2 / 26
第一章
ソノ艦魂、荒神ニ候ウ
しおりを挟む
青々とした朝である。
雨上がりの空は瑞々しく、すっきりとした印象がある。
長い梅雨の終わりを告げる最後の大雨のあと、ひさしく見なかった乾いた大地に1人の妖怪が足をつけた。
名を、艦魂大和。あの戦艦大和である。
艦が陸を歩くのかと聞かれれば、否。歩いているあれは人の形をしている。
理屈はわからないが、そのむかし、艦に人が宿した魂が、死後妖怪という括りの中に組み込まれた際にうまれたのが、彼らである。
なにかと謎も多く、近辺の妖怪たちはあまり近付く事はしなかった。
赤レンガ作りの高い建物、それをぐるぐるまわるように舗装された土の道を、数人の艦魂たちが通り抜けていく。
男もいれば女もいる。その様子を、大和は黙って睨むように眺めていた。
連日の哨戒、敵襲に護衛。
「なぁなぁ、後で叢雲でも誘って間宮さんの所にいこうぜ?」
「おぉ、行こうよ」
このような他愛ないやりとりも、大和のなかにはない。
ただ、休息の時間と言えばこうして海の見渡せる高い丘で、一本桜に凭れながら煙草をくぐらせるくらいであった。
「・・・・・・次は会議に演習任務、それにまた会議か。つまらんのぉ」
手元のよれた紙の束に目を落としつつ、ついでに灰も落とす。
ここ最近は、いつも演習ばかりだ。
他の艦艇、駆逐艦や潜水艦たちはもっぱら外に出ては殲滅戦に勤しみ、どこか充実しているような満足そうな顔をして帰ってくる。
それを見るたびに、大和は自分の胸中で燻る焦りに腹を立てていた。
なぜ、帝国海軍の象徴たるこの私が、室内作業ばかりやらされるのか。遺憾である。
資源のこともある、その海域にあった作戦や編成の都合もある。それは十二分にわかっていた。わかっているつもりだ。
だがそれでも・・・・・・
うちにゆれる苛立ちをぶつけるが如く、大和は半分までしか吸っていない煙草をぐしゃりと握り潰した
雨上がりの空は瑞々しく、すっきりとした印象がある。
長い梅雨の終わりを告げる最後の大雨のあと、ひさしく見なかった乾いた大地に1人の妖怪が足をつけた。
名を、艦魂大和。あの戦艦大和である。
艦が陸を歩くのかと聞かれれば、否。歩いているあれは人の形をしている。
理屈はわからないが、そのむかし、艦に人が宿した魂が、死後妖怪という括りの中に組み込まれた際にうまれたのが、彼らである。
なにかと謎も多く、近辺の妖怪たちはあまり近付く事はしなかった。
赤レンガ作りの高い建物、それをぐるぐるまわるように舗装された土の道を、数人の艦魂たちが通り抜けていく。
男もいれば女もいる。その様子を、大和は黙って睨むように眺めていた。
連日の哨戒、敵襲に護衛。
「なぁなぁ、後で叢雲でも誘って間宮さんの所にいこうぜ?」
「おぉ、行こうよ」
このような他愛ないやりとりも、大和のなかにはない。
ただ、休息の時間と言えばこうして海の見渡せる高い丘で、一本桜に凭れながら煙草をくぐらせるくらいであった。
「・・・・・・次は会議に演習任務、それにまた会議か。つまらんのぉ」
手元のよれた紙の束に目を落としつつ、ついでに灰も落とす。
ここ最近は、いつも演習ばかりだ。
他の艦艇、駆逐艦や潜水艦たちはもっぱら外に出ては殲滅戦に勤しみ、どこか充実しているような満足そうな顔をして帰ってくる。
それを見るたびに、大和は自分の胸中で燻る焦りに腹を立てていた。
なぜ、帝国海軍の象徴たるこの私が、室内作業ばかりやらされるのか。遺憾である。
資源のこともある、その海域にあった作戦や編成の都合もある。それは十二分にわかっていた。わかっているつもりだ。
だがそれでも・・・・・・
うちにゆれる苛立ちをぶつけるが如く、大和は半分までしか吸っていない煙草をぐしゃりと握り潰した
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる