【完結】投獄中の売国奴が出会ったのは、敵国の泣き虫王子だった。 ~期待された神器が"柄"ってだけで迫害を受けた~

三ツ三

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信じたい王子と裏切られた売国奴

11.力になりたいルビヤ、悩む村長

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 ルビヤのシアマ村での監査という仕事。
 これは商業大臣から各地の村での生産物管理に関する仕事の一環である。

 アインドルゼが組織する商業組合の援助を受けている村や町等が対象になっており、組合への報告に偽りが無いか、その村が今後も援助が必要なのかどうか見極める為に必要な大事な仕事である。

 幸いシアマ村はルビヤを慕っている為その面目を潰さないようにするのも含め善良な村の一つ。
 今回の訪問は形式上の仕事ではあるが、ルビヤとしてはこういった機械に村の様子を自分の目で見て何か不自由が無いかを確かめたいと思っている。

 そういった前向きな行動が、シアマ村の人々がルビヤを慕う要素の大きな要素になっていたのであった。


「見慣れない鉱石・・・ですか」

 夜を村で明かし、村長とその関係者達と共に同じ集会所で報告を聞きながら朝食を取るルビヤ。
 村長達は早速村で起きた話題を切り出した。

「はい、シアマ山の奥深くにありました。通常業務中に突然大きな土砂崩れに遭遇してしまいまして」
「大丈夫だったんですか!? 負傷者は!?」
「えぇ、奇跡的に負傷者はいませんでした。土砂崩れと言っても小さな採掘場の一つが埋まってしまう程度の物だったので問題は無かったんですが」
「ほう、つまりその採掘場の奥に噂の鉱石があったということですな」

 見慣れない鉱石。
 シアマ村は主に石炭や武器や鎧などで使う鉄の材料を採掘する場として知られていた。
 規模は大手の街などに比べたら小規模ではあるが、村の商業を成り立たせるには十二分の規模である。

 そんな村に、見慣れない鉱石場が現れたとルビヤは報告を受けていた。

「詳細な報告を上げようにもつい先日の事でして、それに立ち入れるかどうか悩ましく出来ませんでした」
「まさか・・・"魔物"ですか!?」

 ルビヤが口にした言葉に村長含め全員が首を縦に振るった。

 魔物。
 この世界に存在する人間の外敵の一つである。
 通常の生物とは異なり、凶暴な存在。下手に戦いを挑むようなら命を落としかねない。

「どういった魔物が居たのか実際に見た訳では無いのですが、如何せん我々の村には専属の"冒険者"などがいる訳ではないので」

 魔物退治を専門に仕事を請け負う存在、それが冒険者だった。
 お金を払い、クエストを依頼しそれを冒険者が受ければ魔物退治に動いてくれるようなシステムである。
 何処の国にも基本的には属さない冒険者を束ねる組織であるギルドがあり、シアマのような非力な村にとってはありがたい存在ではある。

「そうなると調査はやっぱりギルドに護衛を依頼するのが一番かもしれませんね。すみません、お力になれそうに無くて」
「いえ!! 突然の事でしたので仕方ありません。それにこうしてご相談させて頂けるだけで感謝しているんです」

 非力なのはシアマもルビヤも一緒だった。
 近衛私団のような存在でもあれば簡単なのだが、生憎ルビヤには遠い存在である。

「・・・・・・」

 それでもルビヤは考え続けていた。
 何か役に立つ事は無いかと。思考を巡らせていた。

「村長、一度その場所まで案内して頂く事は可能ですか? もちろん中まで確認するつもりは無いので」
「わかりました、では早速行きましょうか」

 今日の行動の方針が決まりみな朝食を済ませようとした。

 ルビヤもまた出された朝食を口に運んでいる、誰かに影響されたかのように一口一口をしっかりと味わい堪能するように・・・。


 それからのルビヤの足取りは思った以上に軽かった。
 集会所を出てから村を行き交う人々に笑顔で朝の挨拶をされる度にルビヤもまた釣られるように笑みを浮かべていた。

 本当にシアマ村の人々はお世辞にも裕福とは呼べないながらもみな楽しそうに、そして幸せそうに日々を送っている。

「よし! 僕も頑張らないだよね」

 そんな光景が目に入れば気合いが入っていく。
 あまり気負いしないように冷静に、ルビヤは熱く心を滾らせていたのであった。


 ルビヤの気持ちは、目的地が目に入っても変わることはなかった。
 

「ここが、その採掘場です。今は誰も立ち入れないようにしていますが・・・」

 ここまで案内してきた村長が少し勿体ぶりな言い方をしルビヤは村長に目線を送るとすぐにその原因を理解した。

 それは、シアマ村に来る前に言われた事の一つなのだと。

「盗賊・・・ですか」
「はい、昨日もどうやら誰かが入った痕跡があったらしく、当然村の人間じゃない事は確認済みです」

 ルビヤは目の前の鉄格子で作られた簡易的バリケードに目をやった。動物などでは簡単に退かす事は容易では無い。

 だが、人間ではあれば、複数の人員があれば簡単に抜けられる物。もちろんガチガチに固めてしまった場合は、いざ調査をする時の手間が掛かる為仕方ない処置だった。


「どうしましょうか、ルビヤ様」
「そうですね・・・」

 特別何かをする為に来たわけでは無い、ただ単に現場に来れば何か良い案が浮かぶのではないかと思い足を運んだ。
 目の前にはバリケード、そして問題は村長の言う盗賊だ。ならばと、ルビヤは一つの案を思い浮かべた。

「とりあえず、バリケードをもう少し頑丈にしましょう。出来れば村の者だけが入れるように、話しを聞く限りでは魔物が出てくる様子は無くとも盗賊が魔物を刺激し兼ねないので」
「そうですね、わかりました。早速取りかかります」
「はい、では一度村に戻り――」


 皆がすぐに踵を返した時だった。
 時間は出来るだけ惜しい、誰もがそう望んでいるの。

 それなのに、皆が一斉に動きを止めたのだった。


「なんで引き返す必要があるんだ? ルビヤ」


 そこには、村で見た以上に不釣り合いな変わらない格好で佇んでいるパーズの姿があったのだった・・・。




























「はっ・・・しまった! ルビヤ起こしに来ないんだった」

 そんな事態を一切知らないフォーズはいつもよりも長く寝ていたのであった。
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