【完結】投獄中の売国奴が出会ったのは、敵国の泣き虫王子だった。 ~期待された神器が"柄"ってだけで迫害を受けた~

三ツ三

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信じたい王子と裏切られた売国奴

12.強引なパーズ、決断するルビヤ

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 最悪のタイミングとは常に人々を苦しめる物。
 どれだけの徳を積もうとどれだけの力を得ようと平等に訪れる物。

 ルビヤにとって、それは今を措いて他に無かった。

「早期解決、それ以外に何があるっていうんだルビヤ?」
「ですが、お義兄さん!」
「俺に意見するというのか!? 私が知らぬ間に随分と貴様は偉くなったようだな!?」

 パーズの激昂が空気を震わせた。

 誰もがその言葉に反論することが出来ない。パーズが正論を言っているからでは無い。誰もが言葉を詰まらせるしかなかった為だ。

「だがな、腹違いの弟とは言え私は兄だ。その威厳を見せねばならぬ、言の葉では無く、な」

 するとパーズは堂々とした足取りでルビヤの横を通り村人達が作ったバリケード前、例の採掘場入口の前に立つ。
 その行動に誰も気を落としている中、再びパーズは声を荒げる。

「何をしている!! 早くこの邪魔物を退かせ!!」

 立ち入る事を禁じさせるバリケードの撤去。もはや説明は不要だった。
 パーズは中へ入ろうと言うのであった。
 村長含めた村人達がパーズの言う通りにバリケードの撤去に勤しむ。

「さぁ、何をしているルビヤ」
「え? 僕・・・ですか」
「当たり前だろう? こんな汚らしい村の監査は、お前の仕事だろう。ならば同行しないでどうする」
「お待ちください! パーズ様、ルビヤ様は!」
「知っておるは、それでも・・・だよな? ルビヤ」

 それはパーズの挑発だった。
 どんなに取り繕った所で、シアマ村の監査はルビヤの仕事、屁理屈だろうとそれはルビヤにとって断れない理由としては十分だった。
 
 もちろん採掘場へ向うつもりがあったわけでは無い為、ルビヤには相応の準備、装備品があるわけでは無い。
 対してパーズは、まるでこうする事を前もって準備していたかのように、腰に剣をぶら下げている。

 つまり、この先に魔物がいる。危険が伴う可能性があるということ。
 そして何よりも見慣れない鉱石という未知の情報もまた、パーズの耳に入っている事は間違いないと確信したルビヤ。

「では、私も同行させて頂きます」
「ならぬ、私も護衛を置いていくのだ」
「しかし!」
「くどいぞ、それとも執事の一人も居ないと何も出来ない無能、だと認めるって事でいいんだなルビヤ」
「・・・わかりました」
「ルビヤ様・・!」

 ルビヤは意を決し歩き出す。
 無能だと認める、そんな事はどうでもよかった。自らが罵られ迫害を受ける事には慣れていたルビヤ。
 そんな事よりも堪えられないモノがルビヤにはあった。

 ルビヤはここへ来るまでのシアマ村の人々の顔が脳裏に浮かび上がっていた。

 幸福な一時。
 ここでパーズに刃向うと何があるのか、ただでさえ行動が予測出来ないパーズが何をしでかすか、その方が魔物よりも恐怖を感じていた。

「良い決断だ、それでこそだ」

 ルビヤの決断に不敵な笑みを浮かべるパーズ。

 そして同時に、バリケードの撤去が終わり洞窟へと続く出入り口が姿を現したのであった。


「それじゃあ・・・行きます」


 こうしてルビヤは再び足を進め、パーズの前を歩き採掘場の洞窟へと踏み入れるのであった。
 非力で無力、ルビヤよりも何も出来ない自分達に嫌気を感じると同時にただ無事を祈るばかりの村人達だった。
 だが、ルビヤの姿が見えなくなった途端に口を動かしたのは村長だった。

「すぐに村に帰り若い奴等を集めるんだ!! いざという時はわかってるなお前等!!」
「はい!! ルビヤ様だけは死なせてはいけない!」
「すぐに掻き集めてきます!」

「エルター殿、よろしいですね。我々としてもルビヤ様を失う訳には・・・」
「わかっております。私も、最善を尽くす事をお約束します、ルビヤ様の為に・・・"どんな手段"を使っても」





























「朝食と昼食を同時に取る・・・贅沢っ!」

 二つの携帯食糧を貪る。ルビヤが今危機に瀕している事を知らずに・・・。
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