【完結】投獄中の売国奴が出会ったのは、敵国の泣き虫王子だった。 ~期待された神器が"柄"ってだけで迫害を受けた~

三ツ三

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絡み合う陰謀

45.決め手 二人で

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 ケイスという男は、俺を倒そうとしている、目の前で贈呈具の力を最大限に利用して。

 力は振り上げられた。
 後はそれを俺に振り下ろすだけで全ては済む。

「死ねぇ!!」

 殺意に満ちた言葉と共に巨大に膨れ上がった力を解放する。
 もはや渦潮が口を開け襲ってくる光景だ。

「防げる・・・お前なら!」

 俺の贈呈具。
 誰一人としてその力を見出す事が出来なかった物、持ち主の俺でさえ見放した力。
 お前からしたら都合の良い事だろうが、今はその力を信じさせてくれ!

「頑張れ俺!! そぉぉらぁああああ!!!」

 セルマギアで形成された光りの盾に全ての力を注ぎ込む。
 ケイスの放った攻撃が激突する。まさに必殺技の威力を持つ力だった。ジリジリと押し込まれるように後退していく。
 俺の全身が悲鳴を上げ始めたのが良くわかる。

「何故、何故そこまでして貴様は」

 眼鏡が何か呟いているような気がしたがこっちはそれどころじゃない。
 全身へに衝撃が徐々に激しくなり始めスタミナが持っていかれる。
 あと何秒これが続く? 何処まで耐えられる?

 思考がもう弱気になってる。
 正直ここまではと、全く侮っていなかったわけでは無い。冷静さを失ってる奴ならば多少は勝機があると思った。

「ぐぅぅうぅうおぉお!!!」

 現実はそんな甘く無い。まさにそれを教えて頂いているようだった。

「もう・・・終わりだ!!」

 一瞬の間。力を解放し続ける中で再びケイスは力が更に膨れ上がろうとしていた。
 これ以上の威力が見舞われる。ケイスの言葉通りこれで本当に終わりかもしれないな。

 渦潮が捲く轟音が押し寄せる。
 最初の一撃に上乗せされるかのように迫ってくる。これが重なったら・・・終わ――。

「まだです!!!」

「ル・・ビヤ・・?」

「これを使って下さい!!」


 突然現れて何をするかと思えば俺の贈呈具のセルマギアを抜き取り俺の見た事の無い黒紫色のセルマギアを変わりに装填した。

「力を貸して、お願い!!!」

 ルビヤに呼応するように俺の贈呈具が輝き出した。
 セルマギアと同じ色、黒紫色の刃が姿を見せ・・・。

「3・・・本?」

 一本は普通通りに柄から生えている。のだが、もう二本が普通に生えた刃の左右に浮き同じ挙動をしていた。
 
 三本の刃がケイスの必殺技を両断する。
 先ほどまでの衝撃は無い。完全にこちらの攻撃が勝っている証拠だ。

「フォーズさん!!」

 もう、考える必要はない。
 ただこの力を俺は振るうだけで良い。

「・・・これか、これなのか」
「そうだ、お前の過ちはただ一つ。この男、ルビヤっていう男を侮った事だ」

 今度はこちらの贈呈具の力に抗う事になった渦潮。2メートル近い倉路紫の刃を一振りする度にケイスの攻撃は掻き消えて行った。

 そして、ついにケイスを視界へと捉えた。もはや戦意喪失していた。

「侮ってなどいなかったさ・・・最初からな」



 それがケイスの最後の言葉になったのは言うまでもない・・・。



・   ・   ・




 収監施設からシアマ村の人々だけを牢から出し逃げるようにして村に帰還した。

 それから一日が経って俺は再びルビヤの家の牢獄で出かける準備をする事になっていた。当然行先は聞いては居ない。

「それにしても、あのセルマギアってさ」
「わかります? あのサソリから出た奴です。なんていうかその、気が付いたらあのセルマギアと同じ形になっていたんです」

 そう言ってルビヤは俺に差し出す。
 普通に手に取ろうとした途端、俺の手は弾かれた。

「痛っ。は?」
「どうかしましたか?」
「いや、なんでも・・・ない」

 なんだろうか、物凄い拒絶を感じた。というか手を出されたというのか。
 ルビヤがどうしたんだろう?と不思議がって黒紫色のセルマギアを眺めたり触れたりしている。当然俺が受けた攻撃染みた現象は起きなかった。
 正確な詳細はわからない。だが理解はした。
 触れない、関わらない、頼らない。
 これだけはしっかりと肝に免じておこう。


「ルビヤ様!!」

 談笑を楽しみながら準備を進めていると突然エルターが珍しく血相を変えて姿を見せた。
 額から小さい汗を垂らしている姿があまりにも似合わないからこそ、俺とルビヤも一瞬で身構えた。

「サ、サファイナ王女殿下が、お見えです」
「お姉・・・サファイナ様が!? え、待ってこれから僕達が赴くようにって予定だったよね!?」
「はい。ですが、何やら事情が変わってしまった・・・そうおっしゃっておりました」

 ん~~~~・・・!!??
 ある程度の想定はしていたが今起きている事態はあまりにも2段、3段も上を越えていた。
 まず第一にルビヤ達のとのお出かけは昨日の出来事の説明やら何やらだろうというのは予想していた。が、その説明先があの王女殿下ってなんの冗談だ。
 明らかに今回の一件に関わってそうな人間、下手したら敵の可能性が大いにあった相手だよな!?

 ルビヤの言いようじゃあ王女から指示を受けたような感じだが・・・。百歩、いや千歩譲ってこれは良いとして。
 その本人がこっちの本拠地に踏み込んできたなんてどんな了見だ。

「ひとまず急いで僕達も向かいます! エルター、少しの間応対をお願い!」
「かしこまりました。それと・・・」

 エルターは、まだ何かあるかのように口を開いた。

 その発言に俺達二人は更に顔を歪ませるのであった。



・   ・   ・



「あっ~、来た来た~。ちょっと遅いんじゃないの~?」
「す、すみません。お待たせしました王女殿下様」
「ゲイル、言葉が過ぎる。こちらの用事で予定を変えたのだ。口を慎め」
「怒られちった」

 応接室に俺達が入った途端くだらん漫才が披露された。相手からしたら空気を和ませようとでも考えてるのか、余計に畏まる事を配慮していないだろ絶対。
 無理だとは思うが出来るだけ俺に声を掛けられないようにこのまま下を向いて目線を合わさず背景と一体化を・・・。

「お前・・・なんでここに」

 一瞬だけ王女殿下を見ようと目線を上げた時だった。
 客席ソファーの中央に王女殿下が座りその背後に二人の人間が立っていた。
 一人は、さっき漫才を披露したゲイルという女。そしてもう一人は・・・。

「ケイスさん・・・?」
「はい、ルビヤ王子」
「お前、どの面下げてここへ来た!」
「貴様だったかのか。馬子にも衣装、なんて言葉がここまで似合う奴とは」
「はいはいはいはい、ステ~イステーイ」
 
 ゲイルが手を叩きその場を収めた。
 この眼鏡に言われるまでも無い。今俺が着ている服は今まで牢に繋がれていた人間とは到底思えない格好。傍から見たらちょっと位の良い貴族出の人間に見える物だった。

「ここに集う者達それぞれの言い分があるのは重々承知だ。だが先に私の話を聞いてからにしてもらおう、ルビヤもそれで良いか?」
「はい、もちろんです。どうか、聞かせてください」

 サファイナ王女の対面に座るルビヤ。
 目を閉じるサファイナの口が開くのを固唾を飲んで待った。


「ルビヤ。あなたには、あなた達にはアインドルゼから出て行ってもらいます」


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