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第二章
ハジメノ功績 弐
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「・・・・・行っちゃいましたね、大和さん」
「えぇ、行っちゃいましたね」
「・・・・・これ俺のせい?」
パタパタと、閉まりきらなかった扉が寂しげに揺れている。寝ているはる子を起こさないよう大和なりに気を遣ったのか、いつもの乱暴な閉めかたはしなかった。
気難しい彼女の退室に、正直明石と大淀は安堵してしまった。宥めて大人しくなるなら、きっとめんどくさい奴程度で済んだのだろうが、あいにく彼女の荒々しさはこんなものではない。
「・・・・・ところで妙高、君は何故ここに?艤装の事でなにかお悩みでも?」
「そうそう。この間の遠征中にさ、敵座頭の小規模艦隊に出くわして応戦したんだけどなんか魚雷発射管の調子が悪いのか上手く当たらなかったんだ。またみてくれねぇか?」
「いやそれ、そもそもの設計ミスで・・・・・・一応点検はしときますけど」
「明石さんの仕事、あまり増やさないであげてくださいね。うちの工作艦は彼しかいないんですから」
「分かってるって」
明石、大淀から送られる注文に軽い返事を返しつつも、右手は眠るはる子の背をずっとさすっている。
大和程ではないが、この妙高と言う艦魂もなかなかに癖のある男だ。
むしろ、喧嘩っ早い妙高がどうしてあの大和と一度も衝突していないのかが不思議だった。
「わざわざ修理の依頼の為に着いてきたんですか?それなら別に後でも良かったんですよ?」
「あ?あぁ、いや別にたいした事じゃねぇよ。ただ、こいつの事が気になって」
涙の流れた跡の残る幼い寝顔を見下ろしつつ、妙高は神妙な顔つきでとつとつと呟く様に言った。
「仕方がなかったとは言え、突き返しちまった。なんか、申し訳なくて・・・・・」
一度海に流してしまったのに、今更戻ってこいなど、あまりにも虫が良すぎる。我々の決定に振り回されるこの子が、妙高には不憫でならなかった。これもエゴイズムだ。
「・・・・・・はる子さんには大変な思いをさせますが、仕方がなかったんです。長門さんの気持ちも、無下には出来ませんから」
ふと妙高は顔を上げて、目の前で眼鏡のズレを直す大淀をみた。透明なガラスの向こうにある黄緑色の瞳が、悲しげに潤んでいる。
「ともかく、はる子さんの事は大和さんたちが決めるとして、今後の我々の動向について、改める必要があります。そのときは妙高さん、貴方たちの協力も得なくては」
「その辺は心配ねぇよ。長門の言うことに反対する奴の方が珍しいって」
ふと、やんちゃな笑みが妙高の口元に浮いた。血の気も多く短気だが、話が通じない程、妙高は愚かではない。大淀も明石も、頼もしい戦友の活躍を願って礼を交わすのだった。
「えぇ、行っちゃいましたね」
「・・・・・これ俺のせい?」
パタパタと、閉まりきらなかった扉が寂しげに揺れている。寝ているはる子を起こさないよう大和なりに気を遣ったのか、いつもの乱暴な閉めかたはしなかった。
気難しい彼女の退室に、正直明石と大淀は安堵してしまった。宥めて大人しくなるなら、きっとめんどくさい奴程度で済んだのだろうが、あいにく彼女の荒々しさはこんなものではない。
「・・・・・ところで妙高、君は何故ここに?艤装の事でなにかお悩みでも?」
「そうそう。この間の遠征中にさ、敵座頭の小規模艦隊に出くわして応戦したんだけどなんか魚雷発射管の調子が悪いのか上手く当たらなかったんだ。またみてくれねぇか?」
「いやそれ、そもそもの設計ミスで・・・・・・一応点検はしときますけど」
「明石さんの仕事、あまり増やさないであげてくださいね。うちの工作艦は彼しかいないんですから」
「分かってるって」
明石、大淀から送られる注文に軽い返事を返しつつも、右手は眠るはる子の背をずっとさすっている。
大和程ではないが、この妙高と言う艦魂もなかなかに癖のある男だ。
むしろ、喧嘩っ早い妙高がどうしてあの大和と一度も衝突していないのかが不思議だった。
「わざわざ修理の依頼の為に着いてきたんですか?それなら別に後でも良かったんですよ?」
「あ?あぁ、いや別にたいした事じゃねぇよ。ただ、こいつの事が気になって」
涙の流れた跡の残る幼い寝顔を見下ろしつつ、妙高は神妙な顔つきでとつとつと呟く様に言った。
「仕方がなかったとは言え、突き返しちまった。なんか、申し訳なくて・・・・・」
一度海に流してしまったのに、今更戻ってこいなど、あまりにも虫が良すぎる。我々の決定に振り回されるこの子が、妙高には不憫でならなかった。これもエゴイズムだ。
「・・・・・・はる子さんには大変な思いをさせますが、仕方がなかったんです。長門さんの気持ちも、無下には出来ませんから」
ふと妙高は顔を上げて、目の前で眼鏡のズレを直す大淀をみた。透明なガラスの向こうにある黄緑色の瞳が、悲しげに潤んでいる。
「ともかく、はる子さんの事は大和さんたちが決めるとして、今後の我々の動向について、改める必要があります。そのときは妙高さん、貴方たちの協力も得なくては」
「その辺は心配ねぇよ。長門の言うことに反対する奴の方が珍しいって」
ふと、やんちゃな笑みが妙高の口元に浮いた。血の気も多く短気だが、話が通じない程、妙高は愚かではない。大淀も明石も、頼もしい戦友の活躍を願って礼を交わすのだった。
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