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第二章
ハルコ
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身体中がじんわりと熱くなっていく。
ほかほかの布団にくるまれているような、心地の良い匂いに包まれている様な気がした。
ずっと寒くてたまらなかったのに、もう眠くて仕方のなかった目を開けた瞬間、青くて暗い水の中から、黒い手が伸びてきたのだ。
咄嗟にその手を掴んだ途端、ぐんっと身体を引っ張りあげられて、そこからの記憶はない。気が付くと、もう既に見知らぬ綺麗な布団の中だったのだ。
女の子は、不意に漂ってきた芳ばしい匂いに意識を持っていかれた。
肉か魚でも焼いているのだろうか。嗅ぎ慣れないご馳走の匂いがする。女の子はまだふらつく足をベッドから下ろすと、すぐ真下に置かれていた靴の様なものを履き、家具やらなにやらを支えに匂いを辿った。
女の子の住んでいた木造の狭い住居とは違う、偉い人が住んでいるような大きくて広い部屋にまずは驚いた。
「誰のお家なん・・・・?」
呟いてはみたが、誰の気配も無さげだった。段々と不安になってくるが、ご飯の匂いがすると言うことは、誰かしら人がいると言うこと。
女の子は勇気を振り絞って、洋風の扉を開けて廊下へ転がりでた。
部屋と同じく、廊下も広く長く、天井がとても高い。
こんなお城みたいな家が、本当にあるのだろうか。
怖いながらも、女の子は壁づたいにふらふらと歩いていく。
案外、匂いの発生源はすぐ近くであった。
扉のない、壁に入り口をぶち抜いて作られている部屋。匂いはそこから溢れていた。
肉の焼ける良い音がする。そっと顔だけ覗かせると、銀色の台の向こう側に人が立っているのが見えた。
男性の平均よりもすらりと縦に長く、細いがしっかりとした体躯をしている。サスペンダーに黒いズボンを履き、シャツの袖はたくしあげた楽な服装をしていた。
顔は見えないが、まだ若いように見える。
おそるおそる身を乗りだし、よく顔を見ようと背筋を伸ばしたその瞬間、調理中であった髪の長い女の人がこちらを振り返った。
太陽の旗と同じ、もしくはそれ以上に深い真っ赤な瞳が、女の子をとらえた。
その鋭い視線に射抜かれてしまったのか、女の子は固まってしまった。
しかし次の瞬間、女の子はカツカツと足音を鳴らしながら歩いてきた女性に抱き抱えられた。
「ばかたれ。まだ寝とらんといけんじゃろう」
少ししゃがれてはいるが、かろうじて女性だと分かる声音であった。
「・・・・・お姉ちゃん、誰なん?うちもう痛とうないよ?」
「それでもだめじゃけ。寝とれ」
片手に女の子を抱えたまま、女性はさっきの部屋へと足早に向かった。
結局、女の子はまたベッドに戻され上から毛布を敷かれてしまった。
「・・・・・お前様、名前はなんて言うん?」
立ち去るかと思いきや、女性は女の子の前に片膝を着くとそう聞いてきた。
女の子は僅かに警戒したが、意を決したのかぼそりと言った。
「はる子」
「ほうか、はる子か」
続けて、女性はすっと膝を着いたまま背筋を伸ばし、こう言った。
「ワレ、大日本帝国連合艦隊、大和型一番艦、戦艦大和也」
ほかほかの布団にくるまれているような、心地の良い匂いに包まれている様な気がした。
ずっと寒くてたまらなかったのに、もう眠くて仕方のなかった目を開けた瞬間、青くて暗い水の中から、黒い手が伸びてきたのだ。
咄嗟にその手を掴んだ途端、ぐんっと身体を引っ張りあげられて、そこからの記憶はない。気が付くと、もう既に見知らぬ綺麗な布団の中だったのだ。
女の子は、不意に漂ってきた芳ばしい匂いに意識を持っていかれた。
肉か魚でも焼いているのだろうか。嗅ぎ慣れないご馳走の匂いがする。女の子はまだふらつく足をベッドから下ろすと、すぐ真下に置かれていた靴の様なものを履き、家具やらなにやらを支えに匂いを辿った。
女の子の住んでいた木造の狭い住居とは違う、偉い人が住んでいるような大きくて広い部屋にまずは驚いた。
「誰のお家なん・・・・?」
呟いてはみたが、誰の気配も無さげだった。段々と不安になってくるが、ご飯の匂いがすると言うことは、誰かしら人がいると言うこと。
女の子は勇気を振り絞って、洋風の扉を開けて廊下へ転がりでた。
部屋と同じく、廊下も広く長く、天井がとても高い。
こんなお城みたいな家が、本当にあるのだろうか。
怖いながらも、女の子は壁づたいにふらふらと歩いていく。
案外、匂いの発生源はすぐ近くであった。
扉のない、壁に入り口をぶち抜いて作られている部屋。匂いはそこから溢れていた。
肉の焼ける良い音がする。そっと顔だけ覗かせると、銀色の台の向こう側に人が立っているのが見えた。
男性の平均よりもすらりと縦に長く、細いがしっかりとした体躯をしている。サスペンダーに黒いズボンを履き、シャツの袖はたくしあげた楽な服装をしていた。
顔は見えないが、まだ若いように見える。
おそるおそる身を乗りだし、よく顔を見ようと背筋を伸ばしたその瞬間、調理中であった髪の長い女の人がこちらを振り返った。
太陽の旗と同じ、もしくはそれ以上に深い真っ赤な瞳が、女の子をとらえた。
その鋭い視線に射抜かれてしまったのか、女の子は固まってしまった。
しかし次の瞬間、女の子はカツカツと足音を鳴らしながら歩いてきた女性に抱き抱えられた。
「ばかたれ。まだ寝とらんといけんじゃろう」
少ししゃがれてはいるが、かろうじて女性だと分かる声音であった。
「・・・・・お姉ちゃん、誰なん?うちもう痛とうないよ?」
「それでもだめじゃけ。寝とれ」
片手に女の子を抱えたまま、女性はさっきの部屋へと足早に向かった。
結局、女の子はまたベッドに戻され上から毛布を敷かれてしまった。
「・・・・・お前様、名前はなんて言うん?」
立ち去るかと思いきや、女性は女の子の前に片膝を着くとそう聞いてきた。
女の子は僅かに警戒したが、意を決したのかぼそりと言った。
「はる子」
「ほうか、はる子か」
続けて、女性はすっと膝を着いたまま背筋を伸ばし、こう言った。
「ワレ、大日本帝国連合艦隊、大和型一番艦、戦艦大和也」
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