魔剣が作れるおっさんは、今日も魔力が帯びた剣を生み出したがらない。

リゥル

文字の大きさ
8 / 46

第7話 扉

しおりを挟む
休息と準備を終えた俺達は、早速第二層を目指し動き始めた。

「こ、これはまた、とてつもなくデカイな!」

 しばらく進むと、今までに無いほどの広さの部屋に行き着いた。
 すると先頭を歩く坊主から、驚きの声が上がったのだ。
 彼の目の前には、金属製の巨大な扉が俺達の道を塞いでいた。

「鍵がついてる……行き止まりなの?」

 確かに、扉があろうと鍵が掛かっていれば、行き止まりには違いない。
 俺は、施錠の確認の為に扉を押そうとする、そんなサクラの疑問に答えることにした。

「いや、扉があるんだ。鍵が掛かっていても、それを開ければ済むだけさ。……少年、預かっているよな?」

 坊主の顔を見つめると、ハッとした顔を見せた。
 予想が正しければ、彼はヨハネからこの先に進むための鍵を、預かっている筈だ。

「あ、あぁ。貴様に言われなくても、すぐ開けるさ!」

 坊主は、何処からともなく鍵を取り出し、目の前にある扉の解錠作業を始めた。
 “祈る者”少女も、何やら坊主の隣でその作業を興味深そうに見ている。
 
「なんでロキ君が鍵を? そもそも、こんな所にどうして扉が……」
「鍵を預けたのはヨハネだろう。この扉は、ギルドが一層と二層を隔てるために取り付けた物だな」

 もとより、この先へ進ませる気がないなら、始めから引率など頼まないだろう。鍵を渡していることは容易に想像がつく。
 それより問題は、この先俺の知識がどれ程通用するか……。

「でも……なんでそんな事を? こんな厳重な扉、始めてみたわ」

 鍵穴は、全部で三つ。しかも三ヶ所とも違う鍵だ。確かに端から見ても厳重過ぎる。
 ただ、それを疑問に思える、サクラの感覚は中々の才能だ。彼女が常日頃物事を考え、それを吸収している事が良く分かる。

「簡単な話だ、下層の魔物の方が強いからな。そんな奴らが上がってきたら、一層ここでの資源回収が難しくなるだろ?」

 サクラが、その大きな眼を丸くして驚きながらも、その後すぐ真剣な顔で俺を見つめた。

「あなた、本当は一体何者なんですか。ダンジョンここについて、あまりにも色々詳しすぎる……」
「前にも言ったが、ただの“作る者”さ。それより扉が空いたみたいだ」

 最後の鍵が、ガチャリと音を立てた。後はこの扉に力を加えるだけだ。

「マサムネさんは……とても隠し事が多そうね? 正直、貴方に興味がつきないわ」
「ん、なんだ。もしかして、俺は口説かれているのか?」

 この前の仕返し……でもないけどな。ただ、それなりに効果はあったらしい。
 サクラは「し、してやられたわ……」と、可愛らしく頬を膨らましている。

 その表情は、いたって普通の少女だ。血生臭い戦闘を行っているなんて、到底信じられないな……。

「──おい、オッサン! あんたが開けろ、そんなデカイ物を背負ってるんだ。扉を開けるぐらいの力はあるんだろ!?」 

 坊主聞き耳を立てていたのだろう。またもやご機嫌が悪いようだ。

「あぁ、わかった。仕事をくれてありがとう──

 リーダーと呼ばれ、一瞬表情が緩む坊主。皮肉のつもりだったんだがな……。

「チッ……分かればいいんだ、早く開けろ」っと、いくらか満更でもない様子だ。
 
 俺が扉を押すと、両開きの扉が金属の擦れる音と共に、ゆっくりと開いていく。
 その先には階段があり、下の方からは、草の香りと湿気を帯びた風が吹き上がってきた。

 そして全員が扉の中に入るのを確認し、手を離した。すると自動的に扉は閉じ、ガチャリと三度……鍵が掛かる音が響いた。
 
「さぁ──気を引き閉めて行こうか!」

 隊列を組み直し、俺達は階段を下る……。
 すると洞窟の様だった景色は一変し、まるで外に出たのかと見間違うほどの光景が、目の前には広がっていた。

「初めて見たな……これほどの緑は……」

 階段から下った場所は、切り立った崖の上だった。崖の下には一面緑が広がり、湿った土の臭いが鼻につく。
 未だ、自分も踏み込んだこと事の無い未開の地。
 
 この胸の高鳴り……久しいな、もう二度と経験することはない、そう思っていたのだが。
 ただそれでも──すんなりとは先へは進ませて貰えないようだ。

「あれは……魔物なの?」

 崖の手前、数メールと言った所か? そこには一匹……っと言うべきなのか? 
 金属の甲冑に身を包んだ、人ではない何かが、そこには座していた。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった

雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。 天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。 だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。 鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。 一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。 朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。 悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。 目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...