溺愛オウジサマに丸め込まれている気がする。

サミカルキ

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オレのこと

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オレってばよくやったと思うんだよなぁ。

父親は物心ついたときにゃもう居なかったし、母親は男引っ掛けては日夜アンアンギシギシやってるクソ野郎だった。

ろくに学校も行けねぇでよぉ。義務教育なんつうのがあるって知ったのは最近の話だぜ?

そんでもってクソ野郎はオレに見向きもしねぇから毎日腹ぁ空かせてた。アイツの飯の残りだの近所のゴミ箱だの漁って食べ物見繕ったり、そこら辺の草食ったりもしたな。

そうやってギリギリ生き延びていたオレが世間で言うところの中坊くらいの年齢になったとき、オレを雇ってくれるって気前のいいオッサンが現れてな。ソイツの工場で働くようになってからは残飯漁る日はあんまりなくなった。

完全になくなったわけじゃねぇのは偶にクソ野郎にオレの貯金勝手に持ってかれてたりしてたからだ。それに気付いた時ァあのクソアマブチ殺してやろうかと思ったが、後にオッサンがあの女目当てでオレに近づいたって知ってからは少しだけ許せるようになった。

お気楽に笑ってる連中をよく職場から眺めてた。なんだか目が離せなかったんだよなぁ。

そんで仕事の休憩時間になったらオレはよく近くの公園で昼飯食ってたんだ。ベンチに座って、ぼーっとな。そしたらいつからかその隣にお喋りなメガネ野郎が座り込むようになった。

ソイツは一方的に自分の好きなゲームやら物語やらの話をベラベラ話してオレの話はろくに聞かずに一人で満足して帰っていく、うざってぇ奴だった。現にオレはアイツの名前すら知らねぇ。
その上ソイツの話はどれも男が男に惚れるようなモンばっかりで正直クソつまんなかった。おっぱいも柔けぇ尻ももってねぇ男とレンアイして何が楽しーんだか。全く理解できなかった。オレァ、もっと女の子とイチャイチャするようなヤツが聞きたかった。オレんこと大好きなボインで可愛い彼女がとにかく欲しかった。

全く趣味合わねぇってのにアイツは飽きもせず話しかけてきやがる。今日だってそうだった。

「昨日、僕の好きな会社から新しくBLゲームが発売されたんです!もちろん、発売日に買いに行って早速やり込みましたよ!今回のゲームは異世界ファンタジーの学園ハーレムモノだったんですけど、悪役のディアブロ・アルベールってキャラがとにかく断罪されまくるんです!特に王太子アルバート・リーベルのルートだとフルボッコにされててもう可哀想で、可哀想で…。ディアブロのこと、大好きになっちゃいました!」

いや、可哀想なのに大好きになるのかよ。やっぱ訳わかんねぇな、コイツ。

歪んだ性癖のメガネ野郎は生き生きとその悪役令息?って奴について褒めてんのか貶してんだか良く分からん熱弁を始める。

「そもそもディアブロって名前からしておかしいんですよね!人の名前に、それも自分の子供に悪魔なんて名前よっぽど嫌ってなきゃ付けないですよ!笑っちゃう!もう、本当大好き!」

そこ笑うんだ。キモ。


ドン引きのオレをいつも通り置き去りにして喋り続けるメガネの言葉をまたぼんやりと聞き流していればいつの間にか休憩時間が終わっていてまた仕事に戻る。


こんな感じで朝っぱらから働いて、変な奴に訳わかんねぇ話聞かされて、クソアマの媚びた声聞きながら寝るクソな毎日。そんなんでも一生懸命生きてきたっつうのによぉ。


「が、ぁ、ッ…?」
「僕以外に男が居るなんて聞いてないよ!」

まさかクソ男にあの女の浮気相手と勘違いされて刺されるなんてなぁ。

包丁ぶっ刺さったままの腹が異常に熱くて、ああ、オレァ死ぬんだなって気付いた瞬間、ふとアイツがどんな顔をしてるのか気になった。そんなこと、視界が霞みまくったこの目じゃもう確かめようもなかったが。

その顔に涙の一粒でも流れてりゃ、オレはアイツを、母さんと呼べる気がしたんだ。
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