[第一巻完結!]清心館女学院の探偵事情~銀髪の名探偵『日ノ宮雪乃』謎は解けても恋は解けない~

水星 透

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星と少女と、消えた名前

十三章『消失と出現』

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シスターが消失し、志崎しざき暁希あきが現れていた。

雪乃は目を大きく開き、崩れ落ちそうな七々瀬をそっと抱きとめた。

「暁希……」

七々瀬の唇が小さく震え、その声は喉の奥で掠れた。
懸命に何かを押し殺しているのだろう。震える指先が胸の奥の感情を、かすかに示していた。

そんな七々瀬をゆっくりと座らせると、二人に向かって雪乃は語り始めた。七々瀬はかろうじて、言葉を受け止めようと努めていた。

「トリックはあなたが解いたの?」

暁希は雪乃に問いかけた。

今は、シスターの姿を脱ぎ捨てて、清心館の学生に戻っていた。暁希は髪を指でなぞりつつ、身なりを整えていた。

「この舞台での私は、探偵役……探偵は謎を解くのが仕事ですから」

「暁希さんの脚本を台無しにするような、とんだ三文芝居でしたけれど」

雪乃は小さく吐息を漏らした。その息が微かに白く浮かんだ。

「動機は……私が話したほうが……いいんだろうな」
「そりゃそうか」

暁希は軽く肩をすくめて笑みを見せた。
泣き笑いする道化のように。

「この話はね、七々瀬がほんのちょっとでも私の事を――」
「せめて、交友関係だけでも把握していれば、すぐに解決していたわ」
「寄宿の二人にも、七々瀬から直接訊かれたら真相を伝えるように頼んでいたの」

「もちろんシスターわたしもね」

「暁希はどこって」

「ただそれだけ訊いてくれていたら」

暁希はまだ役が抜けきっていない、舞台女優のような身振りと声で続けた。

「事の発端は、中等部のころの演劇部と奇術部」

「廃部の原因、七々瀬はきっと、知らなかったよね」
「どんな子達が、どんな思いを持っていたか考えたことある?」

礼拝堂の通路を行くあてもなく、さまよい歩きながら話を紡いでいった。迷子の子供のようだった。

「さっき雪乃さんが言っていた、茜と詩織」

「どんな子かも七々瀬はわからないんじゃないかな」
「崇拝も、軽蔑もあなたは興味がない。見る必要がないから」

「七々瀬はね、知らないの。一人一人、それぞれの思いがあるって事を」

「でもね、あなたに復讐がしたいとか、そんなことじゃない」

「私はね。そんなあなたのことが、どうしようもなく好きになっちゃったの」

暁希は舞台の仮面を脱ぎ捨てて、言った。

「好きになっちゃった……」

言葉の中に静かに織り込みながら、暁希は七々瀬への想いを口にした。

「それが今回の事件の動機」

「あなたにとって私は『見えない人』だった」

「ただ、あなただけに見て欲しかったのに」
「そんなことを考えてたらね」

「だったら私が見えなくなったら、世界から消えてしまったら」

「七々瀬はどう思うんだろう?どうなるんだろう、って思ったの」

朝靄が立ち込めるような、静謐な憂いを湛えた声だった。

「それで今回、いろいろな人を巻き込んでこんな事を起こしてしまった」

「ごめん……なさい」

眼鏡の奥で瞳が水面のように揺らいでいた。

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