【完結】投獄中の売国奴が出会ったのは、敵国の泣き虫王子だった。 ~期待された神器が"柄"ってだけで迫害を受けた~

三ツ三

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投獄中の売国奴と泣き虫王子の二人は、出会いから始まる。

1.出会えたのは泣き虫王子、出会ったの死人寸前の売国奴

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『裏切り者が!!』

『この売国奴目が! 国王の温情も忘れおって!!』

『何が名誉騎士だ、貴様の様な下賤の輩に与える訳がなかろう』




 夢・・・か。


 なんか懐かしい夢を見ていたようだったが、俺を罵倒する言葉が現実へと引き戻した。

 けれど、見るならもっと心地よい夢の方がよかったかな。
 そうだな、たとえば・・・。

 ・・・駄目だ、何も思い付かないな。

 これと言って見たい過去の夢なんてなかった事に気が付き、ビクついて起き上がった身体を再び地面へと寝かせる。

 一体どれだけの時間をこの牢獄で過ごしていたのだろうか。
 荒れ果てた地面、何も見えない真っ暗闇な風景。

 気が滅入ってしまう、そんなのはとうの昔に忘れ去ってしまった気持ちだ。
 なんでこんな事になってしまったのか、どうしてこんなところに居ないといけないのか。そんな事を考えていたのは随分と昔に思える。

 微かに開いた目から映る変わり映えのしない景色、あの時みた夜空と何ら変わりない。

 俺には、何も無いのだと改めて事実を突き付けられているようだった。

 ならきっと、このまま静かに息を引き取ってもいいだろう。決して誰にも迷惑は掛からないはずなのだから。

 悔しいなぁ・・・僅かでもそう思える自分に驚きながらも、その程度しか思えないほど大した人生を送っていなかったと再び実感していた。

 考えることすら面倒になる。だから考えてしまう。

 本当にこのまま息を引き取ってもいいだろう・・・と。


「僕は・・! どうして・・・!!」

 この世におさらばをしようとしていた俺の五感の一つがまだ機能している事を知らせた。

 泣き声だ。微かに聞こえる泣き声が、俺の全身を何故か震撼させた。
 声からしてかなり幼いように感じる。

 何故泣いているのか俺にはわからない。
 だが、本当に何故だろうか。俺は何年使ってないのかわからない動かそうとしていた。

「がぁ・・・ぐあ・・!!」
「ひぃ!!?」

 おかしいな、声が出ない。
 当然と言えば当然か。

「だ、誰かいるんですか」

 震える小声が耳に入る。ほぼ音という音を遮断されている空間、どんな小さな音でも耳に入ってしまうのが衰弱している今の俺には、ありがたい。

「ん"! んぉぇ・・・ん"ー!!」

 必死に声を出そうにも一向に声が発せられない。
 何かの化け物染みた声になっているのがある意味で笑えてくる。

 そんな俺を見兼ねたのか、鉄格子の前に人影が姿を現した。

「人間・・・です、か?」
「ぅん」
「声・・・でないんですか?」
「ぅん」

 なんて物解りの良い小さい少年なんだ。ぱっと見の見た目は10代になるかならないかくらいの歳だろうか。暗くてよく見えないが間違いないだろう。
 そんな子供が一体何用でこんな所に来ているかと、少年を見つめた。

「あ・・・えっと。すみません、ここに人がいるなんてわからなくて! あのその・・・ごめんなさい!!」
「ん"っんんんんーー!!!」

 待ってぇええええー!!

 言葉に出来ない俺の声が牢獄の中を響かせた。

 少年は振り向く事無く部屋を後にして、ガチャリと扉が閉まる音が木霊しただけだった。

 一人虚しく、鉄枷を嵌められたままの手で鉄格子を握り締め少年が去って行った扉を見つめていた。

 俺は・・・一体何をやっているのだろうか。
 少年を引き止めようと機能していない筋肉が動いた身体、出せもしない喉を動かして叫んだ声。

 俺・・・死ぬ気あんのか。



 それからの俺は、まるでもう一度少年・・・彼にまた会えた時の為にと身体を動かし始めた。

「ぁぁぁぁぁぁ~~~・・・あーーー」

 声を取り戻そうと必死になって馬鹿みたいに五十音を一つ一つ呟きながら発声練習をしていた。

 それからの俺の身体はまるで蘇ったかのようにみるみる内に生気を取り戻していった。何がそうさせているのか全くわからないまま、彼が来るのを待ち続けていた。

「あえいうえおあお~かけきくけこか――」
「あっ・・・」
「こ~~・・・?」

 そしてついにその日が来た。
 それは彼が初めて顔を出してから体内時計が回復してから逆算し約3日後の事だった。
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