【完結】投獄中の売国奴が出会ったのは、敵国の泣き虫王子だった。 ~期待された神器が"柄"ってだけで迫害を受けた~

三ツ三

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眼鏡と売国奴と王子

30.用心と会議と陰謀

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 国安が来たという話は、ルビヤ達が出て行った後すぐにエルターから聞いた。


「国安ねぇ、まさかまたあのお坊ちゃま関連か?」
「いえ、あの方には国安を動かす程の力は持ち合わせておりません」
「だとすると・・・俺?」
「否定は出来ませんが、可能性も低いかと思われます」


 この国、アインドルゼの牢獄に繋ぎ止められて長い月日が流れたのは確か。
 けれど、今になって国安の連中が俺なんか為に騒ぎ出すとは思えない。
 となると、考えられる事は限られる。

「結晶石関係、というところか」
「恐らくは。彼等国安を動かす者がバックにいると考えた方がいいかと思われますね」
「特許が取れてその噂が広まり出したって事か。難儀だな」
「ルビヤ様は今、王族会議の準備の為に塔を出ておりますが・・・。盗賊や魔物相手ならどれほど気が楽か」

 珍しくエルターが大きなため息を吐いていた。
 実際その通りだよな。俺もエルターも下手に動く事が出来ない、シアマ村のように人知れず事態に当たる事が難しいからな。

 ちょっとしたミスが、ルビヤに大きく返ってくるリスクがあまりにも高過ぎる。

 それこそ俺の本分とは真逆な問題だ。辛いな。

「念の為用意しておいたこちらを置いておきます。何かあればこちらからお呼び立てします」
「あぁ頼む・・・ってあれ??」

 渡された物を見て苦い顔をしてしまった。

 シアマ村の時に使った通信用の魔石を結晶石の力とミックスして作ったセルマギア。これはまぁわかる、恐らく前回と同じでここから転移出来る物だろう。

 それとマント状のローブ。大きなフードを被って俺の姿が見えないようにする物。

 そして・・・一本だけの、ナイフ?

「冗談だよねー、今までの鈍ら以下ってそんな。セルマギアは何処だよ」

「では、宜しくお願いしますね」
「え、あ・・・えぇー」


 俺の声が聞こえていないのか、エルターは何食わぬ顔で部屋を出て行ったのだった・・・。



・   ・   ・




 フォーズがエルターに渡された物に愚痴を言っている中ルビヤは王族会議に出席していたのだった。

 巨大なテーブルに多くの王族が座り、多くの事を議題に挙げ取り決めをしていた。
 そんな中とある議題が挙げられる事で王族の注目はルビヤへ向けられたのだった。


「次の議題はシアマという村で先日見つかりました。特殊な結晶鉱石、村の管理担当者であるルビヤから説明があります」

 名を呼ばれ意気込むルビヤ。
 王族会議では、議題に挙げられる機会がほとんど無かったルビヤ。
 けれどルビヤの顔には緊張の文字は無く、凛々しい顔立ちと共に小さい身体ながらもその立ち振舞いを見せた。

「では、説明をさせて頂きます」

 ルビヤは今まで調べ上げてきた情報を隅々まで嘘偽り無く説明していった。
 実際に結晶石を手取り、これがどういった物なのか。

 今までアインドルゼの記録には無かった、新種の鉱石である事を証明したのだった。

「故にこの結晶石を使った、魔導具の作成を―――」

 詰まる事無く一つ一つ丁寧に説明を続けていたルビヤ。
 だが、今初めて言葉を止めた。

 空気が違っていた。
 大多数の人間、自分の言葉を聞いていないのではないかと。

「あの・・・何か不備がありましたでしょうか?」
「いや・・・まぁねぇ」

 空気が悪い。
 真剣に取り組んでいたルビヤの表情が徐々に空気に呑まれ様していた。
 浴びせられる視線は期待に満ちたような甘い物ではなかった。

「確かに素晴らしい物だ、それを見つけ我がアインドルゼ王国の糧になる事は間違いない無く、称賛に値する」
「結晶石、従来の魔石の10倍以上の魔力が込められていると。いやはや恐れ入った」

 称賛の言葉。のはずが、ルビヤは純粋にその言葉を受け取る事は出来なかった。
 誰もが口にする言葉には、あまりにも含みのある言い方だったからだ。

 そんな気持ち悪い空気を壊すかのように声を出した者がいた。



「我が弟のルビヤよ」



 一人の女性が席を立ち上がりルビヤをじっと見つめた。

 背中まで伸びた金色の髪、そして翠の瞳。
 全てルビヤとほぼ同じ色の女性。そんな彼女が声を出した途端に、静寂が支配する空間へと変貌した。

「みなが真に聞きたい事を私が聞こう。ルビヤ、この結晶石をどのようにして手にしたのだ」
「どのように・・・。お渡ししました資料の中にある報告書通りですが」
「えぇそうね、あなたの報告書は隅々まで見させて頂きました」

 厳しい表情のまま、ルビヤに向けて資料を渡すように指示をした。
 ここに来て新たな資料が王族会議にあるとは、当然ルビヤには知らされていなかった。それどころか回りに目をやると他の者達にはその資料が行き届いている事に気が付いた。

「・・・これは」

 渋々と資料を受け取るルビヤ。
 そこには、根も葉もない事が多く書かれていた。


―王子ルビヤは奴隷私兵を利用し鉱山での戦闘、及び労働を強要していた―


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