【完結】投獄中の売国奴が出会ったのは、敵国の泣き虫王子だった。 ~期待された神器が"柄"ってだけで迫害を受けた~

三ツ三

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信じたい王子と裏切られた売国奴

10.歓迎されるルビヤ、歓迎したい村人

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 日が暮れ太陽が夕焼けの明かりへと変わろうとしていた時間。

 シアマ村に到着したルビヤ達は歓迎を受けていた。
 村の人々が次々とルビヤの姿を一目見ようと押し推せている状態だった。

 小さい人だかりが出来てしまい、それを掻き分けるように、体格が良く無精髭を生やした男が一人、ルビヤの前に姿を出した。

「お待ちしておりましたルビヤ様、ご足労頂きありがとうございます」
「ご無沙汰しております村長。数日お世話になります」

 身長差を考慮するように村長は地面に膝を付く、そしてルビヤと村長は固く握手を交わした。

 その時のルビヤは凛々しい顔立ちで少年の面影は一切無かった。

「早速、明日からのお話を進めたいのですが・・・あの、あちらは?」

 村長はルビヤの乗ってきた馬車とは違う複数の馬車に目を向けた。村長だけでは無く、他の村人達もその存在に意識を向けられていた。

 ルビヤは少しだけ下を向き、村長から目線を外してしまったが、すぐに顔を上げ村長に答えた。

「今回の監査の付添・・・だそうです、パーズお義兄さんの」
「パーズ・・・様ですか」

 その名が出た途端、明るい雰囲気が一変した。
 中にはその場から離れようとしている者、実際に離れた者達も現れ出した。

 空気が変わり始めた時、まるで自らの存在を証明するかのように馬車から一人の男が降りてきた。お世辞にも殺風景を否定出来ないシアマ村に対して似つかわしくない格好で。

「なんだ、この村は歓迎会の催し物の一つも無いのか」

 姿を見せた第一声、村の人々はどよめきを隠せないでいた。
 すぐさま村長がお詫びの言葉と共に頭を下げ、すぐに準備に掛かると言葉を掛けるも、パーズはそんな村長の言葉足蹴にしたのだった。

「貴様等のような汚らしい者達の歓迎なんて受けても嬉しくも何ともない。所詮は愚弟が任された村、という事がよくわかった」

 毒を吐くパーズ。それでもなお村長は頭を下げ続けていた。見えない所では、今にもパーズに襲いかかろうとした若者も居たが皆がそれを止めている光景をルビヤは見てしまい、誰にも悟られないように顔を歪ませていた。

「まあいい、ルビヤ。私はこんな村の宿屋なんかに止まるくらいなら馬車で過ごす、お前は子供のお使いを早く済ませるよう努力するんだな」
「・・・はい、パーズお義兄さん」

 そうして、パーズは再び馬車に乗り込み村から少し離れるようにして移動を始めたのであった。
 その姿が見えなくなってようやく緊張の糸が解けみな溜め込んだ空気を吐き出していた。

「申し訳ありません村長、本当に気を使わせてしまって」
「いえいえ、実際城下町とかに比べれば事実ですのでお気に為さらないでください。それより、ルビヤ様への労いを兼ねた催し物はありますのでよかったらどうぞ」
「お気遣いありがとうございます、ではお言葉に甘えさせて貰います」

 再びルビヤの顔から笑みが浮かび村長や村人達も釣られるように笑みを溢した。
 幼いルビヤの存在を守るかのように、村全体がルビヤを歓迎し、そしてルビヤもまた元気な村を見れて少しホッとした気持ちになっていたのは誰の目から見ても明らかだった。

「では、ルビヤ様。私は明日の準備等で少しお傍をお離れ致します」
「うん、無理しない程度でいいから、すぐに戻ってくるようにお願いね」
「お心遣い感謝致します。では村長様、しばしの間ルビヤ様をお願い致します」
「えぇ、エルター殿の分もしっかりと用意しておりますのでお早めに」

 そうしてようやく、ルビヤは村の中へと入って行ったのだった。
 案内されたのは、村一番に大きい集会所だった。中へ案内された瞬間ルビヤは大きな歓声に驚いてしまった。


―ルビヤ様!! シアマ村へようこそ!!!―


 大喝采が起きた。
 集会所の中もルビヤの為に沢山の手作り装飾品で飾られ、出入り口で佇むルビヤに対してルビヤよりも小さな子供二人が花束を渡したのだった。

「ルビヤ様、おつとめごくろうさまです」
「ありがとう、綺麗な花だね」
「あれ、しつじさんは?」
「ごめんね、後で来るから僕の方から渡しておくね、ありがとう」
「うん!! わかった!!」

 花束が渡された時、更なる喝采が巻き起こった。
 催し物は用意していない。そんな言葉をルビヤは思い出していたが、村長もまた嘘を言っている訳ではなかった。

 これはルビヤの為の物であり、パーズに合う、パーズが求めるような物は用意していないという事であった。

「それでは! ルビヤ様の歓迎と村の発展を祈念して! 乾杯!!!」

「「「「「乾杯!!!!!」」」」」


 パーズという予想外の存在で一瞬空気が重くなってしまったが、それに引きずられる事無く、多くの人々が笑顔に満ちた歓迎会が行われたのであった・・・。





















「チーズ干し肉・・・あむっもぐもぐもぐ・・うまっ!!?」


 そんな夜、フォーズに、一つの好物が生まれていたのであった。
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