ちてしまうものの、さらに広範囲で複数の相手に放つ──それが逆丁子だ。
「馬が通る──道を開けてくれ!!」
俺は大声で、マーカス率いる防衛組に大声で指示を出した。
「勇者様が通るぞ、道を作れ!!」
盾をもった騎士を最前線に、皆がスクラムを組む様に通路を押し広げていく。
なんとあれだけ巨大な魔物相手達に、強引にだ‼
「今だ──灯心、逆丁子!!」
彼等の奮起により、出入り口に馬が通れるほどの隙間が出来る。
鞘から抜かれ、前方に向けられた無銘から幅の狭い扇状に光が放たれた──。
光は複数の魔物を包み、飲み込まれた魔物は体を焦がし、目を押さえ悶絶する。
「このまま突破を──!」
俺達を乗せた馬は防衛網の先に進み、のたうち回る魔物達の間を抜け、フィーデスの外へと走り去っていくのだった……。
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