4 / 46
第3話 アーセナル
しおりを挟む
「──すまないが、少し時間を頂けないだろうか?」
俺は目の前を歩く二人に声を掛けた。
今回のダンジョン遠征は予定外のことだったので、足りないものを思い出したのだ。
「なんだオッサン。ダンジョンに入る前に怖じ気づいたのか?」
「いやそうではない、今回の話が突然でな? 俺はダンジョンに潜る準備を終えてないんだよ」
自分の持ち物であるハンドバックを見せつける。
何があってもいいように、最低限の荷物は持ち運んでいる……。しかし、ダンジョンに潜る上では──最小限では足りない。
油断や満身は、死へと直結しかねないからな。
「食料も日帰り程度しか携帯していない。このままだと足手まといになる自信もある」
そんな言葉に【ロキ】と呼ばれた坊主は、苦虫を噛み潰したような表情を向けてきた。
それを見て隣の“祈る者”の少女が「ロキさん、落ち着いて下さい」と、なだめているようだ。
先ほどサクラと話していたことが余程気に入らなかったのか? ギルドに居たときよりも態度に棘がある気がする。
「チッ……さっさと準備しろよ」
「あぁ、もちろんそのつもりだ。俺の家はそれだ、立ち寄らせてもらうぞ」
第三の箱庭に続くとされているダンジョンの、比較的近くにある建物を指差した。
入り口備え付けられている看板には、剣と盾の模様が描かれている。
「マサムネさんは、武器屋さんなんですかぁ」
「まぁな、なんなら時間潰しに覗いてもらっても構わない。必要なものが見つかれば、買ってもらってもいいぞ?」
ただし、武器は安いものではないがな?
ダンジョンから取れる素材は“戦う者”と“祈る者”が、主に採取してギルドに卸す。
その為、材料の値段は彼等が掌握していると言っても過言ではない。
ギルドもそれには随分手を焼いているようだが、解決には至ってはいないようだ。
材料が高ければ、それを使って作ったものも値上がる。それが道理だろ?
「少し待っていてくれ」
彼等の荷物をテーブルに置き、俺は移動した。
関係者のみ入ることを許された隣の部屋……。
扉を開くと、硝子のケースに飾られた、黒ずみ……折れた大剣、それが異彩を放っている。
しかし、それに負けない存在感のものがその隣にはあった。
そこには人が扱うには不釣り合いな程の、巨大なリュックタイプのバックが置かれていた。
そしてその外観には、無数の剣や短剣。二枚の盾までくくりつけてある。
「……久しいな、またこれを背負うことになるとは。世話になる、『武器庫』!」
その、人が背負う事を想定されていないようなバックを担いだ。それなのに、不思議と肩に馴染む……。
長年連れ添った相棒と共に、元の部屋へと戻った。
「待たせたな?」
「おいおい! なんだよその──バカでかいバックは!」
どうやら俺が背負っているバックを指しているようだ。
アーセナルを床に置き、先程の荷物をひとまとめに詰めていく。
これで持ちやすく……歩きやすい。
「君達は優秀なんだろ? これぐらいの大きさでも無いと、素材が回収しきれないと思ってな」
っと、言うのは建前だ。本音を言うと、若い彼等を信じていないだけだ。
何れだけ強かろうが彼等は若い。圧倒的に経験が足りない……それが危機に陥るきっかけになることを、俺は知っている。
しかしアーセナルがあれば、有事の際にもよっぽど対応する事が出来るからな。これはその為の──装備だ。
「……流石“作る者”だな? この金の亡者め!」
「……誉め言葉と受け取っておこう」
しかし素直に話しても、彼等は自身の未熟を認めないだろうな。
めんどくさいのでそう言うことにしておこう。
「着いてこれなければ、例えダンジョンの中だろうと置いていくからな?」
「君らの荷物を持ってるのは俺だけどな? それでもいいのなら、勝手にしてくれ」
俺の態度が気に食わなかったのだろう、坊主は乱暴にドアを開け外へと出ていった。それを追うように、少女二人も……。
自分から挑発をしておいて……やはりまだまだ若いな。
三人の後をついて外に出た俺は『しばらく休業しますと』と、入り口のドアに張り紙を残したのだった。
俺は目の前を歩く二人に声を掛けた。
今回のダンジョン遠征は予定外のことだったので、足りないものを思い出したのだ。
「なんだオッサン。ダンジョンに入る前に怖じ気づいたのか?」
「いやそうではない、今回の話が突然でな? 俺はダンジョンに潜る準備を終えてないんだよ」
自分の持ち物であるハンドバックを見せつける。
何があってもいいように、最低限の荷物は持ち運んでいる……。しかし、ダンジョンに潜る上では──最小限では足りない。
油断や満身は、死へと直結しかねないからな。
「食料も日帰り程度しか携帯していない。このままだと足手まといになる自信もある」
そんな言葉に【ロキ】と呼ばれた坊主は、苦虫を噛み潰したような表情を向けてきた。
それを見て隣の“祈る者”の少女が「ロキさん、落ち着いて下さい」と、なだめているようだ。
先ほどサクラと話していたことが余程気に入らなかったのか? ギルドに居たときよりも態度に棘がある気がする。
「チッ……さっさと準備しろよ」
「あぁ、もちろんそのつもりだ。俺の家はそれだ、立ち寄らせてもらうぞ」
第三の箱庭に続くとされているダンジョンの、比較的近くにある建物を指差した。
入り口備え付けられている看板には、剣と盾の模様が描かれている。
「マサムネさんは、武器屋さんなんですかぁ」
「まぁな、なんなら時間潰しに覗いてもらっても構わない。必要なものが見つかれば、買ってもらってもいいぞ?」
ただし、武器は安いものではないがな?
ダンジョンから取れる素材は“戦う者”と“祈る者”が、主に採取してギルドに卸す。
その為、材料の値段は彼等が掌握していると言っても過言ではない。
ギルドもそれには随分手を焼いているようだが、解決には至ってはいないようだ。
材料が高ければ、それを使って作ったものも値上がる。それが道理だろ?
「少し待っていてくれ」
彼等の荷物をテーブルに置き、俺は移動した。
関係者のみ入ることを許された隣の部屋……。
扉を開くと、硝子のケースに飾られた、黒ずみ……折れた大剣、それが異彩を放っている。
しかし、それに負けない存在感のものがその隣にはあった。
そこには人が扱うには不釣り合いな程の、巨大なリュックタイプのバックが置かれていた。
そしてその外観には、無数の剣や短剣。二枚の盾までくくりつけてある。
「……久しいな、またこれを背負うことになるとは。世話になる、『武器庫』!」
その、人が背負う事を想定されていないようなバックを担いだ。それなのに、不思議と肩に馴染む……。
長年連れ添った相棒と共に、元の部屋へと戻った。
「待たせたな?」
「おいおい! なんだよその──バカでかいバックは!」
どうやら俺が背負っているバックを指しているようだ。
アーセナルを床に置き、先程の荷物をひとまとめに詰めていく。
これで持ちやすく……歩きやすい。
「君達は優秀なんだろ? これぐらいの大きさでも無いと、素材が回収しきれないと思ってな」
っと、言うのは建前だ。本音を言うと、若い彼等を信じていないだけだ。
何れだけ強かろうが彼等は若い。圧倒的に経験が足りない……それが危機に陥るきっかけになることを、俺は知っている。
しかしアーセナルがあれば、有事の際にもよっぽど対応する事が出来るからな。これはその為の──装備だ。
「……流石“作る者”だな? この金の亡者め!」
「……誉め言葉と受け取っておこう」
しかし素直に話しても、彼等は自身の未熟を認めないだろうな。
めんどくさいのでそう言うことにしておこう。
「着いてこれなければ、例えダンジョンの中だろうと置いていくからな?」
「君らの荷物を持ってるのは俺だけどな? それでもいいのなら、勝手にしてくれ」
俺の態度が気に食わなかったのだろう、坊主は乱暴にドアを開け外へと出ていった。それを追うように、少女二人も……。
自分から挑発をしておいて……やはりまだまだ若いな。
三人の後をついて外に出た俺は『しばらく休業しますと』と、入り口のドアに張り紙を残したのだった。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。
あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。
才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった
雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。
天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。
だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。
鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。
一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。
朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。
悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。
目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる