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第15話 主人と犬8
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「ロム……ロム!?」
悪魔の石の石が消え、地面に横たわるロム。
目立った外傷は見られないが、石に捕らわれ呼吸が出来なかったのだろうか?
体全体で息をするかのよに呼吸を荒げていた。
「良かった、まだ息がある! そうだ、アリエルちゃん。アリエルちゃんは大丈夫なの?」
ロムの無事を確認したフランは、今度は自分達を助けてくれたアリエルの容態を確認する……。
噛まれたであろう部分が多数見られるものの、致命傷を受けた形跡はなかった……無かったのだが──。
「──アリエルちゃんどうしたの……? そんな浮かない顔をして。化け物もみんなアリエルちゃんが退治してくれたんでしょ? もしかして怪我が痛むの!?」
「そうではないです……フラン様、ロム様から離れてください。時期に彼は……人を襲います」
フランの顔からは血の気が引き、見るからに顔が青ざめている。
唇を震わせ、目は泳ぎ、その場にへたりこんでしまう。
「アリエルちゃん……? 何を言って──」
「──侵食です。本当は、フラン様も御気づきになられてますよね」
顔を覆い「そんなの……嘘よ」と、アリエルの言葉を否定する。
しかし目の前で苦しそうにするロムが……現実がそれを許しはしない──。
「……今は離れましょう。ロム様に、貴女を傷つけさせたくはない」
アリエルは、彼女とロムを引き離す為に腕を取り引っ張るものの、フランは必死の抵抗を見せた。
駄々っ子の様に暴れる彼女に、アリエルは怪我をさせまいと強行手段には出れなかった。
「離して、アリエルちゃん! ロムが、ロムが私を襲うわけ無いじゃない! 私達は相棒なのよ? パートナーなの!!」
しかし、残念ながら現実は無情であった。ロムの体に、化け物同様の変化が起こり始めたのだ……。
背中の毛が抜け落ち、皮膚が盛り上がる。ロムの口からは、苦しそうな呻き声が上がる。
「──ひっ!?」
本能とは残酷なものだ……変貌するロム姿を見て、彼女に先程の恐怖が頭をよぎってしまう。
その声を聞き、ロムはフラフラと立ち上がる……。そして「クゥーン……」っと一言残し、西に向かい走り出した──。
「ロム……ダメ、行かないで!! そっちは崖よ!?」
ロムは足を止めることは無かった……。
大切な相棒を傷つけはしたくない……そんな一心で自らの崖の底に、身投げをしたのだろう。
「──ロムゥゥゥゥ!!」
何かが潰れる、鈍い音が二人の耳に入った。
崖下の岩場には、赤い鮮血の華が咲いている……。
アリエルの目には、崖の底で命が霞んでいくロムの姿がハッキリと見えた。
その場からは、到底手を伸ばしても助けることはできない……。自分の無力さを噛みしめ、ただただ命の炎が消え行く様を見届けることしか、二人にはできなかった……。
せめてもの救いは、ロムの姿がそれ以上変わることは無かった……それ事ぐらいだった。
「そんな……あの時、私が怯えてしまったから!?」
「──そんな事はありません!! 元はと言えば、私が壊し損じたから!」
お互いの間に、沈黙が流れる……そんなやり取りをしてもロムが起き上がるはずがない、目の前の惨劇を見れば、その事は火を見るより明らかだった。
「今の彼なら危害を加える事はないはずです……ロム様を連れて帰りましょう」
二人は崖を下り、既に息の無いロムを連れて帰った。
自らの相棒を守る事のできたロムの顔は、悲しみに暮れたものでは無かった。
「──貴方はよくやりました……私なんかより、よっぽど立派です」
アリエルの目には、ろむが穏やかで、誇らしげで……ほんの少しだけ笑っている。そんな風に写ったのだった。
悪魔の石の石が消え、地面に横たわるロム。
目立った外傷は見られないが、石に捕らわれ呼吸が出来なかったのだろうか?
体全体で息をするかのよに呼吸を荒げていた。
「良かった、まだ息がある! そうだ、アリエルちゃん。アリエルちゃんは大丈夫なの?」
ロムの無事を確認したフランは、今度は自分達を助けてくれたアリエルの容態を確認する……。
噛まれたであろう部分が多数見られるものの、致命傷を受けた形跡はなかった……無かったのだが──。
「──アリエルちゃんどうしたの……? そんな浮かない顔をして。化け物もみんなアリエルちゃんが退治してくれたんでしょ? もしかして怪我が痛むの!?」
「そうではないです……フラン様、ロム様から離れてください。時期に彼は……人を襲います」
フランの顔からは血の気が引き、見るからに顔が青ざめている。
唇を震わせ、目は泳ぎ、その場にへたりこんでしまう。
「アリエルちゃん……? 何を言って──」
「──侵食です。本当は、フラン様も御気づきになられてますよね」
顔を覆い「そんなの……嘘よ」と、アリエルの言葉を否定する。
しかし目の前で苦しそうにするロムが……現実がそれを許しはしない──。
「……今は離れましょう。ロム様に、貴女を傷つけさせたくはない」
アリエルは、彼女とロムを引き離す為に腕を取り引っ張るものの、フランは必死の抵抗を見せた。
駄々っ子の様に暴れる彼女に、アリエルは怪我をさせまいと強行手段には出れなかった。
「離して、アリエルちゃん! ロムが、ロムが私を襲うわけ無いじゃない! 私達は相棒なのよ? パートナーなの!!」
しかし、残念ながら現実は無情であった。ロムの体に、化け物同様の変化が起こり始めたのだ……。
背中の毛が抜け落ち、皮膚が盛り上がる。ロムの口からは、苦しそうな呻き声が上がる。
「──ひっ!?」
本能とは残酷なものだ……変貌するロム姿を見て、彼女に先程の恐怖が頭をよぎってしまう。
その声を聞き、ロムはフラフラと立ち上がる……。そして「クゥーン……」っと一言残し、西に向かい走り出した──。
「ロム……ダメ、行かないで!! そっちは崖よ!?」
ロムは足を止めることは無かった……。
大切な相棒を傷つけはしたくない……そんな一心で自らの崖の底に、身投げをしたのだろう。
「──ロムゥゥゥゥ!!」
何かが潰れる、鈍い音が二人の耳に入った。
崖下の岩場には、赤い鮮血の華が咲いている……。
アリエルの目には、崖の底で命が霞んでいくロムの姿がハッキリと見えた。
その場からは、到底手を伸ばしても助けることはできない……。自分の無力さを噛みしめ、ただただ命の炎が消え行く様を見届けることしか、二人にはできなかった……。
せめてもの救いは、ロムの姿がそれ以上変わることは無かった……それ事ぐらいだった。
「そんな……あの時、私が怯えてしまったから!?」
「──そんな事はありません!! 元はと言えば、私が壊し損じたから!」
お互いの間に、沈黙が流れる……そんなやり取りをしてもロムが起き上がるはずがない、目の前の惨劇を見れば、その事は火を見るより明らかだった。
「今の彼なら危害を加える事はないはずです……ロム様を連れて帰りましょう」
二人は崖を下り、既に息の無いロムを連れて帰った。
自らの相棒を守る事のできたロムの顔は、悲しみに暮れたものでは無かった。
「──貴方はよくやりました……私なんかより、よっぽど立派です」
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