艦神 ーふねがみー 反抗期真っ只中の最凶戦艦、女の子を拾ったは良いが案の定振り回される

ミナズキ

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第二章

座頭

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むしゃくしゃする。

濃い硝煙しょうえんの匂いが海面の湯気と共に立ち込め、その白く霞んだ先に、粉々に砕けた的らしき木片が波間に揺れていた。無造作に撃ちまくった事が窺い知れる。

あれから小一時間ほど、大和はずっと演習場にて射撃訓練ばかりをしている。
今度は演習用ではない、大和自身の持つ巨大な艤装を装着していた。艦隊の誰よりも大きく、重い。大和型のみが使用を許された唯一無二の武装である。

主砲は三基、砲門は九門。うち、二基の砲門からあつい煙が立ち上っていた。

瑞鶴、空母達に馬鹿にされ腹を立て、はる子を手放さざるを得なかった事に情けなさを覚え、大和の胸中は言葉に表すにはあまりにもぐちゃぐちゃとしていた。

もはや、なんのために戦うのか、大和にはわからなくなっていた。

かつて運命を共にし、その命さえも懸けてくれた者達への弔いだったのか、現世を生きる人間の為なのか、それもと鎮守府の仲間の為なのか。

出撃すれば資源の無駄と言われた。撤退すれば無能と言われた。単艦での突撃をすれば無謀と言われた。勝てども勝てども、次を要求された。艤装の改修をすれば空母になれば良いのにと言われた。

私は、必要な艦だったのだろうか?

誰が必要として、私を作った?

誰の為に、なにをして、なにを守ればいい?

私にはなにもなかった。今思えば、この艦に魂を捧ぐ程の価値は、なかったかもしれない。それなのに、私は未来を生きていかねばならない多くの人間を海へ引きずり込んでしまった。陸にかえしてやれなかった。

苦しい。大変心苦しい。

この苦しさを少しでも吐き出そうと、躍起になって出撃を繰り返しても、一向に成果は見えない。

その苛立ちが、他者へ向けるべきではない気持ちをぶつけてしまう。
このままではいけないと、本当はわかっている。わかっているが・・・・

「どうしたら良かったんだ」

ずっと、この言葉がぐるぐると頭の中で渦を巻いている。今でもだ。

副砲を催した銃のグリップを握り締め、次弾装填の後また狙いを定める。
的は動かないが、遠い。銃と言うのは距離があけばあくほど命中率は下がる。銃そのものが大型であれば、物理やらなんやらの関係で直進はしなくなる。修正が必要なのだ。

上に2度、右へ3度。あとは勘だ。

射撃一つとってと、これだけ考える事がある。嫌な事を忘れるにはうってつけだった。

ここだ、と大和は遥か遠い赤丸の的へ向かって撃った。

数秒の後、遠くから高い水飛沫と黒煙が登った。目標命中、効力あり。納得の行く結果だ。

撃てるだけ撃ち込んで気が済んだらしく、大和は副砲、主砲を撃ち方終わりとし、用具を収めにかかった。

と、大和の耳になにか音が聞こえた。機械ともなんとも言えぬ、ツートンと言うような高い音。モールス信号だ。

要約してみると、大淀から緊急の打電のようだった。



『鎮守府近海ノ沖ニテ"アテヨイカヌ敵座頭"見ユトノ警報ニ接シ"ノレツハイ連合艦隊"直チニ"ヨシス出撃"コレヲ"ワケフウメル撃滅"セントス・・・・・・』




「座頭がそんな近くに?駆逐隊はなにをしとるんじゃ」

もっと簡単にすると、座頭が鎮守府近海の沖合いに出現したため、今より艦隊による殲滅戦を行うとの事だ。

謹慎中の大和が呼ばれたと言うことは、よっぽどの大物が現れたのだろう。

たが、電文はこれだけでは終わらなかった。

『工作艦ヨリ   人間ノ童ヲ狙ウモノトス  直チニ  回収セヨ    座頭   魂ヲ食ラウ者ナリ  少女ノ救出  速ヤカニ遂行セヨ・・・・・・』

ここで打電が切れたのだが、それよりも早く大和は沖に向かって走り出した。

収めかけた戦闘用具を迅速に組み立て、原則、強速と速力をあげていく。

一度副砲を腰のベルトに引っかけ胸ポケットから薄い桃色のりぼんを引っ張り出して、髪を結び始めた。

頭の後ろへ邪魔にならないように一本にまとめる。薄桃色とは似つかわしくないが、大和はずっとこれを使い続けているためなんの躊躇いもなかった。

髪を結び終え、再び副砲を手にすると今度は右四十度に前進。湾からだんどんと離脱していく。

上がる飛沫が顔にまとわりつくが、構うものか。
大和はさらに速力をあげ、件の沖合いへ急ぐのだった。

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