プレイヤーズゲーム 〜生徒たちの挑戦〜

モンモン

文字の大きさ
24 / 27

第23話 暗転の初陣

しおりを挟む

1. 静かなる幕開け

十月、岐阜の秋空の下。五日間にわたる国体がついに幕を開けた。
涼賀と拓海は公欠を届け出、戦地へと向かった。桜須学院の校内でも、二人の活躍を願う声で溢れていたが、初日の速報サイトに貼り出された「4×100mリレー予選のオーダー」を見た陸上部員たちは、目を疑った。

「……え、涼賀先輩が補欠?」

奏人が声を震わせる。男子4×100mリレー。エースであり、いずれかの走順を任されるはずだった涼賀の名前が、登録メンバーから外れ、補欠へと回っていたのだ。

「まさか……でも、100mもあるし、きっと温存してるんだよ」

萌歌は不安を打ち消すように呟くが、学校にいる部員たちの間には、得体の知れない動揺が広がっていった。


2. 涼賀、執念の予選

会場。男子100m予選。
涼賀は、左足の「ラグ」を抱えたままスターティングブロックに足をかけた。痛みはない。しかし、脳が「行け」と命じてから、足が地面を蹴るまでの間に、やはりコンマ数秒の不気味な空白がある。

「オン・ユア・マークス」

「セット……」

パン!

スタート。しかし、涼賀の反応は、かつての彼からは考えられないほど鈍かった。

「……っ!」

中盤で必死に巻き返そうとするが、フォームがどこかギクシャクしている。地面からの反発が、うまく推進力に変換されない。周囲の選手たちが涼賀の視界から先へ抜けていく。
結果は、組3着。
全体タイムでも下位の方だったが、辛うじて「+a(プラスアルファ)」の枠で明日の準決勝進出を決めた。ゴール後、涼賀は膝に手をつき、荒い息を吐きながら地面を睨みつけた。

(届かない……自分の足が、遠い……!)


3. 孤独なケアと、拓海の到着

その夜。涼賀は宿舎の一角で、トレーナーに必死の形相で足のケアを頼んでいた。
「どこか痛むのかい?」と聞かれても、「いや、ただの張りです」と強がることしかできない。
準決勝は明日。ここを突破しなければ、決勝という名の引退試合には辿り着けない。涼賀は暗い部屋で、大夢からもらった「激励の解析」を何度も読み返していた。

一方、水泳会場。

レースを翌日に控えた拓海が、会場入りを果たしていた。
プールサイドから見つめる、国内最高峰のレース。爆発的な水しぶき、狂気すら感じるトップスイマーたちの眼差し。

(……いい刺激だ。ここなら、俺はもっと速くなれる)

拓海は、自らの内に眠る闘争心を静かに研ぎ澄ませていた。涼賀が抱える深刻な異変など、今の拓海の耳には一切届かない。ただ、明日、同じ岐阜代表として戦う親友に恥じない泳ぎをする。その一点だけが、彼を支えていた。


4. 運命の二日目へ

涼賀は、マッサージ台の上で目を閉じた。
左足の感覚が、暗闇の中でさらに希薄になっていくような錯覚に襲われる。

「明日だ……。明日、全部ぶつける……」

執念で繋いだ準決勝への切符。
そして、満を持して出陣する絶対的な静寂の王、拓海。
それぞれの運命が、二日目の朝に交錯しようとしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜

野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」   「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」 この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。 半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。 別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。 そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。 学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー ⭐︎第3部より毎週月・木・土曜日の朝7時に最新話を投稿します。 ⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。 ※表紙絵、挿絵はAI作成です。 ※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる

グミ食べたい
青春
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。 彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。 だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。 容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。 「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」 そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。 これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、 高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...