【完結】投獄中の売国奴が出会ったのは、敵国の泣き虫王子だった。 ~期待された神器が"柄"ってだけで迫害を受けた~

三ツ三

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日常を知る売国奴と屈しない王子

26.発明者はルビヤ、勝者は俺達

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 まるで形勢逆転のような空気が一気に流れていた。

 誰もが俺の敗北を予期していたのにも関わらず、敵のドギアの突撃を受け止めそのまま払い飛ばしたのだから。

 それもこれも、全ては。
 ルビヤのおかげだった。


「遅くなってごめん、フォーズさん!」
「あぁ~もう大変だんだぞー、贈呈具相手に手加減するのもさ」

 誰がどう聞いても強がりなのはまるわかりではあるが、俺にはこれが必要なんだ。仕方がない。

 改めて、前方に目線を戻すと同時に、ルビヤからの贈り物の力を感じ取っていた。右手に握りしめる柄から以前のただの結晶石から得た力とは桁外れの力を感じていた。
 以前の結晶石はただの片鱗だったと言わんばかりに今装填されている物の力は凄まじい物だった。


 説明しよう!!
 ルビヤは副産物、ついでの物だと言っていたがかなり付き合わせられた物がようやく完成していたという事だ。

 俺が柄、贈呈具に装填させたのは結晶石で間違いない。
 だがこの結晶石はあの場にあった物では無い。ルビヤがベッド生活をしている間の時間を無駄にしたくないという子供らしからぬ事を言い出した事が発端だった。

 結晶石を分析し、さらに濃度の高い物へと合成させるというとんでもない事をルビヤは思い付いたのだった。

 その実験に使われたのが、俺の贈呈具だった。
 最初の頃はとにかくありとあらゆる結晶石を贈呈具に装填してその反応を細かく分析していた。当然俺には何の違いがあるのか全く分からなかった、ただでさえ結晶石の違いだってわからないのだが、ルビヤにはそれがわかったようだった。本でいっぱい読んだそうだった。

 そうして結晶石の安全性とその力の解明が進み特許が取れた。同時に、より強力な結晶石の生成にルビヤは成功させた。まるで特許が取れたのが副産物なのではと思っていたが黙っておいた。

 あとは、俺の贈呈具に合うように細かい調整をすると息巻いて数日。
 こうしてルビヤのおかげで、俺は危機的状況を打破できたのであった。
 頭が上がりません、はい。 
 

「ふふふふ・・・」
「どうした、怖気づいたか?」
「まさか!! 本当に楽しませくれるな! お前!!!」

 再び高速で大剣を振り被り突撃をしてくる。地面を蹴った風圧が俺に襲い掛かる。それだけ気合いの入れようが段違いなのを実感したが。臆する事はなかった。

 今までは避けるしか出来なかったが、今はもうその必要が皆無。
 振り下ろされる方向に片手で持つ剣を向けてそれを受け止める。今まで感じていた重みは、もはや微塵も感じなかった。

「なんで・・・!」
「さっきやったろ、もう無駄なんだよ。お前の石化の能力は・・・"俺達"には届かない!!!」

 どれだけ強い力を加えようが俺の柄からはドギアの一切の力を感じる事はなかった。
 恐らくドギアの力は、実物の石化。どんな物であろうと物体としてそこに存在する限り大剣で触れた途端に石化させる物。効果範囲は力の込めようと言う物だろう。

 だが、俺が持つ柄。
 ルビヤが作ってくれた物から出ている刃はその例外だとすぐに理解した。
 俺にだけはわかっていた。実は石化はしているのだと。
 ただ、この刃は粒子の集合体。その粒子が絶えず溢れ続ける事で刃の形に見えるに過ぎない物だと。
 たった一度の石化、あるいはドギアの石化速度では全ての粒子を石化させる事は出来ない。

「だからっ!!!」

 柄を握る手に力を込めた瞬間、刃が光り輝く。
 そしてドギアの持つ大剣を大きく弾き飛ばした。

「な・・・なにぃ」
「お前はもう、俺達に勝てない」

 その事態を受け止められないドギアの顔にもはや勧誘をしていた時の余裕という文字は消え去っていた。

 すぐさま俺から距離を離すように高く跳び、同時に弾き飛ばされた自らの大剣を空中で掴み取った。

「ふっふふふふ、あーっははっはははははははははは!!!!」

 もう雌雄は決していた。
 ドギアは、それを示唆されたかのように大きく高笑いを見せた。

 最後の最後まで・・・本当にデカイ奴だ。


「うぅぅうらぁああああああああああああああ!!!!!」


 ならば俺も、負ける訳にはいかない。ドギアに答えるように柄を両手で強く握り締めた。


「うぅぅうおぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 二つの咆哮が村に大きく響き渡る。

 そして、剣撃がぶつかる音が木霊し決着が付いたのだった。
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