【完結】投獄中の売国奴が出会ったのは、敵国の泣き虫王子だった。 ~期待された神器が"柄"ってだけで迫害を受けた~

三ツ三

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日常を知る売国奴と屈しない王子

25.贈られたフォーズ、贈られたドギア

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「おらおらおらおらおら!!!」

 一気に流れを掴まれた。
 ドギアが贈呈具を使い出してからは防戦一方だ、攻め入りたくても・・・。

ガキンッ!!!!

 大振りに振り回される攻撃を辛うじて防ぎ切るが。これにより俺が更に不利になっていくことになる。
 
「くっ!! 剣が・・・!」

 魔力で強化した剣がまるで生気を吸われるかのように力が失われる。
 ドギアの大剣に触れるだけで刃が石化してしまう。敵の攻撃を防ぐことすら出来ないなんて酷過ぎるだろう。

「あと何回でその鈍らがぶっ壊れるかな。5回、いや2、3回かもな」
「ならその間にお前をぶっ殺すまでだ!!」

 頭を切り替えろ。
 剣で攻撃するという考えは捨てるんだ。

 狙いは一つ。
 俺が持てる全ての力を駆使して戦う。

 そして、殺すんだ。

「っ!!」
「ようやく、本気になったか!! うおおらぁああああああ!!!」

 敵の連続攻撃は全て避け切れ。どれだけの負担が掛かろうと構うな、間合いに入る時間を縮めろ。
 ロスを無くせ、最速で一歩を踏み出せ。細かいミスをすぐに取り戻すんだ。

「ちっ!! ちょこまかと!!」

 癖を読み解け。敵を知れ、分析しろ。
 奴が得意なのはなんだ、不得意を見つけろ。自分のスタイルを研ぎ覚ませ。

 必ず訪れるチャンスを物にするんだ。

 だから、振り絞れ。己の全てで!!

「なら、これで・・・!!!」

(来た・・・!!)

 ドギアが連撃を終わらせた瞬間だった。
 大剣を高速で振り回し、その遠心力を使い強烈な一撃を自分がいる地面へと叩き付けた。

 土の地面を自分色に染め上げる。
 グレーの石の色に。固く、何者にも砕かせないという強い想いを込め。
 一瞬にしてドギアを中心に石化が広がった。

 俺は・・・。

「それを・・・!」
「コイツ・・読んでやがったか!?」

 全身を回転させ俺は宙に浮いている。石に染め上げた大地に俺の身体は無い。

 我慢比べは俺の勝ちだったみたいだな!!

「終わりだぁああ!!!」

 悟られる事無く魔力を込め続けた俺の手が光り輝く。
 狙いをとっくに付いている。

 あとは、これを大技で隙だらけの敵に―――。






グチャッ・・・。





 あれ・・・。




グチャッ・・・。



 俺は、なんで・・・。
 魔術を放ったはずなのに・・・。

 血を吐いてるんだ・・・?


「このぉおおおおおお!!!!」

 ドギアの叫び声と同時に俺は大きく吹き飛ばされ地面へと叩き付けられていた。

「ぶはっ!!! おぇっ!!」

 何を食らった?
 今のドギアの攻撃は咄嗟に身体動いて防いだ。
 受け身を失敗したから? そんなわけあるか。

 なんで俺は、魔術が放てなかったんだ!!?

「はぁ、はぁはぁ・・・へへっ流石に今のは、少しばかりビビっちまったよ」

 息は荒いが、俺に比べてピンピンしているドギア。

 それに比べて俺は、地面から立ち上がるだけでフラフラとしていた。
 自分の身体だというのに思うように動かない。これじゃあまるで・・・。

「嘘・・・だろ」

 まさか。
 吐血で魔術が撃てなかった理由って・・・。

 俺の身体の"劣化"が原因だとでも言うのか。

 脳と身体が追い付いていなかったとでも言うのか、笑える話だな。
 牢獄から今まで身体を動かして万全の態勢で臨んでいたはずだった、けれど違った。

「んっ・・・がはっ!!!」

 俺にその答えを教えるかのように、体内から血が口から馬鹿みたいに出てくる。
 
 騎士団時代は常に極限の緊張感の中で戦いに挑んでいた。
 どんな状況であろうと、どれだけ過酷な戦況だろうと。常に勝利だけを眼前に据え置きそれをもぎ取ってきた。

 けれど、俺にとっての勝利とは安堵には繋がらなかった。
 勝利とはただの要素。目標の為の必要最低限の要素でしかなかった。

 改めて考えると馬鹿みたいだなと自分でも思う。
 だが、そんな馬鹿げた目標のおかげで誰よりも強くあれたのは事実・・・か。

「どうすんだ、頼みの鈍らもおしゃかみたいだが?」

 ドギアの言葉で俺は握っていた剣を見た。
 反撃を受けた際に咄嗟に動いた身体が剣で防いでしまっていたようだった。
 おかげ、もう石化は剣全体に侵食し、もはや手に持っている物はただの鈍器。

ボロボロボロッ・・・。

 訂正、ただの石となり土へ還っていった。

 不要になった剣を放り投げると同時に拳を構え対峙する。
 それを見たドギアは、笑みを浮かべ出した。

「あーっはははは!! いい事思い付いた。お前、俺の仲間にならないか? 部下になれとは言わない、そうすればそうだな。この村は見逃してやるよ」
「ほう、気前いいじゃないか」
「当たり前だろうが、こんなに・・・こんなに白熱した戦いは最前線以来だっての!!こんなに楽しい戦いがもっとしたいんだよ俺は!! お前と一緒なら、もっともっとでけぇー奴とも殺し合えるはずだからよ!! こんな村を見逃すくらい安いもんよ!」

 とんだ戦闘マニアだなこいつ。本当に最初の印象とは一変し過ぎてる。
 勧誘・・・か。
 さぞかしコイツは飢えているのだろう。
 脱走兵。恐らく逃げ出した理由ってのもきっとそうゆう所からだと察しが付く。

「どうだ? 俺と一緒に来ねえーか!?」

 奴の誘いを受ければ、恐らくあの牢獄に戻る事は二度と無くなるだろう。
 それどころか、盗賊として名を馳せて金も食い物も何不自由無く自由を手に出来るだろう。
 それは力があるからこそ出来ること。今は目の前の大男に敗れたが、恐らく盗賊として奴の隣にいれば自然と以前の俺の身体へと完全に戻る事は出来る。

 なら、答えは簡単だ。

「返答はどうだ!!?」
「素敵な御誘いありがとう」
「ほほ~ん、なら」
「けど・・・悪いな」

 俺は大きく息を吸い、フラフラだった身体をいつものように立て直す。
 格好が悪かったから。こんな格好を見せられないから。

 あの子には、ダサい俺を見て欲しくないのだから。


「俺の隣にはもう、先客で埋まってるんでね」



 遠くからこちらに駆け寄ってくる姿が目に入っていた。

 そして俺目掛けて、とある物を投げ付けてきた。



「フォーズさん!!!」



 ドギアもすぐに何かを察しすぐさま大剣を構え突撃を仕掛けてくる。

 だが、もう遅い。
 俺が懐から出した物に、飛んでくる物が装填される方が早い。


ガギンッッッ!!!!!!!


 ドギアはその存在に驚愕した顔を見せた。
 己の力である石化が通用しないからか、それとも俺がこんなボロボロになりながらも隠し持っていた力に驚いているのか。

 それとも・・・。

「なんだ・・・その柄は!!!」

「お前と同じ物だよ。ただ!!!」

 一振り。全身血みどろでスタミナも限界が来ている身体で振るった一撃でドギアの剛腕を払い飛ばした。


「すげぇ奴からの贈り物だ。お前のよりすげぇに決まってるだろ」


 柄からはあの魔物との戦いで見せた青白く光る半透明の刃では無かった。

 くっきりと見える青白い刃を、俺はドギアへ向けられるのであった。
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