プレイヤーズゲーム 〜生徒たちの挑戦〜

モンモン

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第25話 共鳴する亀裂

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1. 拓海の確信と不安

競泳会場。予選レースを終え、プールの縁でゴーグルを外した拓海の表情は、充実感に満ちていた。身体は重かったが、大夢と積み上げた理論通りの泳ぎで予選を上位通過。表彰台への道筋は、はっきりと見えていた。
シャワーを浴び、控え室に戻った拓海は、スマートフォンを手に取った。真っ先に開いたのは、国体陸上の速報サイトだ。

(涼賀、お前も今頃……)

しかし、画面に躍り出た数字を見て、拓海は凍り付いた。

『男子100m準決勝 全体9位:川瀬 涼賀(岐阜)』

「……は?」

思わず声が漏れた。まさかの9位。決勝に、あいつの名前がない。
不調? いや、そんなレベルじゃない。インターハイであの執念を見せた涼賀が、最後のリベンジの舞台で決勝を逃すなど、通常ではありえないことだった。

(……おかしい。何かが起きてる)

拓海は自分の震える指先を見つめた。中学時代から、二人で競い合ってきたからこそわかる。これは「負け」ではなく、何かが「壊れている」サインだ。


2. 涼賀、抜け殻のスタンド

同じ頃、陸上競技場。
敗退が決まった涼賀は、まだリレーメンバーとしての役割が残っているため、チームのジャージを着てスタンドに座っていた。
目の前では、男子4×100mリレーの予選が始まろうとしている。本来なら、自分がいずれかの走順に入り、レーンに立っているはずだった。

「……」

隣に座る県チームのメンバーたちの声が、遠くのノイズのように聞こえる。
自分の左足に触れてみる。やはり、そこにあるのは確かな質量だけで、自分の意思を伝達する「神経」が断ち切られたような、薄気味悪い静寂だけが横たわっていた。

「涼賀、大丈夫か?」

チームメイトに声をかけられても、涼賀は「あ、ああ……」と力なく笑うことしかできない。
かつての爆発的な闘志は、どこか深い闇の底に沈んでしまったかのようだった。


3. 異変の正体

桜須学院では、萌歌、沙玖、奏人ら部員が、まるで通夜のような空気の中で練習を続けていた。

「……拓海からも、連絡がないね」

萌歌がポツリと漏らす。

「涼賀先輩……あの時、大夢先輩が言ってた『リズムの揺らぎ』って、こういうことだったんですか?」

奏人の問いに、沙玖は苦しげに顔を歪めた。

「……おそらく、イップスに近いものか、あるいは練習のしすぎで神経系のデッドロックかな。身体が『これ以上は走るな』と拒絶しているんだよ」

その頃、自宅で速報を見届けた大夢は、机に向かいながらもペンを握れずにいた。

「涼賀……僕たちのために無理をしすぎたんだよ」

大夢にはわかっていた。涼賀の「異変」は、三年間、仲間たちの期待と執念をその細い脚に背負い続けた代償なのだと。


4. 拓海の覚悟

夕刻。準決勝を控え、ホテルに戻っていた
拓海は、部屋の壁にもたれかかっていた。
涼賀の敗退を知り、心はざわついている。だが、だからこそ拓海の中で一つの決意が固まった。

(あいつが走れないなら、俺がその分まで「最速」を証明する。それが、今俺のやるべきことだ)

拓海は入念にストレッチを始めた。
涼賀の異変を確信しながらも、彼はあえて連絡を入れない。今すべきことは、ただ泳ぐこと。離れた場所にいる親友の魂を揺さぶるような、圧倒的なレースを見せること。
それが、滝溝中学から始まった二人の「絆」の形だった。
拓海は、静かに明日への準備に入る。
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