【完結】投獄中の売国奴が出会ったのは、敵国の泣き虫王子だった。 ~期待された神器が"柄"ってだけで迫害を受けた~

三ツ三

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投獄中の売国奴と泣き虫王子の二人は、出会いから始まる。

6.事実を語るルビヤ、事実に驚愕するフォーズ

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 夕方になった。牢獄からは一切外の光がわからない為に正確な時間なんてわからない。
 だが今の俺には今が夕方なのだと確信を持って言える。

 夕食の時間だ!

「肉・・・!?」
「僕の執事が用意してくれた物ですので、凄く美味しいですよ」
「執事?」
「はい、元はと言えばここを教えてくれたのは、その執事なので」

 ふ~~~ん。あむ。

 あっ・・死ぬ。これ逝ってしまわれそうになる。

 いかんいかん、昼食はこんな馬鹿げたことばかりしてたから一向に話しが進まなかったんだ。
 昼食から今まで落ち着いて考えた会話の流れを今一度整理・・・。

「フォーズさんって、本当に、何かしたんですか」

 考えを巡らせている途中を割り込むようにルビヤが思う疑問をぶつけてきた。

 本当に何かしたかどうか?
 うん・・・ん?

「した・・・んだろう? 流石に善良な人間をこんな格好にはしないだろう普通」
「不敬罪とか」

 あー、この子絶対に俺をその辺の輩か盗賊だと思ってるだろ。
 
 ならば見せてやる。と俺は立ち上がって自らの回復しつつある全身を見せる。

「こう見えても俺、名の知れた騎士だったんだからな! 敵国の兵達は俺に怖れ慄き、味方の兵はその戦う様を見るだけで士気が忽ち上昇していった。敵からは死神と恐れられ、味方からは女神と称えられる存在。それが俺! フォーズだぞ!」
「ふぇ~~、フォーズさんって凄い人だったんですね」

 パチパチと音が鳴らない程度に手を叩く仕草を見せるルビヤ。
 まじまじと視線を俺に浴びせるルビヤを見ると、それが俺を称賛しているのかただ単に馬鹿にしているのか、飽きれているのか全く読み取る事が出来ない。

 ので、恥ずかしい気持ちを隠しつつ腰を落とし座って食事を再開する。

「ん~~、結構僕、騎士やそういった話しは出来るだけ知っておくようにしてたんですけど」
「ならあれは知ってるか? コウゲリン攻防戦」

 説明しよう! コウゲリン攻防戦とは世界でも指折りに入る程の大きな川、コウゲリン河を挟んだ激戦なのだ。
 コウゲリン河とは、オリオセージ王国とアインドルゼ王国の国境に流れるくっそでかい川の事だ!
 そこはお互い立地が悪く、両国出来るだけ戦闘は避けるようにされていた。

 しかし!

「いや~あの時は大変だったよ」
「そうらしいですね、撤退を余儀なくされて追い込まれた先があの河だったと聞き及んでます。よくご無事に帰還されましたねフォーズさん」
「うんうん・・・ん?」

 余儀なく、撤退?
 あれ、そんなんだったけか?

 いやいやいや逆だろう。
 逃げ惑うアインドルゼ兵達が次々と決死の覚悟で河に飛び込むもんだから殲滅させるのに凄い苦労したって話なんだが。
 前もって対水中用魔術を学んでいてよかったと、今でも詳細に思い出せる程に覚えているんだが。

「ルビヤ・・・えっと、カイエン渓谷戦は知ってるか?」
「あれは酷い話ですよね! 味方と合流する為に渓谷を登っている最中に敵が先回りされてまるで蹴落とすかのように次々と。何でも敵に捕虜で捕まった兵から情報を吐き出させた、条約違反の非道行為が行われたって噂を聞きました」

 うん。うんうん、間違いないねうん。
 非道行為? いやあれはちょっとした・・・そう会話だよ会話、今俺がルビヤとしている会話と同じだようん。
 なんか彼は最後は耐えられなくて自決したけど、俺が強要させたわけじゃないし? 条約違反ではないし?

 蹴落としたなんてそんな人聞きの悪い。
 ただちょっとドーンって押しただけだよドーンって、あとあれほら、ちょっと大きめの石をこう~コロコロって転がしただけだし。

「んんんんんんんんんん」
「すみませんフォーズさん! 思い出したくない過去を思い出させてしまって、もちろん疑ってる訳ではないんですよ! ただそこまでの歴戦をくぐり抜けていたのであれば、絶対噂くらい耳にするはず・・・。本当に勉強不足でごめんなさい!」
「んんんんんんんっっっ!!!!」

 あれ。
 おかしいな。

 いや、この牢獄に来てから正常なんて言葉はきっと通用しない事はわかっていた。
 けれど、この事実だけはどうしても受け入れ難い物だった。

 確認するのも恐れてしまう程に。

「もしよかったら、僕が力になります! そんなに凄い人がこんな所にいるなんて何か理由があるはずですもんね。この"アインドルゼ城"には大きな図書館も完備されていますので、もっと勉強して力になってみせます!!」
「アイン・・ドルゼ、城・・・?」

 ふと以前ルビヤが城内なんて事を言っていた事を思い出した。
 
 少なからずそういった隠し牢獄みたいな場所にいるのかもなんて予想はしていた。ルビヤが来るまでずっと放置されてきたのだから。
 
 ただ・・・まさか・・・ね?

「"オリオセージ"からみんなを守って下さい、フォーズさん!!」

「う、うん!! うん・・・ぅん」
「どうかしましたか? フォーズさん」

 あぁー・・・そう、ですかー。

 状況という名の暴力を強引に口の中に押し込まれた気分だ。
 今ルビヤと話をした内容全て、辻褄が合わない訳だ。当然だ。

 だって今俺がいるのが予想だにしない場所だったのだから。


(なんで俺、敵国の牢獄に居るんだ・・・)


 新たな疑問が生まれてしまった瞬間だったのだった・・・。 
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