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第二章
大和ノ弟妹
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「・・・・・・取り逃した座頭は空母機動部隊が始末したそうだ。大和、貴様の失態に大勢の同胞が迷惑を被っている。それはわかるな?」
場所は変わって再び指令室。昼の光りも幾ばくか弱まり、徐々に色が濃くなっていく。
指令室ではやはり、長門と呼び出しを食らった大和の二人だけが、向き合う形でそこにあった。
長門の方は椅子に腰かけて杖をとんとんと鳴らしている。表情は変わらず険しい。眉間に寄った皺の数だけ小言があるようだった。
一方、大和はやはりと言うか、不貞腐れたようにむすっと口をへの字に曲げて、黙ったままである。
「いくつもの違反に迷惑行為。本来ならば昨日付けで除籍を言い渡してやっても良かったんだぞ」
「・・・・・そうか。ならさっさとそうすれば良かったじゃないか」
いくら生前に艦隊を組んでいたとは言え、連携の取れない、ましてや力を持て余す艦魂を長く鎮守府に置いておく義理はない。
「資源の無駄、時間も金もかけるだけ損なのだろう?私以外にも戦力になる艦魂はわんさかいる。むしろ、どうして今の今まで鎮守府に置いていたのか、不思議に思っていた」
無表情な口から、自虐的でいてなおかつ長門を責めるような言葉が溢れて止まらない。
影口をこそこそと叩かれ、上司からの叱責を浴び続けても、大和にはここに留まらねばならないただひとつの理由があった。
だが、それすらも手が届くかどうか分からない「可能性」の話となってしまったのであれば、もう意味はない。
「・・・・・うちの弟妹が居なければ、ここを守る意味もなにもない」
8年前のあの日、大和の生きていく為の全てが失われたのだ。
・・・・・・・今ぐらいの雨が降っていた。大和がこの鎮守府に着任し、丁度四年目であった。
大和よりも早く武蔵、信濃は鎮守府に来ており、いくつかの海域の進出に貢献していたのだ。
弟妹達に遅れを取りたくなかった大和だが、弟妹の成長に恐れつつも、素直に喜んだ。
これからずっと、今度は三人で戦える。今度こそ守ってやれる、先に逝かせてやるものかと意気込んでいたのだ。
ところが、第二遊撃部隊・・・・弟妹が配属された部隊の出撃した海域でそれは起こった。
かつてない程巨大な、真っ赤な体毛と目を持った座頭が現れた。
第一部隊よりか練度は劣るものの、当時集まっていたのはそこそこの手練ればかりだ。それが、瞬く間に壊滅状態にまで追い詰められてしまった。
第二遊撃部隊の旗艦であった武蔵は他の艦魂を逃がすために一人でその赤い座頭と対敵し、信濃もそれに続いた。
緊急の打電を受け、大和達も急いで駆けつけたのだが、その時には全てが終わっていた。
皆を守るために盾となった武蔵と信濃は、損傷が激しすぎた事で、崩れる艤装と共に海底へ沈んでいった。
それを私は目の前で見ていた。
沈んでいく2人の手を必死に掴んで、上へ上へと引っ張る。それでも2人の身体はどんどん水の中に落ちていく。
間に合わなかったのだ。
激しい損傷を負った艦魂は、沈没する事がある。それは「死」とはまた違うのだが、なんと言えば良いか、一度轟沈し、眠るのだ。
私達が引き揚げない限り、ずっと。
「・・・・・・どうして黙っている。もうここにいる理由はなくなった。アンタが一言『出ていけ』と言うだけで済むんだ」
「なるほど。お前、そんな無責任な事が言える程、偉くなったんだな」
含みのある長門の言い草に、思わずカチンと頭にきた。
長門の表情は先程から一ミリも変わらない。それがかえって大和の癪に障るのだ。
「なにが言いたい・・・・・?」
「甘ったれたクソガキだと言ったんだ」
ブツン、と大和の頭のなかでなにか細く脆い糸が音を立てて切れた。
場所は変わって再び指令室。昼の光りも幾ばくか弱まり、徐々に色が濃くなっていく。
指令室ではやはり、長門と呼び出しを食らった大和の二人だけが、向き合う形でそこにあった。
長門の方は椅子に腰かけて杖をとんとんと鳴らしている。表情は変わらず険しい。眉間に寄った皺の数だけ小言があるようだった。
一方、大和はやはりと言うか、不貞腐れたようにむすっと口をへの字に曲げて、黙ったままである。
「いくつもの違反に迷惑行為。本来ならば昨日付けで除籍を言い渡してやっても良かったんだぞ」
「・・・・・そうか。ならさっさとそうすれば良かったじゃないか」
いくら生前に艦隊を組んでいたとは言え、連携の取れない、ましてや力を持て余す艦魂を長く鎮守府に置いておく義理はない。
「資源の無駄、時間も金もかけるだけ損なのだろう?私以外にも戦力になる艦魂はわんさかいる。むしろ、どうして今の今まで鎮守府に置いていたのか、不思議に思っていた」
無表情な口から、自虐的でいてなおかつ長門を責めるような言葉が溢れて止まらない。
影口をこそこそと叩かれ、上司からの叱責を浴び続けても、大和にはここに留まらねばならないただひとつの理由があった。
だが、それすらも手が届くかどうか分からない「可能性」の話となってしまったのであれば、もう意味はない。
「・・・・・うちの弟妹が居なければ、ここを守る意味もなにもない」
8年前のあの日、大和の生きていく為の全てが失われたのだ。
・・・・・・・今ぐらいの雨が降っていた。大和がこの鎮守府に着任し、丁度四年目であった。
大和よりも早く武蔵、信濃は鎮守府に来ており、いくつかの海域の進出に貢献していたのだ。
弟妹達に遅れを取りたくなかった大和だが、弟妹の成長に恐れつつも、素直に喜んだ。
これからずっと、今度は三人で戦える。今度こそ守ってやれる、先に逝かせてやるものかと意気込んでいたのだ。
ところが、第二遊撃部隊・・・・弟妹が配属された部隊の出撃した海域でそれは起こった。
かつてない程巨大な、真っ赤な体毛と目を持った座頭が現れた。
第一部隊よりか練度は劣るものの、当時集まっていたのはそこそこの手練ればかりだ。それが、瞬く間に壊滅状態にまで追い詰められてしまった。
第二遊撃部隊の旗艦であった武蔵は他の艦魂を逃がすために一人でその赤い座頭と対敵し、信濃もそれに続いた。
緊急の打電を受け、大和達も急いで駆けつけたのだが、その時には全てが終わっていた。
皆を守るために盾となった武蔵と信濃は、損傷が激しすぎた事で、崩れる艤装と共に海底へ沈んでいった。
それを私は目の前で見ていた。
沈んでいく2人の手を必死に掴んで、上へ上へと引っ張る。それでも2人の身体はどんどん水の中に落ちていく。
間に合わなかったのだ。
激しい損傷を負った艦魂は、沈没する事がある。それは「死」とはまた違うのだが、なんと言えば良いか、一度轟沈し、眠るのだ。
私達が引き揚げない限り、ずっと。
「・・・・・・どうして黙っている。もうここにいる理由はなくなった。アンタが一言『出ていけ』と言うだけで済むんだ」
「なるほど。お前、そんな無責任な事が言える程、偉くなったんだな」
含みのある長門の言い草に、思わずカチンと頭にきた。
長門の表情は先程から一ミリも変わらない。それがかえって大和の癪に障るのだ。
「なにが言いたい・・・・・?」
「甘ったれたクソガキだと言ったんだ」
ブツン、と大和の頭のなかでなにか細く脆い糸が音を立てて切れた。
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