【完結】投獄中の売国奴が出会ったのは、敵国の泣き虫王子だった。 ~期待された神器が"柄"ってだけで迫害を受けた~

三ツ三

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信じたい王子と裏切られた売国奴

13.逆らえないルビヤ、新たな事実

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 暗い道が続く。
 特殊な鉱石による明かりが点々と付けられているが、明かりと明かりの間は暗く、下手に進むと転んでしまいそうになる足場。

 良い環境とは言えない空間で、パーズはルビヤに早く進むように煽る。
 そんな言葉に堪えながらもルビヤは周囲をしっかりと確認しながら前に進んでいく。
 進めば進むほど、嫌な空気が全身に纏わり付く感覚に襲われる。
 それでもルビヤは、止まる事無く先へ進んだ。


 そんな時だった。


「待ってましたぜ、大将」
「っ!!? あなた達は!?」

 進んだ先には、複数の人間が採掘場の一部で屯っていた。
 見た目はあまりに小汚く、見るからに村の人間だとは思えず、思い当たる節は一つしかなかった。

「盗賊・・・なんで!?」
「なんで!? だってよー!! あははははははは!!!」

 驚きのあまり進んできた足を引かせてしまった時だった。
 ルビヤは、背後にいる人間に気付かずぶつかってしまった。

「っ!?」
「悪く思わんで下さいね、こっちも"仕事"なんでね」
「何を・・・えっ! まさか!!」

 突然背後に立っていた大男に両手首を掴まれ拘束されてしまう。 
 抵抗をしようとジタバタと動くもルビヤの腕力では盗賊の大男の力に太刀打ちできない。その結果、無抵抗のままルビヤは拘束されてしまった。

「お義兄さん! これは一体どうゆう事ですか!!?」
「どうゆうとは、何を指して言ってるかわからんな。それで、貴様等、首尾はどうなんだ」
「へい、情報通りこの先に見慣れない鉱石場がありました。それとこれも情報通り魔物が、物すげぇデカイのが一体確認できやしたぜ」

 ルビヤが見る光景は、考えたくも無い物だった。
 盗賊の人間が、兄であるパーズに頭を垂れている物だった。

 盗賊は村を脅かす存在。今回だけでは無く、村に大きな被害を出す人間達と何故会話をしているのか。
 まるで部下と上司のような、仲間内の雰囲気を出しているのか。

「お義兄さん! あなたもしかして!!」
「黙っていろ、貴様にはもう価値は無いのだ。精々、最後まで私の為に働いてもらうからな」

 そのパーズの言葉にルビヤは青ざめることした出来なかった。口にした言葉の意味、パーズの言う最後までとは。
 拒む事も出来ず大男に抱えられ奥へと進んでしまう。

 自分がこれからどうなるのか。

「ここでっせ」
「そうか、ここが・・・ここがあの、"エンシェントホール"」
(エンシェント・・・ホール?)

 呟くように言ったパーズの言葉にルビヤは反応した。
 聞いた事の無い言葉なのはもちろんだが、もしここを義兄が知っているというのであれば、ここまでの行いは全て計画的に行われた物だと確信してしまった。

 パーズは前もって盗賊と通じていた。
 シアマ村がこの場所を発見したと同時に盗賊達もまたこの場所を見つけた。
 村長達が手を拱いている間に盗賊達がパーズへとこの事を報告して行動に移った。

 エンシェントホール。
 その存在はルビヤにはわからない物だったが、少なくてもパーズ自身がこの場に赴くほどの何かがここにはある。

「・・・パーズお義兄さん、教えてください。お義兄さんはここをご存じなのですか」
「あぁ、そうさ。エンシェントホール・・・これが世界から"戦争が無くならない"理由の一つさ」
「それは一体どうゆう―――うわっ!!」

 パーズの合図と共にルビヤをエンシェントホールに投げ飛ばした。

 上手く受身を取れ大事には至らなかったが、ルビヤはパーズ達が見守る場所を見上げる。

 よじ登るにはあまりにも高く、あの高さから落ちてしまったのに無事だった事に驚くと共に自らの周囲の異質さに驚愕していた。

 辺り一面が透き通る結晶で溢れ返っている。
 暗い洞窟の一部とは思えない程、ルビヤの立つ広い空間は光りに溢れていた、まるで何処からか日差しが差し込んでいるかと誤認してしまう程に。
 
「何をしている!! 貴様の最後の役目、しっかりと果たすのだ!!」

 役目。一体それが何を指しての言葉なのか当然告げられる事はない。
 それでも、戻る事が出来ないと悟ったルビヤには、前へと進むことしか出来ないでいた。

「これは・・・」

 地面から花が咲くようについ目が奪われてしまう程の透き通った結晶に触れるルビヤ。その異質性に触れて初めて分かった事があった。

「まさか・・・魔力!? いやでも鉱石・・・結晶にここまでの魔力が宿るなんて」

 第六感が囁いたかのようにルビヤには手に触れたモノがとてつもない代物だと告げた。
 本来ならば、この世界に存在する魔石と呼ばれる物は人の手によって魔力を石に封じ込めて使用する物。
 その力はあまりにも微々たるモノで、まだ発展途上ということもあり優位性を見い出せず、世界的に流通するに至らない。

 だが、今手にしている物は、並大抵の魔術師を凌駕する程の物だと。ルビヤは感じていた。

 もしこれがあれば・・・。

 ルビヤは一人、自らが置かれた状況を忘れてしまう程に目の前の魔力結晶の魅力に釘付けになっていた。

 だが、そんなルビヤの目を覚まさせるかのように・・・大きな足音が響き渡った。


「っ!!? あれが・・・魔物」


 巨大な影がルビヤの前に立ちはだかる。

 その姿は誰が見ても圧倒的だった。黒光りする外殻、両手には鋭く巨大な鋏、蜘蛛のような複数の足がバタバタと地面を揺らす。

 そして両手の鋏よりも巨大な先端に歪な刃がある尻尾が魔物の存在を主張するかのように姿を見せる。


「サソリ型の・・・魔物!?」


 ルビヤの目線とサソリのギョロリとした大きな目玉が合わさる瞬間、サソリは強烈な叫び声を上げ、その存在を轟かせた。

 衝撃波を受けるかのようにルビヤは風圧に押し潰されそうになる中、その姿と叫び声を聞いただけでパーズ含めた盗賊達は尻持ちを付いてしまっていた。

「な、何をしてるお前等!! 早くあれを倒せ!!」
「いやでも・・・あんな化け物」
「何を不抜けた事を言っているんだら貴様!! 貴様等にどれだけの金を積んだと思っているんだ!!」

 弱腰の盗賊に叫び散らかすパーズ。
 そんな事、サソリ型の魔物には関係が無く、その巨体を動かし始めたのだった・・・。
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