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投獄中の売国奴と泣き虫王子の二人は、出会いから始まる。
5.考えるフォーズ、気になるルビヤ
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さて、さて。ふざけたやり取りはこれで終わりと告げるように俺はルビヤに出された昼食を頬張りながら色々聞く事にした。
のだが、まず何から聞いてのがいいのか相変わらず思考が纏まらないでいる。
すると、ルビヤが俺の顔をまじまじと見ながら口を開いた。
「フォーズさんって、なんでこんな所にいるんですか? あ、いや! すみませんそんな深い意味は無くてただ好奇心と言いますかその・・・」
聞くだけ聞いて慌てふためいて忙しい奴だな。
とは、言ってもその質問に答えようと俺は顎に手を当てた。
『売国奴が!』
思い当たる言葉はこれしかなかった。
俺は先日見た夢の通り、先行新兵部隊として前線で戦っていたのは覚えている。
撤退を余儀なくされた、けれど俺は撤退する事無く戦いに身を投じた・・はず。
「気が付いたら・・・みたいな?」
「あの、まだからかってます?」
「いや、それがさ」
ルビヤには悪いが実際問題記憶があやふやだ。
ただ言えることは一つだ。
なんで俺生きてるのだろうという事だ。
ありとあらゆる事が脳裏にこびり付いている癖にあやふやだ。まるで体が拒否反応を起こすかの如く正確に思い出せずいる。
「なんか・・やらかした、と思う。多分」
「そう・・・ですか」
一度しんみりとした空気が流れたがルビヤが立ち上がり、パッパとお尻の汚れを払った。
もうおしまいだと告げたのだ。
「夜・・・また来てもいいですか」
「え?」
ルビヤの言う言葉に一瞬戸惑いを見せてしまった。そんな中でルビヤはなんかもじもじとこちらに目線を合わせるのか合わせないのかはっきりしなかった。
あぁなるほど、これは大人の対応というのが大事なやつだ。
「あぁ、いつでも来ていい・・いてぇ!!」
顎がつった。
慣れない笑顔なんて浮かべるからこんな事になる。
そんな俺を見て心配になるルビヤ。一回一回反応を見せて俺以上に忙しい奴だ。
片手で大丈夫大丈夫と振るいながら指でオッケーとサインを送ったらルビヤは笑みを浮かべ律儀にお辞儀をしてから部屋を後にした。
「いててて・・・次は表情筋のトレーニングか、完治までは長いなこりゃ」
次の来訪は恐らく夕方の食事だろう。今から何が来るのか楽しみである。
こんなにも食事を心の底から楽しみしたのはいつぶりだろうとふと考えてしまう。
それ以上に、なんだろう。言葉に表す事の出来ない感覚を覚える。
次会う時までにしっかりと何を聞こうか考えておかなくてはいけないなと、自分の身に何があったのかを考えるよりも先に考えていたのだった。
それから昼食を朝食によりも早く済ませて俺は色々なトレーニングを始めていた。
筋トレ、柔軟、発声練習、スマイルの練習。
そして魔力の確認だ。
基本的に俺は大それた魔術を覚えることはしてこなかった。優秀なエリート達に比べて平凡も平凡だったからだ。
だから俺が選んだ道は単純な物だった。
強大な魔術よりも簡単かつ戦闘に役立つ魔術を優先的に取得する事に専念した。
一番に覚えたのは単純な身体強化系魔術だ。これは簡単かつ誰でも扱うことのできる物だが、ただ一口に身体強化と言ってもその種類は、細かく分けると膨大だった。
腕力強化、脚力強化、筋肉増加、全体強化と上げたらキリがない。
だから俺はあらゆる魔術を調べ尽くし、自分に合う物だけをピックアップしてそれを磨き上げた。
「けどこれ、多分魔力封印の枷だろうな」
自分の中に魔力が回復しつつある感覚はある。
けれどそれを放出する事が出来ないでいた、その原因は恐らく手首にはめられているこの鉄枷、そしてこの部屋だ。
どうゆう仕組なのか話しを聞いたレベルでしたか知らないが、十中八九魔力を使わせない為の部屋、牢獄だろう。
改めて石で作られた周囲を見る。
きっとこの鉄枷と同じ材質か、それ以上の物で作り上げられているに違いない。それもそうだよな、魔術をぶっぱなされて簡単に脱獄出来る牢獄なんてお笑い話にもならない。
だからと言って剣や槍で壊せるかと言ったら、出来なくは無いが。
俺自身、今は習得してきた魔術は使えない。手に付けられている枷が原因なのだから当然だ。
「ま、別に脱獄したいなんて思わないがな」
トレーニングの休憩がてら仰向けになる。
ふと出た自分の発言に違和感を覚えつつも不思議と間違っていないと感じていた。
俺は何かをした。何かこんなところにぶち込まれるようなことをしたに違い無い。だからここにいるのがきっと正しいのだろう。
それに・・・。
「今の俺には・・・薄暗い牢獄が合ってる、か」
何も無い人間には、何も無い牢獄がお似合いだ。
きっと、何も知らされず何も出来ないまま外に投げ出された方がきっと早死にすると安易に想像できる。
そんな事くらいなら、ここで少し英気を養って考えをまとめた方がいい。
そう・・・これからの事の考えを。
はぁ・・・、溜息が出る。
何度も思った事だがまた頭に浮かび上がってしまう。
何がこれからの事だか。
今までのただ夢に向かって我武者羅になって突き進んだ結果を俺は今突き付けられているというのに。
どんなに今あがいてもそれ以外を捨ててきた過去を変えることなんて出来ない。子供のルビヤと言葉を交わす度におぼつかない自分に嫌気をさす。
そしてこの牢獄で拘束されているというのは紛れも無い事実。
それはつまり、再び俺は夢を叶える事がもう出来ないという事実に繋がるのだった。
「はぁ・・・涙すら出ないでやんの、俺」
ふと初めて見た時のルビヤを思い出す。
俺には何故ルビヤが泣いていたのか、わかる気がした。
もちろん細かい詳細は知らない、けれど人知れずこんな所にまで来て泣いていた理由なんて一つしかないと確信を持った。
「無力・・・か」
ポツリと呟く言葉。
それはルビヤに向けた言葉なのか、それとも今の自分自身に向けた言葉なのか。
どちらも違った。
ただ、俺は呟きたかった。その言葉を・・・。
のだが、まず何から聞いてのがいいのか相変わらず思考が纏まらないでいる。
すると、ルビヤが俺の顔をまじまじと見ながら口を開いた。
「フォーズさんって、なんでこんな所にいるんですか? あ、いや! すみませんそんな深い意味は無くてただ好奇心と言いますかその・・・」
聞くだけ聞いて慌てふためいて忙しい奴だな。
とは、言ってもその質問に答えようと俺は顎に手を当てた。
『売国奴が!』
思い当たる言葉はこれしかなかった。
俺は先日見た夢の通り、先行新兵部隊として前線で戦っていたのは覚えている。
撤退を余儀なくされた、けれど俺は撤退する事無く戦いに身を投じた・・はず。
「気が付いたら・・・みたいな?」
「あの、まだからかってます?」
「いや、それがさ」
ルビヤには悪いが実際問題記憶があやふやだ。
ただ言えることは一つだ。
なんで俺生きてるのだろうという事だ。
ありとあらゆる事が脳裏にこびり付いている癖にあやふやだ。まるで体が拒否反応を起こすかの如く正確に思い出せずいる。
「なんか・・やらかした、と思う。多分」
「そう・・・ですか」
一度しんみりとした空気が流れたがルビヤが立ち上がり、パッパとお尻の汚れを払った。
もうおしまいだと告げたのだ。
「夜・・・また来てもいいですか」
「え?」
ルビヤの言う言葉に一瞬戸惑いを見せてしまった。そんな中でルビヤはなんかもじもじとこちらに目線を合わせるのか合わせないのかはっきりしなかった。
あぁなるほど、これは大人の対応というのが大事なやつだ。
「あぁ、いつでも来ていい・・いてぇ!!」
顎がつった。
慣れない笑顔なんて浮かべるからこんな事になる。
そんな俺を見て心配になるルビヤ。一回一回反応を見せて俺以上に忙しい奴だ。
片手で大丈夫大丈夫と振るいながら指でオッケーとサインを送ったらルビヤは笑みを浮かべ律儀にお辞儀をしてから部屋を後にした。
「いててて・・・次は表情筋のトレーニングか、完治までは長いなこりゃ」
次の来訪は恐らく夕方の食事だろう。今から何が来るのか楽しみである。
こんなにも食事を心の底から楽しみしたのはいつぶりだろうとふと考えてしまう。
それ以上に、なんだろう。言葉に表す事の出来ない感覚を覚える。
次会う時までにしっかりと何を聞こうか考えておかなくてはいけないなと、自分の身に何があったのかを考えるよりも先に考えていたのだった。
それから昼食を朝食によりも早く済ませて俺は色々なトレーニングを始めていた。
筋トレ、柔軟、発声練習、スマイルの練習。
そして魔力の確認だ。
基本的に俺は大それた魔術を覚えることはしてこなかった。優秀なエリート達に比べて平凡も平凡だったからだ。
だから俺が選んだ道は単純な物だった。
強大な魔術よりも簡単かつ戦闘に役立つ魔術を優先的に取得する事に専念した。
一番に覚えたのは単純な身体強化系魔術だ。これは簡単かつ誰でも扱うことのできる物だが、ただ一口に身体強化と言ってもその種類は、細かく分けると膨大だった。
腕力強化、脚力強化、筋肉増加、全体強化と上げたらキリがない。
だから俺はあらゆる魔術を調べ尽くし、自分に合う物だけをピックアップしてそれを磨き上げた。
「けどこれ、多分魔力封印の枷だろうな」
自分の中に魔力が回復しつつある感覚はある。
けれどそれを放出する事が出来ないでいた、その原因は恐らく手首にはめられているこの鉄枷、そしてこの部屋だ。
どうゆう仕組なのか話しを聞いたレベルでしたか知らないが、十中八九魔力を使わせない為の部屋、牢獄だろう。
改めて石で作られた周囲を見る。
きっとこの鉄枷と同じ材質か、それ以上の物で作り上げられているに違いない。それもそうだよな、魔術をぶっぱなされて簡単に脱獄出来る牢獄なんてお笑い話にもならない。
だからと言って剣や槍で壊せるかと言ったら、出来なくは無いが。
俺自身、今は習得してきた魔術は使えない。手に付けられている枷が原因なのだから当然だ。
「ま、別に脱獄したいなんて思わないがな」
トレーニングの休憩がてら仰向けになる。
ふと出た自分の発言に違和感を覚えつつも不思議と間違っていないと感じていた。
俺は何かをした。何かこんなところにぶち込まれるようなことをしたに違い無い。だからここにいるのがきっと正しいのだろう。
それに・・・。
「今の俺には・・・薄暗い牢獄が合ってる、か」
何も無い人間には、何も無い牢獄がお似合いだ。
きっと、何も知らされず何も出来ないまま外に投げ出された方がきっと早死にすると安易に想像できる。
そんな事くらいなら、ここで少し英気を養って考えをまとめた方がいい。
そう・・・これからの事の考えを。
はぁ・・・、溜息が出る。
何度も思った事だがまた頭に浮かび上がってしまう。
何がこれからの事だか。
今までのただ夢に向かって我武者羅になって突き進んだ結果を俺は今突き付けられているというのに。
どんなに今あがいてもそれ以外を捨ててきた過去を変えることなんて出来ない。子供のルビヤと言葉を交わす度におぼつかない自分に嫌気をさす。
そしてこの牢獄で拘束されているというのは紛れも無い事実。
それはつまり、再び俺は夢を叶える事がもう出来ないという事実に繋がるのだった。
「はぁ・・・涙すら出ないでやんの、俺」
ふと初めて見た時のルビヤを思い出す。
俺には何故ルビヤが泣いていたのか、わかる気がした。
もちろん細かい詳細は知らない、けれど人知れずこんな所にまで来て泣いていた理由なんて一つしかないと確信を持った。
「無力・・・か」
ポツリと呟く言葉。
それはルビヤに向けた言葉なのか、それとも今の自分自身に向けた言葉なのか。
どちらも違った。
ただ、俺は呟きたかった。その言葉を・・・。
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