5 / 50
投獄中の売国奴と泣き虫王子の二人は、出会いから始まる。
1.出会えたのは泣き虫王子、出会ったの死人寸前の売国奴
しおりを挟む
『裏切り者が!!』
『この売国奴目が! 国王の温情も忘れおって!!』
『何が名誉騎士だ、貴様の様な下賤の輩に与える訳がなかろう』
夢・・・か。
なんか懐かしい夢を見ていたようだったが、俺を罵倒する言葉が現実へと引き戻した。
けれど、見るならもっと心地よい夢の方がよかったかな。
そうだな、たとえば・・・。
・・・駄目だ、何も思い付かないな。
これと言って見たい過去の夢なんてなかった事に気が付き、ビクついて起き上がった身体を再び地面へと寝かせる。
一体どれだけの時間をこの牢獄で過ごしていたのだろうか。
荒れ果てた地面、何も見えない真っ暗闇な風景。
気が滅入ってしまう、そんなのはとうの昔に忘れ去ってしまった気持ちだ。
なんでこんな事になってしまったのか、どうしてこんなところに居ないといけないのか。そんな事を考えていたのは随分と昔に思える。
微かに開いた目から映る変わり映えのしない景色、あの時みた夜空と何ら変わりない。
俺には、何も無いのだと改めて事実を突き付けられているようだった。
ならきっと、このまま静かに息を引き取ってもいいだろう。決して誰にも迷惑は掛からないはずなのだから。
悔しいなぁ・・・僅かでもそう思える自分に驚きながらも、その程度しか思えないほど大した人生を送っていなかったと再び実感していた。
考えることすら面倒になる。だから考えてしまう。
本当にこのまま息を引き取ってもいいだろう・・・と。
「僕は・・! どうして・・・!!」
この世におさらばをしようとしていた俺の五感の一つがまだ機能している事を知らせた。
泣き声だ。微かに聞こえる泣き声が、俺の全身を何故か震撼させた。
声からしてかなり幼いように感じる。
何故泣いているのか俺にはわからない。
だが、本当に何故だろうか。俺は何年使ってないのかわからない動かそうとしていた。
「がぁ・・・ぐあ・・!!」
「ひぃ!!?」
おかしいな、声が出ない。
当然と言えば当然か。
「だ、誰かいるんですか」
震える小声が耳に入る。ほぼ音という音を遮断されている空間、どんな小さな音でも耳に入ってしまうのが衰弱している今の俺には、ありがたい。
「ん"! んぉぇ・・・ん"ー!!」
必死に声を出そうにも一向に声が発せられない。
何かの化け物染みた声になっているのがある意味で笑えてくる。
そんな俺を見兼ねたのか、鉄格子の前に人影が姿を現した。
「人間・・・です、か?」
「ぅん」
「声・・・でないんですか?」
「ぅん」
なんて物解りの良い小さい少年なんだ。ぱっと見の見た目は10代になるかならないかくらいの歳だろうか。暗くてよく見えないが間違いないだろう。
そんな子供が一体何用でこんな所に来ているかと、少年を見つめた。
「あ・・・えっと。すみません、ここに人がいるなんてわからなくて! あのその・・・ごめんなさい!!」
「ん"っんんんんーー!!!」
待ってぇええええー!!
言葉に出来ない俺の声が牢獄の中を響かせた。
少年は振り向く事無く部屋を後にして、ガチャリと扉が閉まる音が木霊しただけだった。
一人虚しく、鉄枷を嵌められたままの手で鉄格子を握り締め少年が去って行った扉を見つめていた。
俺は・・・一体何をやっているのだろうか。
少年を引き止めようと機能していない筋肉が動いた身体、出せもしない喉を動かして叫んだ声。
俺・・・死ぬ気あんのか。
それからの俺は、まるでもう一度少年・・・彼にまた会えた時の為にと身体を動かし始めた。
「ぁぁぁぁぁぁ~~~・・・あーーー」
声を取り戻そうと必死になって馬鹿みたいに五十音を一つ一つ呟きながら発声練習をしていた。
それからの俺の身体はまるで蘇ったかのようにみるみる内に生気を取り戻していった。何がそうさせているのか全くわからないまま、彼が来るのを待ち続けていた。
「あえいうえおあお~かけきくけこか――」
「あっ・・・」
「こ~~・・・?」
そしてついにその日が来た。
それは彼が初めて顔を出してから体内時計が回復してから逆算し約3日後の事だった。
『この売国奴目が! 国王の温情も忘れおって!!』
『何が名誉騎士だ、貴様の様な下賤の輩に与える訳がなかろう』
夢・・・か。
なんか懐かしい夢を見ていたようだったが、俺を罵倒する言葉が現実へと引き戻した。
けれど、見るならもっと心地よい夢の方がよかったかな。
そうだな、たとえば・・・。
・・・駄目だ、何も思い付かないな。
これと言って見たい過去の夢なんてなかった事に気が付き、ビクついて起き上がった身体を再び地面へと寝かせる。
一体どれだけの時間をこの牢獄で過ごしていたのだろうか。
荒れ果てた地面、何も見えない真っ暗闇な風景。
気が滅入ってしまう、そんなのはとうの昔に忘れ去ってしまった気持ちだ。
なんでこんな事になってしまったのか、どうしてこんなところに居ないといけないのか。そんな事を考えていたのは随分と昔に思える。
微かに開いた目から映る変わり映えのしない景色、あの時みた夜空と何ら変わりない。
俺には、何も無いのだと改めて事実を突き付けられているようだった。
ならきっと、このまま静かに息を引き取ってもいいだろう。決して誰にも迷惑は掛からないはずなのだから。
悔しいなぁ・・・僅かでもそう思える自分に驚きながらも、その程度しか思えないほど大した人生を送っていなかったと再び実感していた。
考えることすら面倒になる。だから考えてしまう。
本当にこのまま息を引き取ってもいいだろう・・・と。
「僕は・・! どうして・・・!!」
この世におさらばをしようとしていた俺の五感の一つがまだ機能している事を知らせた。
泣き声だ。微かに聞こえる泣き声が、俺の全身を何故か震撼させた。
声からしてかなり幼いように感じる。
何故泣いているのか俺にはわからない。
だが、本当に何故だろうか。俺は何年使ってないのかわからない動かそうとしていた。
「がぁ・・・ぐあ・・!!」
「ひぃ!!?」
おかしいな、声が出ない。
当然と言えば当然か。
「だ、誰かいるんですか」
震える小声が耳に入る。ほぼ音という音を遮断されている空間、どんな小さな音でも耳に入ってしまうのが衰弱している今の俺には、ありがたい。
「ん"! んぉぇ・・・ん"ー!!」
必死に声を出そうにも一向に声が発せられない。
何かの化け物染みた声になっているのがある意味で笑えてくる。
そんな俺を見兼ねたのか、鉄格子の前に人影が姿を現した。
「人間・・・です、か?」
「ぅん」
「声・・・でないんですか?」
「ぅん」
なんて物解りの良い小さい少年なんだ。ぱっと見の見た目は10代になるかならないかくらいの歳だろうか。暗くてよく見えないが間違いないだろう。
そんな子供が一体何用でこんな所に来ているかと、少年を見つめた。
「あ・・・えっと。すみません、ここに人がいるなんてわからなくて! あのその・・・ごめんなさい!!」
「ん"っんんんんーー!!!」
待ってぇええええー!!
言葉に出来ない俺の声が牢獄の中を響かせた。
少年は振り向く事無く部屋を後にして、ガチャリと扉が閉まる音が木霊しただけだった。
一人虚しく、鉄枷を嵌められたままの手で鉄格子を握り締め少年が去って行った扉を見つめていた。
俺は・・・一体何をやっているのだろうか。
少年を引き止めようと機能していない筋肉が動いた身体、出せもしない喉を動かして叫んだ声。
俺・・・死ぬ気あんのか。
それからの俺は、まるでもう一度少年・・・彼にまた会えた時の為にと身体を動かし始めた。
「ぁぁぁぁぁぁ~~~・・・あーーー」
声を取り戻そうと必死になって馬鹿みたいに五十音を一つ一つ呟きながら発声練習をしていた。
それからの俺の身体はまるで蘇ったかのようにみるみる内に生気を取り戻していった。何がそうさせているのか全くわからないまま、彼が来るのを待ち続けていた。
「あえいうえおあお~かけきくけこか――」
「あっ・・・」
「こ~~・・・?」
そしてついにその日が来た。
それは彼が初めて顔を出してから体内時計が回復してから逆算し約3日後の事だった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。 〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜
トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!?
婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。
気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。
美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。
けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。
食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉!
「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」
港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。
気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。
――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談)
*AIと一緒に書いています*
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
元商社マンの俺、異世界と日本を行き来できるチートをゲットしたので、のんびり貿易商でも始めます~現代の便利グッズは異世界では最強でした~
黒崎隼人
ファンタジー
「もう限界だ……」
過労で商社を辞めた俺、白石悠斗(28)が次に目覚めた場所は、魔物が闊歩する異世界だった!?
絶体絶命のピンチに発現したのは、現代日本と異世界を自由に行き来できる【往還の門】と、なんでも収納できる【次元倉庫】というとんでもないチートスキル!
「これ、最強すぎないか?」
試しにコンビニのレトルトカレーを村人に振る舞えば「神の食べ物!」と崇められ、百均のカッターナイフが高級品として売れる始末。
元商社マンの知識と現代日本の物資を武器に、俺は異世界で商売を始めることを決意する。
食文化、技術、物流――全てが未発達なこの世界で、現代知識は無双の力を発揮する!
辺境の村から成り上がり、やがては世界経済を、そして二つの世界の運命をも動かしていく。
元サラリーマンの、異世界成り上がり交易ファンタジー、ここに開店!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる